RSウイルス感染症の潜伏期間は? 感染後の症状と治療方法

RSウイルス感染症は、2歳までにほぼ全ての子供が1度はかかるといわれている呼吸器の感染症です。乳幼児は重症化すると肺炎や気管支炎などを発症するといわれ、特に注意が必要です。今回は、小さなお子様のいるパパとママならぜひ知っておきたいRSウイルス感染症について、その感染経路や潜伏期間、治療方法、治療期間をご紹介します。
RSウイルス感染症とは?

RSウイルスとは、Respiratory syncytial virus(レスピラトリー シンシチアル ウイルス・Respiratory=呼吸の、 syncytial=syncytiumの形容詞形 合胞体、 virus=ウイルス)の略で、直訳すると“呼吸器のウイルス”のことです。このRSウイルスに感染し、発症したことを「RSウイルス感染症」といいます。RSウイルス感染症は、乾燥した季節によく見られ、毎年冬から春にかけて日本のみならず世界各国で流行します。日本においては、これまで12月をピークに3月頃にはRSウイルス感染症にかかる患者も減少しているパターンが多かったのですが、2011年以降、これまでのような冬や春にかけてといった季節に限らず、7月頃からRSウイルス感染症の患者が見られるようになりました。また、インフルエンザの流行が始まると、ほぼ同じ頃にRSウイルス感染症の発症率が減少することが分かっています。

生後半年頃までの赤ちゃんは、お腹の中にいた頃ママからもらった抗体によって、様々な病原体から守られています。しかし、このRSウイルス感染症に関していえば、RSウイルスに対するママからの抗体はあまり効果がありません。それに加え、RSウイルスは感染力が非常に強いため、1歳までにおよそ7割の赤ちゃんがこのRSウイルス感染症にかかり、2歳までにはほぼ100%という高い確率で、RSウイルス感染症を発症するといわれています。

RSウイルス感染症は、一度感染するとそれ以降はその病気にはかからない「終生免疫(生涯免疫)」ができるというわけではなく、一生のうちに何度も感染する可能性もあります。感染と発症を繰り返すことでRSウイルスに対する免疫が徐々につき、症状が軽くなっていきます。2歳を過ぎたあたりでRSウイルス感染症にかかったとしても、鼻風邪程度で治まる場合もあります。
RSウイルス感染症の症状

症状の出方には個人差がありますが、主なRSウイルス感染症の症状は以下の通りです。

【軽度の症状】

・発熱(38度台が多い)

・鼻水

・乾いた咳

【重症化すると】

・強い咳

・痰がからむ

・粘っこい多量の鼻水

・喘鳴(ぜんめい)

・陥没呼吸(呼吸する度に肋骨の下がへこむ)

・気管支炎(喘息様気管支炎 4歳未満の乳幼児に見られる)

・細気管支炎(特に生後6ヶ月未満の赤ちゃんに多い)

・多呼吸

・肺炎(喘鳴を伴う肺炎は3歳未満の乳幼児、喘鳴を伴わない肺炎は5歳未満まで見られる)

・無呼吸発作

・不眠症

もしRSウイルス感染症にかかったとしても、およそ7割は鼻水・咳・発熱のような風邪と同じ症状だけで治まることが多く、RSウイルス感染症と気が付くことなく、ただの風邪だと済ましてしまうこともよくあります。しかし、残りのおよそ3割は重症化し、強い咳、呼吸をする度に“ゼイゼイ”といった呼吸音のする「喘鳴(ぜんめい)」、気管支炎などの症状が出ます。RSウイルスに感染したおよそ1~3%の人が重症化し、入院するといわれています。

大人の場合は、RSウイルス感染症になっても、ほとんど軽症で済むことが多いのですが、乳幼児の場合はその症状の出方には個人差が大きく、重症化することも多いようです。RSウイルス感染症が重症化するとおよそ40%の幼児が細気管支炎を併発するといわれています。細気管支炎は、肺の内部にある呼吸に必要な細気管支の中で炎症を起こし、細気管支が狭くなってしまうことで呼吸が苦しくなり“ゼイゼイ、ヒューヒュー”といった喘息に似た症状が出て、肺炎になるリスクを高めてしまいます。

生後1ヶ月未満の新生児がRSウイルスに感染するのは稀なケースですが、発症すると咳や鼻水などの症状の他に、授乳の飲む量が減ったり、機嫌が良くなかったり、常にウトウトと眠そうにするなどの症状が出ます。最悪の場合、呼吸をしなくなってしまう「無呼吸発作」や突然死につながることもあります。新生児の場合、RSウイルスに感染したとしても、咳などの呼吸器系の症状が出ないことも多く、発症してもすぐにRSウイルス感染症であるという診断が出来ない場合もあります。

