期間限定の愛人 完結編

服役囚を待つ女の、はかないひと時のラブアフェア…。 貴方は 期限付きの私の愛人…。

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真夏の別れ 1⃣

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2013/07/23 00:11:30

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夏の午後の熱い日差しは、少しずつ 西に傾き始めていた。


だが、エアコンの効きすぎたホテルの部屋は、薄いバスローブ一枚のルリの素肌を、やがて冷たく凍てつかせる。


それから ルリは 再び素っ裸になると、ベッドに横たわるマキの傍らに滑り込み、男の熱い肌の感触を忘れまいと、身体を密着させた。


体毛の薄い 彼の身体は、滑らかな硬い筋肉で覆われ、腋の下に顔を寄せると 微かに甘い ブルガリ・ブルーの香りが 漂ってくる。


ほのかな香水は、マキの体臭と混じり合い、ルリの消えかけた官能を また刺激し、 喪失への不安を掻き立てるのだ。


(…さあ、そろそろ 別れを告げねばならない…。)




だが 、意外にも 突然 別れを切り出したのは、マキの方であった。



「 ルリ…、俺はもう 無理かもしれない。
貴女と これ以上付き合うと、自分が何を言い出すか わからないんだ。」



「 …えっ? どういうこと…?」


ルリは、唐突なマキの言葉に頭を上げ、 胸にしがみつきながら、マキの顔を 思わず見つめていた。


マキは 長い左腕で 小さなルリを巻き取る様に抱きしめながら、虚ろに天井を眺め、呟いた。



「 このご時世の厳しさで、会社の業績が 最悪なんだ。
夏のボーナスは、とうとう カットどころか 支給ゼロだった。 俺は一応 これでもしがない課長で管理職だから、責任は重い。
このまま 最悪の状態が続けば、もしかすると うちの営業所は年末までで閉鎖…ってことにも なりかねない。
そうなれば、俺は 良くて転勤、悪ければ 解雇させられる可能性もある。」



「 …仕事が…上手く行ってなかったの?」



意外な話である。



だが、マキは 輸送関連大手の下請け会社勤め、まさか そんな話が 彼の口から飛び出すとは、ルリは予想も していない。



しかし、ルリの契約者にも多数居る、 運送関連会社の 不況による落ち込みぶりは、確かに 酷いものだ。


デフレによる 輸送運賃の低価格競争、下がらない軽油やガソリンの経費増大、ドライバーや営業社員の人員削減…などの厳しい話を、ルリは 日常的に 顧客から 耳にしていた。



全国的な不況の嵐は、ルリやマキの住む地方都市を、モロに直撃しているのである。



「 …それから 実はさ、俺んちの 16才の次男が、今年の春 高校入学して直ぐに、学校が合わない…って、勝手に退学しちまったんだ。
それで、夏から博○の 美容専門学校に 通いはじめた。
男の癖に オシャレばっかりする野郎でさ、メイクアップアーティストになりたいなんて 言いやがってね。 仕方なく 許したんだが、専門学校の入学金やなんやで、100万位 かかったよ。
私立高校の入学金は パア…、納めたばっかで、ドブに棄てたみたいなもんだった。
おかげで 親は、もう スカンピンなんだよ…(笑)」


マキは 寂しく笑ったが、ルリは とても笑える気持ちには ならなかった。



息子レイの 高校入学の頃、ルリも 離婚したばかりで 金銭的には 死ぬほど苦労していた。



レイは 幸い金のかからない息子だったから、ルリは 運良く 片親で なんとか切り抜けて来たが、マキは今 まさしく、 そんな庶民の親たちが味わう苦労に 直面しているのだ。



「 こうして 貴女に、 わざわざ 危険を侵して 遠距離を会いに来させていること…、俺は本当に、そんな自分が情けないと思う。
正直言って、往復のガソリン代も 高速料金も 惜しい。
今 俺は、とても 浮気なんか 出来る身分じゃないんだ。
自由なルリが うらやましいよ…。」



プライドが高く、常にスタイリッシュなマキが、初めてルリに見せる 哀れな男の顔であった。




以外 次号

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