大人も子供も楽しめる「絵本の原画」を展示する美術館

美術館は小さい子供を連れていくには、いささかハードルが高い場所。なるべく早いうちから芸術体験をさせたいとは思いつつ、騒いでしまわないか、そもそも“芸術作品”を見せたとしても興味を示すかどうか疑問だったり…。

そんな中、絵本の原画を展示する「ちひろ美術館・東京」という施設が東京・練馬にあるとの情報が。これであれば、小さい子供でもきっと興味が持てるだろうと3歳になる実子を連れていってみました。

「当館はもともと、絵本画家の『いわさきちひろ』の作品を収蔵する目的で作られました。しかし、それまで絵本の原画をまとめて管理する施設は少なく、ほとんどの作家の作品は散逸されるに任せた状態。この状況を憂い、日本を始め世界各国の画家さんによる作品を収集、収蔵していくようになりました。収蔵数が膨大になった現在では、収蔵は安曇野にある『安曇野ちひろ美術館』がメインとなっています。当館ではその収蔵作品の中から随時、作品を移動させ展示を行っているんですよ」(ちひろ美術館・東京/中平洋子さん)
いわさきちひろ。もし、名前がわからなくても淡い水彩画で描かれた子供の絵をみればきっと誰もが「ああ、あの絵か!」と気づくことでしょう。例えば『窓際のトットちゃん』の絵などはあまりに有名ですよね。

常設展はなく、年4回テーマを変えたちひろ展と、大人も子供も楽しめる企画展が開催されているこちらの美術館。取材時には絵本『あらしのよるに』の作画などで知られる、あべ弘士(ひろし)さんの作品が展示されていました。

元・旭山動物園の飼育係という経歴もあり、とくに動物の絵を得意とするあべ氏の作品。絵本で見たことのある絵を発見して喜ぶ子供。やはり、一度見たことのある絵であれば3歳程度の子供でも興味を持ちやすいのでしょう。

■いつか見たことのある絵なのに、それは見たこともない絵

もちろん、大人が見ても「絵本の原画展示」は大変興味深いもの。紙を中心で綴じていない、そのままの一枚絵であること。そして、印刷時に失われてしまう描かれた紙の質感、絵の具の盛り上がりなどを細部にわたって鑑賞するのは新鮮な体験でした。

次いで鑑賞したのは、いわさきちひろの作品。当日は「Kawaii・ちひろ展」と題した、とくに「かわいい」作品をまとめた展示がされており、原画の持つ淡い繊細なタッチも堪能できました。ちひろの子供好きな性格が、そのまま写し出された絵。大人になってこうして(しかも原画を)鑑賞してみると、どこか切ない気持ちになったり…。

しかし、さすがに3歳児にはおとなしく絵を見続けるのは難しかったようで、やがてぐずぐず言いだす我が娘でした。ああ、幼い子を持つ親が出掛けるのをためらう「ぐずぐずタイム」がやってきましたよ。

■騒ぎ出す3歳児、でも、大丈夫。
しかし、こちらの美術館はそんなぐずぐずタイムでも安心。国内外の絵本約3000冊を揃えた図書室のほか、靴を脱いで入るカーペット敷きの「こどものへや」も用意されています。ここにはミルク用のお湯が出る流し台、おむつ用のゴミ箱などもあり乳児連れでもOK。さらに絵本、おもちゃ、そして子供を寝かせられる簡易的な布団も用意されているのです。

絵本とおもちゃで、子供の機嫌を回復させたところで鑑賞を再開。残る展示作品のほか、ちひろのアトリエを再現したコーナーや、存命当時を再現した庭までも親子でしっかり堪能したのでした。

もちろん、こちらの美術館では作品の展示自体にも子連れへの配慮がなされています。

「美術館に行くのは、小学校の課外授業で初めてとなるお子さんも多いと思いますが、情操教育としてもっと早い段階で美術館に親しんでもらいたいもの。ちひろ美術館では子供たちが人生で初めて訪れる“ファーストミュージアム”として親しめるような工夫をしています。作品を展示する高さですが、床からおよそ135cmの高さに作品の中心が来るようになっており、子供の目線でも作品が楽しめるようになっています」
(同・中平さん)

確かに、途中でぐずぐずタイムを挟んだものの、3歳児でもちゃんと鑑賞できたようで。「ママ抜きで美術館を楽しませるミッション」の完遂に、父親としてもどこかやりとげた感もあり。こうなると、安曇野の方にも行ってみたくなりますね。

ちなみに、絵本原画の展示以外にも親子で参加できるさまざまなイベントが開催されている模様。あらかじめ公式サイトで情報を確認すれば、より有意義な時間が過ごせるでしょう。ほら、そこのパパも子供と一緒に初めての美術体験をしてみてはいかが?
(宇都宮雅之)


取材協力■ちひろ美術館・東京
場所・東京都練馬区下石神井4-7-2
アクセス・西武新宿線上井草駅から徒歩7分。JR中央線荻窪駅・西武池袋線石神井公園よりともに西武バスで「上井草駅入り口」下車徒歩5分。美術館駐車場あり
問・03-3995-0612
開館時間・10:00~17:00(最終入館16:30)
休・月曜日(祝休日は開館、翌平日休館。その他、年末年始・臨時休館などあり。公式HPで確認)
入館料・大人800円。高校生以下無料。その他割引制度あり併設の「絵本カフェ」では飲み物や、ちひろが好んだレシピを再現した苺のムースなども楽しめるあべ弘士、自身の作による段ボール製のキリンやオオカミが期間限定で館内を飾るちひろの小さな作品にはこうして引き出し式に展示されているものも。小さい子供にも興味を引きやすい仕掛けちひろが作業したアトリエが、時を止めたかのようにそのまま再現されている
(R25編集部)

※当記事は2016年10月13日に掲載されたものであり、掲載内容はその時点の情報です。時間の経過と共に情報が変化していることもあります。
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※コラムの内容は、R25から一部抜粋したものです
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