また、1歳以下の赤ちゃんがRSウイルス感染症にかかると、およそ30~80%という高い確率で「中耳炎」を併発します。その他にも、RSウイルス感染症による合併症として、脳内に炎症が起こり、意識障害やけいれんなどの症状が出る「脳症」、尿の異常をきたす「ADH分泌異常症候群(SIADH)」があります。
特に注意が必要とされる赤ちゃん
下記に該当する赤ちゃんや幼児は、RSウイルス感染症にかかると重症化しやすく特に注意が必要です。

①初めてRSウイルス感染症に感染した赤ちゃん

RSウイルスに対する免疫がないため重症化します。

②低出生体重児・早産で生まれた赤ちゃん

身体機能や臓器が充分に発育した「正産期」に生まれてきた赤ちゃんに比べると、低出生体重児や早産で生まれてきた赤ちゃんは身体の発達が不充分です。そのため、免疫力も低く、肺や器官に炎症が起こってしまうと呼吸機能も充分に発達していないこともあり、重症化してしまいます。

③生後6ヶ月未満の赤ちゃん(その中でも特に生後3ヶ月未満の赤ちゃん)

生後1ヶ月未満の赤ちゃんがRSウイルス感染症にかかってしまうと無呼吸を起こしてしまう可能性があります。

④心臓や肺、免疫不全など疾患のある2歳以下の乳幼児

上記以外にも、肺や心臓に何らかの疾患を持っている高齢者、神経・筋疾患・免疫不全のある方も年齢に関わらず重症化しやすい傾向にあります。
RSウイルス感染症の感染経路は?

RSウイルス感染症の感染経路としては、空気感染はなく、主に「飛沫感染」と「接触感染」といわれています。飛沫感染は、RSウイルスに感染した人の咳やくしゃみ、会話の時に出る唾液が飛散し、それを吸い込んでしまうことで、鼻や喉の粘膜でウイルスが増殖して、RSウイルス感染症に感染してしまうことです。接触感染は、RSウイルスの含まれた鼻水や痰を直接触ったり、舐めたり、目や喉、鼻の粘膜にRSウイルスが付着することで発症します。手指などの皮膚の接触だけではなく、衣服、おもちゃ、ドアノブ、スイッチ、手すり、タオルやコップについたウイルスからも感染します。RSウイルスは体内から外へ出てから、4~7時間生存し、感染する力があるといわれています。

RSウイルスは感染力が強いだけではなく、ウイルスの排出期間が7日から最大21日までと長いため、より感染が拡大しやすいと考えられています。家族や兄弟など同居している身近な人がRSウイルス感染症を発症してしまうと、完全に隔離しない限り、かなりの高い確率で赤ちゃんにもうつってしまう可能性があります。もし家族にRSウイルスの感染者が出てしまった場合は、感染者にはマスクをさせ、感染者が触れた手すりやスイッチなどの部分はアルコールや塩素系の消毒剤などを使ってこまめに消毒し、極力お子さんと感染した人を接触させないように心掛けましょう。
RSウイルス感染症の潜伏期間

RSウイルス感染症は感染したとしても、すぐに症状が出るわけではありません。発症するまでに潜伏期間があります。通常、RSウイルス感染症の潜伏期間は4~6日間といわれています。しかし、RSウイルスは症状が出る前でも感染力があり、また、症状が消えたとしても1~3週間は感染する力が残っていて、実際の所、RSウイルス感染症の潜伏期間は2~8日あると考えてもいいかもしれません。

RSウイルスは体内に入り込むと肺や器官まで到達してしまうため、潜伏期間から発熱や咳、鼻水といった風邪と同じような症状が見られます。発症してから1~2週間で症状も軽くなってくることも多く、登校・登園も可能になりますが、鼻水や唾液などの排泄物にはまだRSウイルスが含まれていることもあり注意が必要です。
RSウイルス感染症の治療方法

RSウイルス感染症の疑いがある場合、鼻に綿棒を入れ、鼻の中の粘膜を採取し、それをおよそ30分程度試薬に浸すといった「RSウイルスの抗原検出キット」による簡易検査を使用し、RSウイルス感染症であるという判断をします。しかし、RSウイルス感染症であるという診断が出たとしても、残念ながらRSウイルス感染症に対する特効薬は現在の所ありません。海外ではRSウイルスに効果があるとして“リバビリン”という薬が使用されていますが、RSウイルス感染症の重症化を防ぐ根拠がまだきちんと確立されていないことなどから、日本国内においてはまだ使用が認められていません。

