園子温「全財産を捨ててもいい、くらいが健康にいい」

『愛のむきだし』(2008年)、『ヒミズ』(2012年)、『新宿スワン』(2015年)などの作品を手がけ、今、日本で最も注目を集める映画監督のひとり、園子温さん。

「自分が本当に作りたい映画」を作るため、2013年に自らシオンプロダクションを設立。そして設立後、オリジナル1作目となる『ひそひそ星』を今年5月に完成させた。人間の感情を鋭く描き出し、衝撃的な作品を次々と世に送り出す、今やオファーが絶えない人気監督だが、昔はバイトをしながら映画を撮り続ける下積み時代があった。

●すべては映画を作るため。貧乏は苦にならなかった

「20代の頃は貧乏でしたね。バイトをしながら映画を作る日々で。建築現場とか寿司屋とか新聞配達とか、とにかくいろいろな仕事をやりましたよ。でも、別にそれを苦とは思わなかった。周りもみんなそんな感じだったんで、それが普通だと思っていました」

日々のバイト代のほとんどが自主映画の制作費に消えていった。その裏には、並々ならぬ映画への情熱があったという。

「今思えば、あの頃はストイックでしたよ。とにかく、映画が作りたくて作りたくて仕方がなかったから、バイト代はほとんど全部、映画につぎ込んでました。酒を飲むとかデートするとか、何もしてなくて。映画がいっぱい作れたんで、それはそれでよかったんですけど」

バイトしながら映画を撮る、金銭的にギリギリの生活が変化したのは、ちょうど30歳になる頃だったと振り返る。

「『自転車吐息』(1990年)という作品を撮った頃から、映画で得たお金でまた次の映画を作るってことができるようになって。まだまだ生活はしんどかったけど、バイトをしなくても映画が作れるようになったのは、大きな変化でした」

●見切り発車であわや損失も。お金の使い方が分かってなかった

バイト生活をようやく卒業し、徐々に映画作りに打ち込める環境になってきた30代。そんな時に、お金に関するいくつかの失敗も経験している。

「その頃、どうしても作りたい映画があって、それが今年公開した『ひそひそ星』なんですけど。ちゃんと制作が決定する前に見切り発車で制作をスタートしてしまったんですね。当時は『始めてしまえば、なんとかなるだろう』という気持ちで、セットとか小道具とか作り始めちゃった。でも結局、この作品では映画会社のOKが出なくて制作が頓挫しまして。その時は別の作品の制作に切り替えたことで、なんとか切り抜けることができました。この頃は、どんなタイミングで、何にどれくらいお金をかけるのか、そんなお金の使い方がよく分かっていなかったんです」

さらに、人にだまされてお金を取られてしまったことも…。

「よくあるパターンですが、『お金貸してくれ』って言われて。最初はちゃんと返してくれるんですよ。でも少しずつ金額が上がっていって、まとまった金額を貸したらそのまま連絡がつかないとかね…。そういうことは、どこの世界でもあると思うんで、気を付けた方がいい。あとは、簡単に保証人にもなるなって言いたいです。ただ、お金の使い方に関しては、その瞬間やりたいことに使っているので、“失敗した”と思ったことはあまりないんです」

●もし全財産を失ってもゼロからやり直せばいい

その後、文化庁の新進芸術家在外研修員としてアメリカに留学したものの、支給されたお金を使い果たし、半年のホームレス生活(!)を経験。そんな波瀾万丈な20~30代を過ごした園さんは今、お金に対してどのような考えを持っているのだろうか?

「お金には支配されたくないんですよね。いざとなったら、今ある全財産を捨ててもいい。また新たにゼロからやり直すのも楽しいかなって。お金に執着するより、そう思っているくらいが健康にいいんじゃないかと思うんです。まぁ、そう思えるのは若い頃に貧乏をしたり、何度も挫折したり、ホームレスまで体験したからかもしれませんが。お金って、あればあるほど気が重くなるなあと。だったら、思い切り使っちゃった方がいいんじゃないかと思うんです」

石橋夏江(verb)=取材・文
花村謙太朗(URBAN NIGHT PICTURE Inc.)=撮影

(R25編集部)

※当記事は2016年11月24日に掲載されたものであり、掲載内容はその時点の情報です。時間の経過と共に情報が変化していることもあります。
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※コラムの内容は、R25から一部抜粋したものです
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R25 11/25

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