「割り切った大人の関係」なんて女には無理なんだよ……『姉の結婚』

こんにちは、少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子です。
先日、昔結婚していた頃の体験談を書きました。結婚するまでは、なんとなく「結婚したら幸せになれる」と思っていました。相手からのプロポーズの言葉も「幸せにする」だったし。

だけど結局、その人との間に幸せを見つけることはできませんでした。結婚してみて気づいたことですが、私は結婚「生活」をしたいわけじゃなかったようです。朝、会社に夫を送り出して、マイホームの掃除をして、お買い物に行き、とっておきのご飯を作ってあげたり、子どもたちの元気な姿を眺めたり。そういう「いわゆる結婚生活」には興味がなかったんです。よく考えたら、そうなりたいと思ったこともなかった。「彼氏がいない人はかわいそう」とも「彼がいるから幸せ」とも思ったことがなかった。

私にとって大切なのは、お互いがきちんと話し合えて、理解はし合えなくても、その努力をしたり、尊重し合える関係だったんです。けれども、私が子どもだったこともあって、ほとんど「話し合い」ができませんでした。使う言葉がちがいすぎて、言いたいことや思っていることが伝わらないことが、とてもストレスでした。

「カタチ」が欲しければ、キレイな結婚生活に満足したかもしれません。だけど多くの人たちは、「中身」の上に成り立つ「カタチ」が欲しいのではないでしょうか。「カタチ」があるからって「中身」があるとは限りません。
さて……では「カタチはあるけど中身がない」場合、そこに目をつぶれるかどうか。

■今週の教科書『姉の結婚』

『娚の一生』『姉の結婚』と、立て続けに恋に不器用な女性の物語を描いている西炯子さんの作品です。
世間的に、アラフォー、アラフィフで未婚の女性は「焦っている」「なにか問題がある」と思われがちですが、意外に「恋に不器用」という理由の女性が多いのではないでしょうか。先日、突然の訃報で衝撃を与えた雨宮まみさんも、自身の性と向きあうことの難しさを言葉にして、女性たちから絶大な支持を得ていましたよね。

『姉の結婚』の主人公・ヨリは、離島出身で、その後東京で就職、アラフォーになって故郷の県に帰ってきて、図書館司書をしています。そこへやって来たとあるイケメン医師・真木。彼は図書館で彼女のミスにいちゃもんをつけ、その代償として一晩一緒に過ごすことを提案してきます。

「これでチャラならいいか」とヨリは応じます。しかし実はその誘い、真木の仕掛けたワナだったんです。真木は子どもの頃からヨリのことが好きでした。それをきっかけにして、真木は猛烈にアプローチしてきます。

……だけど真木には、ヨリにそっくりな妻がいたのです……。

■ヨリと真木妻に学ぶ「女性は不倫を割り切れるのか」

この作品には、ふたつの不倫が描かれています。
ひとつは、真木の妻と、彼女の短大生時代の教授。
もうひとつは、真木と、ヨリ。

真木妻もヨリも、物語序盤は「不倫を機械的に楽しみましょう」というスタンスです。
教授はそもそも既婚者で、真木妻のことは遊びだとしか思っていません。短大でも次々に学生に手を出すクソ野郎です。

真木妻と真木はお見合いで、政略結婚のようなものでした。そして真木妻は「”愛”じゃないのよ 結婚は」と言い、体裁をととのえさえすれば、あとはお互い好きにやっていいという条件を押しつけてきます。この夫婦は完全に愛のない偽装夫婦だったのです。

ヨリは、それまでの恋愛に疲れ果て、真木との不倫も「割り切って」つき合おうとします。「これは不倫だから」お互いのことを知る必要はない、デートをする必要もなく、身体だけの関係でいい、と。

ところがヨリは、どうしても「割り切って大人の関係」でいるのが難しくなってきます。
一緒にいればいるほど、真木に対する気持ちが膨らんでしまう。
「私が本当にほしいのは 結婚じゃないことも ほんとはわかっていた」「愛されたい それだけで私は 生きていける」と気づきます。

そして真木妻は、クールにダブル不倫をすることも、愛のない結婚生活を続けることも、本当は自分が望んでいることではなかったことに気づきます。

この作品のベースに流れているのは「気持ちを切り離して『カタチ』を作ることなんか、女には無理なんだよ」ってことのように思います。

2人の不倫の結末がどうなったかは、作品で確かめてみてください。

■まとめ

中身のない「カタチ」になんか意味はない。
不倫は結局、中身を作ることができない「カタチ」だけのものと言えそうです。
そしてそれは、決して「誰も幸せにならない」ってことなんですね。

余談ですが、真木がヨリに「ボードゲームやりませんか。これフランスのゲームで、なかなか面白いんですよ」と言って勧めているのは、おそらく「クアルト!QUARTO!」です。さまざまな形のキューブをボードに並べていって、共通の条件のキューブを4つ列に並べることができた人の勝ち。「五目並べ」の複雑バージョンです。たいへんな脳トレゲームで、イカニモお医者さんが勧めそうなタイトルですね。

(文・イラスト:和久井香菜子)

★次回の『少女マンガに学ぶ不倫の実態』は12月3日(土)掲載予定です、お楽しみに!

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