もし、RSウイルス感染症になるとRSウイルスによる症状を軽減するための“対処療法”が行われます。咳や発熱を和らげたり、気管支を広げて呼吸を楽にしたり、痰を切ったりなど、症状を抑えるために解熱剤、気管支拡張薬、ステロイド薬などが処方されます。それに加え、水分補給、栄養を取る、鼻水をこまめに取る、乾燥を避けるために部屋を加湿する、安静にするといったことが重要になってきます。重症化してしまった赤ちゃんが授乳をしても飲みが悪かったりする場合は、脱水になることを防ぐために水分や電解質などを点滴静注により投与する“輸液”の処置が取られます。呼吸が困難な場合は必要に応じて、酸素を吸入してくれる人工呼吸器をつけることもあります。
RSウイルス感染症の予防薬

RSウイルス感染症の特効薬はありませんが、RSウイルス感染症の重症化を防ぐための「シナジス」(パリビズマブ)と呼ばれる予防薬の注射があります。しかし、シナジスの投与を受ける際、保険が適応されるのは、基本的にRSウイルス感染症にかかった場合重症化するリスクが高い赤ちゃんや幼児が対象となります。

【シナジスの保険適応となる乳幼児】

①早産児

妊娠28週以下で生まれた1歳までの赤ちゃん

妊娠29~35週以下で生まれた月齢6ヶ月までの赤ちゃん

②慢性肺疾患のある乳幼児

過去半年以内に、呼吸困難の症状があり、生後1ヶ月以降も酸素吸入が必要とされる慢性肺疾患「気管支肺異形成症」である2歳までの乳幼児

③免疫不全のある乳幼児

2歳までのダウン症候群の乳幼児

④先天性心疾患のある乳幼児

生まれつき心臓や血管に何らかの異常が見られる先天性心疾患のある2歳までの乳幼児

上記以外の場合は自費となり、お子さんの体重にもよりますが、体重がおよそ3キロで約8万円、体重がおよそ10キロで約24万円と大変高価なため、実際自費で注射を受ける人はあまりいないのが現状です。
RSウイルス感染症の治療期間

RSウイルス感染症にかかると、大半は発症してからおよそ1週間から2週間ほどで咳や鼻水などの症状が治まり、完治するまでにはおよそ2週間はかかるといわれています。しかし、肺炎や細気管支炎などを併発するなど重症化してしまった場合、それ以上の治療期間や入院が必要となり、症状によってはRSウイルス感染症が治るまで1ヶ月もかかることもあります。

また、3歳までにRSウイルスが原因で細気管支炎にかかってしまうと、気道が過敏になってしまい、7歳までにおよそ3割がぜんそくになってしまう可能性が高いといわれていて、RSウイルス感染症の治療が終わったにも関わらず、今度はぜんそくに対する治療も必要となってきます。
症状に注意しましょう
RSウイルス感染症が原因で、乳幼児がかかる肺炎のおよそ50%、細気管支炎のおよそ50~90%のス感染症によるものともいわれ、インフルエンザよりもRSウイルス感染症による死亡数が多いというデータもあります。1歳未満の乳児の場合、突然呼吸が止まって死に至るケースもあり、とても怖い病気です。眠れないほど何度も咳込んだり、嘔吐したり、呼吸が早く苦しそうにしていたり、顔や唇が青紫色になるなど変化が見られた場合は、たとえ夜間であってもすぐに病院で診てもらうようにしましょう。RSウイルス感染症を発症するのは、大半は乳幼児だといわれていますが、小学生以上の子供や大人でも感染する可能性があるので注意する必要があります。
まとめ

RSウイルス感染症のみならず、様々な病気にかからないためにもまず“手洗いとうがい”が基本的に必要となってきますが、赤ちゃんや小さなお子さんには充分な手洗いとうがいをしてあげられないこともあります。RSウイルス感染症が流行する冬から春にかけては、不必要な外出となるべく人混みを避け、RSウイルスに感染してしまうリスクを高めないようにしましょう。

大人にとってはただの風邪と思っていても、実はRSウイルスに感染していて、知らないうちにお子さんにうつしてしまうなんてことにもなりかねません。まずは、パパやママも外出する際にはマスクをしたり、手洗いやうがい、アルコール製剤などの消毒剤を使って消毒を徹底するなどして日頃から風邪をひかないように心掛けましょう。もし風邪気味かなと思ったら、細心の注意を払って赤ちゃんやお子さんと接するようにしましょう。

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