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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/13 08:03:24

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「……」

さっきの…目。

あたしは、それを見た事がある気がした。

…そうだ。

聖を産んだ後の…母さん。

産後鬱だ…って診断されたって言ってたけど…

あれ、本当だったのかな。


「気にするな。疲れてるだけだ。おまえの飯食ったから、もう平気だ。」

千里が遠慮がちにあたしを抱き寄せる。

あたしは千里の背中に手を回して、ギュッと千里を抱きしめると…

「…ごめんね…千里…」

千里の胸でつぶやいた。

「だから…どうして謝る。おまえは謝る必要なんてない。」

「だって…あたしの器が小さいせいで…」

「あ?何言ってんだ。俺と離れたいって思ったほどの事だぜ?」

千里があたしの頭に唇を落とす。

…久しぶりにそうされて…胸がいっぱいになった。

「おまえの器どうこうじゃない。日常になんの不満もないって思ってた俺に、気付きが足りなかっただけだ。」

「そんな…千里がそう思ってくれてたのは、あたしにとっては幸せな事だもん。」

「俺にとっては不名誉だ。自分の気持ちには満足でも、家族の想いまで気付こうとしなかった。」

「……」

「夫としても、父親としても失格だ。」

「……そんな事言わないで…」

顔を上げて、千里を見る。

すごく胸が痛かったけど…なぜか千里は…

「失格だが、気付かせてもらえた。これからは挽回するだけだ。」

ほんのり笑顔で。

その笑顔が…あたしにはもっと痛くて…

「あー…泣くな。」

千里が、乱暴にあたしの目元をなぞる。

「だって…あたしが…」

「おまえは言いたい事言って、笑っててくれりゃいいんだよ。どんな知花でも、俺は大丈夫だから。」

「……」

「娘の幸せを反対しようとした、カッコ悪い父親だ…って、気付かせてくれたんだからな。」

千里の胸に顔を埋めて、少しだけ泣いた。

そんなあたしの頭を、千里は懐かしむかのように…撫でてくれた。

「…さ、送るから。」

「うん……」

手を引かれて、玄関まで歩く。

「……」

あたしが帰ることを渋ってしまってると、それに気付いたのか…

「明日の仕事は?」

早口に聞かれた。

「…明日は…午後からミーティング。」

「何時まで。」

「…五時まで。」

千里はあたしに背を向けて靴を履いて。

「…明日も、飯作りに来てくれないか?」

小さな声で言った。

「…え?」

「無理ならいい。」

「…無理じゃないから…来る…」

「…分かった。」

「何時に帰る…?」

「八時ぐらいだと思う。」

靴を履いて…隣に並ぶと。

「…やっぱ、おまえの作る飯はサイコーだ。」

千里は恥ずかしそうに。

「ふっ…なんつーか…二人きりだと、あの頃の続きみたいだな。」

あまり…見た事がないような、はにかんだ顔をした。

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