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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2018/05/18 13:25:01

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「おじいちゃま、これ咲華が作ったの。」

「おっ。上手に作ったなあ。」

「咲華、俺にもくれ。」

「お父さんは誕生日じゃないでしょ~?」

桐生院家では…クリスマスイヴほどではないけど、ささやかながらパーティーが開催されている。

サクちゃんが作ったタルトを、お義父さんが優しい笑顔で頬張った。


「誰に習ったんだ?」

「今日、調理実習で作ったの。」

「そうか。とても美味しいよ。」

初めて出逢った頃は五歳だったサクちゃんも、今や桜花の中等部二年生。

だけどその優しさと可愛らしさは変わらない。

どんな時も穏やかな笑顔でみんなをホッとさせてくれる。

「咲華、よく残してたな。全部自分で食ったかと思った。」

「もうっ!!華音たら!!」

サクちゃんと双子のノン君は…ぐんと背も伸びて、お義兄さんに似て来たなあ…ってしみじみ思う事がある。

それは、言葉の節々にだったり…斜に構えて鼻で笑う所だったり…

だけど。

「ばーちゃん、これ美味かったからあげる。」

「え?華音のがなくなっちゃうじゃない。」

「いいよ。俺は。」

「でも。」

「ばーちゃん、これ好きじゃん。」

「…もうっ。可愛い孫っ。」

そう言ってお義母さんに抱きしめられるノン君。

お年頃になっても、『おばあちゃん子』は健在。


「…乃梨子姉、こぼれてる。」

真正面に座ってる華月ちゃんに指摘されてハッとすると。

あたしは手にしてた小皿を傾けすぎて、中身をこぼしてしまってた。

「あら、大丈夫?スカート汚れなかった?」

「あっ、お義姉さん…大丈夫です…」

慌ててテーブルを拭いて…取り繕うような笑顔を向ける。

五年生になった華月ちゃんは、昔より磨きのかかった美貌と…相変わらずの冷めた表情であたしをじっと見て。

「…はい。」

自分の小皿をあたしに差し出した。

「…え?」

「あげる。」

「……」

「あたし、おじいちゃまのを半分もらうから。」

「…ありがと…」

素直に小皿を受け取った。

昔から…華月ちゃんは何かと敏感にあたしの気持ちに寄り添ってくれる。

今ここで何かを問いかけると…感じたままの事を言われそうで…辛いと思った。


…妊娠しない理由は…あたしにあった。

検査の初期段階で…子宮が奇形なのは言われてたけど…

それでも、妊娠出来ないわけじゃないから、と。

色んな可能性を求めて…検査を進めていった。

…だけど…

あたしには、妊娠出来る条件が…何一つ見つからなかった。

『ご主人も一度一緒に検査を受けて、最善策を話し合ったらどうでしょう?』

先生は何度もそう言ってくれたけど…

もう…あたしの心が折れていた。


あたしが、ダメだった。

せめて、もっと早く検査を受けていれば…

先生や看護婦さんも、本当はそう思っていたかもしれない。

ううん…被害妄想でしかないんだけど…

それでも、あたしはここに帰って来るまでの数時間の間に、何度も…自分を責めた。

どうして…と。


あたしは…桐生院の名前を残す事が出来ない。

…誓君とは…別れた方がいいのかもしれない…

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