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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/13 22:43:38

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「うえええええええん!!」

「ちー…そんなに泣くなよ。男だろ?」

「ああって!!ちーも!!ちーもアキちゃんと一緒に行きあいいいいい!!」

お迎えの車が来て、僕が幼稚舎に行く時間なのに…

ちーが泣いて僕とお手伝いのハチさんを困らせる。

「ちー坊ちゃま、今日は坊ちゃまの好きなプリンもありますよ?」

「やあ~あああああ!!アキちゃんと一緒のがいいいいいい!!」

「……」

正直…困るけど…

困るけど…

嬉しいんだよね。

ちーはみんなから可愛がられてるけど、僕は特別みたいじゃん?

こうやって、毎朝今生の別れみたいなのが儀式になってて。

『千秋は千里に愛されてるなあ…』なんてつぶやきが聞こえてくると、鼻が高いよ。

僕は千里に選ばれてるんだって思っちゃうね。


「ちー、いいか?僕の話を聞くんだ。」

僕は、ちーの頭を撫でながら。

「今、僕は人生勉強が始まったばかりなんだ。」

「……」

半べそをかいて僕を見つめるちーと、目を細めるハチさん。

「人生80年だとしたら日にちは29200日。時間にして700800時間。そのうち僕はもう1890日生きてるんだ。でもその中でも最初の一年はほぼ睡眠でつぶしてる。」

「…ち…千秋坊ちゃま、ちー坊ちゃまには難しいお話ですよ?」

ハチさんがそう言って間に入ったけど。

「何言ってるの、ハチさん。僕は、ちーに人間として我慢すべきところは子供でも我慢すべきと諭させるための話をしてるのに。」

僕はキッとハチさんを見て言った。

そして、またちーを見て。

「もっと簡単に言うと、まだ子供だからって安心してると、あっと言う間に人生は過ぎてしまうって事だ。僕にはやりたい事がたくさんある。それを全部やり遂げるには、本当は幼稚舎なんて行きたくない。行きたくないが、これも人生勉強の一環として捉えるしかないと理解しようとしているんだ。だからおまえにも分かって欲しい。」

つらつらと言い切った。

「……」

ちーは目に涙を浮かべたまま(これが本当に可愛くて仕方ないんだけど…)、僕を見つめて。

「…わかっらよ…アキちゃん…行ってらっしゃい…」

小さくそう言った。

胸の奥がズキンズキンするけど、あと9か月したら、一緒に幼稚舎に通えるんだから。

すぐだよ。

「アキちゃんが帰るまでに…イラリア語の勉強…しておくね…?」

イタリア語だろ?

そう言い返したかったけど、そこだけは飲み込んだ。

ちーは、泣くと『た』が上手く発音出来なくなる。

まったく…いつまでも赤ちゃんだなあ…


結局…こんな毎朝のやりとりは、夏まで続いた。

僕が夏休みに入ってからは、ちーは僕にベッタリで。

僕より少し早く夏休みで、ちーの面倒を見ていたはずの大きい兄ちゃんと二番目兄ちゃんからヤキモチをやかれた。

仕方ないだろ?

ちーは、僕が好きなんだから。

僕もちーが大好き。

出来れば…

同じぐらい、頭が良くなってくれたらいいなあ。

そうしたら…

ずーっと一緒に、勉強や研究や仕事が出来るんだけど…な。

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