絶望9割、希望1割。『恋人たち』で観るカカオ99%の人間模様

今週もおつかれさまです、うすいです。

バレンタインデーから2日が経ちました。本命/義理/友チョコその他もろもろ、あげたりもらったり、それと合わせて関係が進展したり後退したり。「義理チョコをやめよう」という広告や「忖度チョコ」なんてワードが世間を賑わせた今年のバレンタインでしたが、もらう側の人間(時としてあげることもありますが)としては、形はどうあれチョコをもらえるというだけでうれしいものです。

今回は、そんなあまいバレンタイン(ほろ苦い人もいたかもしれませんが)から急降下。

橋口亮輔監督の『恋人たち』で、不器用な人々を観察してみましょう。

妻の死、無関心な夫、気持ちを伝えられない友人

この作品は、3人の「恋人たち」によって展開されていきます。

通り魔殺人事件によって妻を殺され、健康保険料すら支払えないほど貧しいながらも、裁判のために奔走する/翻弄される日々を送るアツシ。機械よりも正確な聴力を持つ。橋梁(きょうりょう)点検がお仕事

出典:映画『恋人たち』公式サイト

自分に無関心な夫とそりの合わない姑と3人暮らし。弁当屋でパートとして勤務し、皇族の追っかけと自作の小説/イラストだけが楽しみの主婦、瞳子。煙草を吸う姿が妙にしっくりくる

出典:映画『恋人たち』公式サイト

自分が他者より優れていると疑わない、完璧主義者の弁護士。同性の友人を密かに想い続けるも、ある出来事をきっかけに、遠ざけられてゆく四ノ宮。画面右。意中の彼に貰った万年筆で、彼から書いてもらった言葉は

出典:映画『恋人たち』公式サイト

三者三様、妻を奪った通り魔と世の中を憎み続けるアツシ。平凡な暮らしがひとりの男によって色づきだす瞳子。仕事柄か、恨みを買って階段から落とされ、少しずつ落ちてゆく四ノ宮。彼ら/彼女らをスクリーン越し(実際にはタブレットの画面越し)に眺めていると、自分の嫌な部分に気づかされます。「ああ、私は彼ら/彼女らよりも、ずっと幸せに暮らしているな」と。

3人の日常がすべて真っ黒なわけではなく、四ノ宮は上流階級と言って差し支えない暮らしを送っているし、瞳子は男のために装い、生活に帯びた熱は彼女を確実に幸せにしている(アツシだけは大部分が辛く、苦しいのですが)。それでも、うまくいかない側面にフォーカスして安心してしまうのは、人間のサガなのでしょうか。

今回のワンシーン「お役所仕事に辛い思いをしたことはありますか?」

予告編42〜49秒。保険証の再発行のため、市役所でアツシと職員がやり取りするシーン。生活苦により未納だった15カ月分、手元には1万円しかない。「お金ないです、生活きついんで」「じゃあ次の(支払いの)お約束していただけますか」という淡々とした、辛い会話。

この短いテキストをしたためているだけでも、思い出して少し胸が苦しくなります。ひとやり取りだけでも辛くなるのに、本編ではもっと辛いやり取りが続くのです。

けれど、そんなシーンを経てからの終盤。自分をどん底に陥れた通り魔犯を殺したいと叫ぶアツシに、会社の先輩である黒田が投げかける言葉はとても優しく、この作品の数少ない救いです。

きっと、途中で観るのをやめたくなるかもしれません。そう思っても、どうか最後まで観てください。ちゃんと救いのあるお話ですから。

今はどん底でも、数年経てばそれが笑い話になっている。そんなことってありませんか? 意外と人生、なんとかなるものです。なんて、私が言わなくても、みなさまご存知ですよね。今週末は本作で、自分の感情と向き合ってみてはいかがでしょうか。

今週もおつかれさまでした、よい週末を。

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映画『恋人たち』公式サイト

http://koibitotachi.com/

定額配信サービス情報(※2018年2月16日時点)

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(臼井大輔)

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