知っておきたい人工透析と糖尿病のしくみ 人気アナの問題発言も話題に…

大切なことがらを意味する「肝心」という言葉は、かつて「肝腎」と書きました。「肝」は肝臓のこと、「腎」は腎臓を意味しています。

古くから重要な臓器として認識されてきた腎臓。その腎臓にトラブルが起こった時に行うのが、人工透析です。

どんな疾病で人工透析が必要になるのか? 人工透析にはどんな問題があるのか? 最大の要因とされる糖尿病とは?「肝腎」なポイントをチェックしていきましょう。

要チェック項目


□人工透析は腎臓に代わって、血液のろ過を行うしくみ
□週数回の通院や、長時間の透析など生活の質にも影響がある
□糖尿病による末期腎不全から人工透析になるケースも

謝罪騒動にまで発展した長谷川豊さんの「自業自得」発言
フリーアナウンサー・長谷川豊さんが人工透析の問題を訴えたブログ記事が議論を呼んでいます。

2016年9月19日にアップされたこの記事は「医者の言うことを何年も無視し続けて自業自得で人工透析になった患者の費用まで全額国負担でなければいけないのか?」という刺激的なタイトル。

本文では医師の話として人工透析を受ける「大半の患者は自業自得」と述べています。長谷川さんは暴飲暴食を続けた結果、糖尿病を発症して人工透析に至るケースが多いと指摘。食生活の改善で糖尿病は予防できると訴えました。

これに対し全国腎臓病協議会(全腎協)は9月23日に抗議文を公開。長谷川さんに謝罪を要求しました。長谷川さんはブログで「謝罪も訂正も不可能な文章」と綴り、全面対決の姿勢を見せています。

人工透析を受ける患者さんは本当に自業自得によるものなのでしょうか?そもそも、人工透析とはどんな治療法なのでしょうか?

人工透析で人体の「下水処理」を肩代わり
腎臓は、握りこぶしほどの大きさしかない小さな臓器。そんな腎臓には、心臓から送り出す血液の1/4が集まります。送られてきた大量の血液から老廃物を取り出し、尿の元を作りだすのが腎臓の役目。腎臓は人体の下水処理場にあたる器官なのです。

腎臓の機能が著しく低下する腎不全の状態になると、体内に老廃物がどんどん蓄積していき、生命の危険につながる尿毒症へと至ります。そこで腎臓の代わりに、血液を体外に取り出してろ過するのが人工透析です。

最も一般的な人工透析の方法は「血液透析」。腕の静脈を手術によって動脈とつなげ、体内の血液を血液透析器と呼ばれる器械へ送り込みます。血液透析器によって浄化された血液は再び体内へと戻されます。症状にもよりますが週3回、各4時間の透析が必要となります。

決められた曜日、時間を守らなくてはいけないので、旅行などの用事を入れられないなどのデメリットがあり、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)低下にもつながります。

近年、増えつつあるのが「オンラインHDF」と呼ばれる方法です。より多くの老廃物を除去することができ、患者側の負担も少ないことが特長です。

ただし、医療費がかさむこと、高度な医療設備が必要となるので受け付けている病院が少ない、といった問題もあります。腎機能がまだ比較的保たれている場合、自宅でできる「腹膜透析」という方法も選べます。

人工透析の問題点
人工透析によって末期腎不全の生存率は大きく向上しました。ただし、人工透析は決して治療法ではありません。重症化した腎臓は再生できないため、治療法は腎移植しかないのです。

また人工透析には合併症のリスクもつきまといます。急な透析に身体が反応できず、頭痛やけいれんを引き起こす「不均衡症候群」、針からの感染症もあります。

人工透析を行うと、かゆみを制御するヒスタミンという神経物質が効かなくなってしまうため、かゆみ対策も大きな問題となるのです。

人工透析になる原因ナンバー1は糖尿病

人工透析が必要となるのは、腎臓の機能が15%以下まで低下した末期腎不全という状態です。腎臓には多くの病気がありますが、末期腎不全にまで至る疾病として最も多いのが糖尿病なのです。

糖尿病は「血管の病気」とも呼ばれています。身体の末端にある毛細血管から徐々に障害がはじまり、手足のしびれといった症状が起こります。やがて進行していくと手足の神経障害、壊死へとつながっていきます。

毛細血管の集まる眼も要注意。網膜に小さな出血が生じ、放置すると視覚異常や失明へと進行することがあります。糖尿病によって血管と並んでダメージを受けるのが腎臓です。

人体を作るタンパク質が血液の中へ徐々に漏れていき、やがて老廃物や不要物を除去することもできなくなる末期腎不全へと至るのです。糖尿病は末期腎不全だけでなく、脳卒中や心筋梗塞といった大きな合併症も招くので注意が必要です。

糖尿病に対する大きな誤解
糖尿病は主に3つの病型に分類できます。

1型糖尿病


小児期に発症することが多いため、小児糖尿病とも呼ばれます。自分の身体のリンパ球が誤って、膵臓内の細胞を破壊してしまうことで起きる疾病です。生活習慣病でも遺伝病でもありません。

2型糖尿病


インスリンというホルモンがうまく働かず、血液中の糖(血糖)が増加したままとなり、血管がダメージを受ける病気。インスリンが働かない理由には、遺伝要因と環境要因の2つがあります。

妊娠糖尿病


妊娠の影響によって起きる糖代謝の異常。産後は回復します。

3つのうちで最も発症者が多く、糖尿病の代名詞となっているのが<2型糖尿病>です。では、長谷川さんがブログで指摘したように<2型糖尿病>は「暴飲暴食」の結果によるものなのでしょうか?

実は必ずしもそうではありません。まず遺伝的な要因で発症することもあるからです。また環境要因とは、食べ過ぎ飲み過ぎや運動不足だけではありません。

確かに肥満もひとつの理由ですが、日本人は欧米人に比べインスリンの分泌能力が低いのも一因です。他にもストレスや社会的理由など、<2型糖尿病>の原因にはまだ未解明の部分も多いのです。

より求められる人工透析と糖尿病への理解
厚生労働省は糖尿病について「医療経済的にも大きな負担を社会に強いており、今後も社会の高齢化にしたがって増大するものと考えられる」と懸念。対策として、早期発見や生活習慣の改善を挙げています。

しかし、発症の要因として加齢や遺伝(家族歴)もあり「加齢と家族歴は改善(介入)が不可能」とも認めているのです。食生活の見直しや、運動の習慣をつけることはとても有意義ですが、それだけで糖尿病や人工透析をすべて防ぐのは難しいのです。

長谷川さんの炎上騒動が今後どう決着するかはまだ分かりませんが、私たちが人工透析や糖尿病について知るよいきっかけになったのではないでしょうか。

(監修:Doctors Me 医師)

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