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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/09 19:54:45

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「……」

マンションに帰ると…

「あ、おかえりー。」

咲華がいた。

「…ただいま…って、おまえリズは。」

「寝てる。」

咲華が指差した和室に、リズはバンザイのポーズでスヤスヤと眠っていた。

つい…目元が緩む。


「…海は。」

「お仕事。」

「……」

咲華は、今朝一緒に洗濯して干した俺の服を、ベランダから取り込んでくれていたらしく。

「さ、これたたんで。」

カゴを俺の前に差し出した。

「帰ってすぐそんな事を…」

「母さんは帰ってすぐ、料理したり洗濯物たたんだりしてるよ?」

「……」

なんで俺が知花と同じようにしなきゃなんねーんだよ。

今もハッキリと分からない別居の理由。

その原因の一つに…俺が何も出来ない事っつーのが入ってるなら?

まあ…やらなきゃいけねーんだろーなー…とは…思う…


まずは手を洗って、ソファーに座っている咲華の隣に腰を下ろした。

「…おまえは二階堂に行かなくていいのか?海は明日向こうに行くんだろ?」

咲華を見ないままそう言うと。

「行ったよ、今日。今夜もあっちに泊まる。」

咲華も…手元を見たまま言った。

「今日行って…東さんのご両親に…挨拶して来た。」

「……」

『東さん』…な。

「何か言われたか。」

「…幸せになって下さいって。」

「問題はないんだな?」

「…ご両親とは…ね。」

「……」

「…帰国する前に…向こうで会ったの…」

「…志麻とか。」

「…うん…」

咲華を見る。

伏し目がちの咲華は、俺の二日分の洗濯物をカゴから仕分けしているようだ。

「一瞬…誰だか分からないぐらい…痩せて…って言うか、やつれてた。」

「……」

「目付きも…あたしの知ってる彼じゃなくて…」

「…咲華。」

「…え?」

「今、あいつには時間が要るんだろう。だがそれは咲華が気に病む事じゃない。」

「……」

咲華の手元からタオルを取ってたたみ始める。

「志麻には志麻の道があるはずだ。おまえはもう違う道を歩いてる。」

「…うん…」

「確かに、違う意味で近い存在にはなってしまったかもしれないが…それでも毅然としていろ。海だって気にならないわけはない。だがおまえが毅然とする事で、海は安心する。」

「……」

「現場に出向く海に、不安な顔は見せるな。」

「……うん。そうだね。」

タオルをたたんでるだけなのに、大仕事な気がした。

そんな自分に小さく笑いたくなった。

はー…

ほんとに俺は…。


それからしばらく無言で洗濯物をたたんだ。

こうしてると…知花がどれだけいつも几帳面に片付けてくれていたか分かる。

元々、家の事をするのは好きだと言っていた。

最初の結婚の時も…こういう言い方はどうかとも思うが…

完璧だった。

若干16歳で、家事全般が。

高原さんの話だと、義母さんもそうだったと。

うちの子達は、義母さんと知花にベッタリだったから…自然と家の事も出来るようになっていたのかもしれない。

俺は勝手に、そこは俺のテリトリーじゃない。なんて思ってたのか…

いつも高みの見物だった。


…まさか咲華と並んでこんな事をするなんて、夢にも思わなかった。

俺と咲華はなぜか…よく険悪になってたしな。

周りにも『華月には甘いのに咲華には厳しい』って言われたが…


「…咲華。」

シャツにアイロンを掛けようと言われて、生まれて初めてのアイロンを手にして。

「…何?」

「俺は厳しいか?」

これまた…咲華の顔を見ずに問いかける。

「……どうしてあたしにだけ?って思ってた時期もあるけど、別にもういいよ。」

「おまえにだけ厳しくしてたつもりはないが…一緒にいる時間が少なかった分、そう取られても仕方なかったとも思う。」

「…だから、もういいって。なんか…こんな言い方したら…父さんに悪いけど…」

咲華は少し言いにくそうに、だけど俺のアイロンを持つ手つきが怖かったのか『もっとしっかり持って』と言ったあと…

「この別居…あたしにとっては良かったなあ…って。」

小声で言った。

「……」

その言葉に、俺がフリーズしてしまうと。

「あっ、ごめん。でもさ…なんか…桐生院にいると、絶対誰かいるし…こんな風に父さんと話すなんて出来なかったと思うから…」

咲華は慌ててそう付け足した。

「別に大家族が嫌いなわけじゃないし、居心地が悪いわけでもないんだけど…あたし、なんて言うか…」

「……」

「一人だけ蚊帳の外…って思う事がよくあったから…」

それを聞いた俺は、アイロンをゆっくり置いて。

咲華の頭を抱き寄せた。

「なー…なっ、何?」

「悪かった。」

「……」

「そんな想いをさせて…悪かった。」

「…父さん…」

「……」

涙が出た。

娘の前で泣くなんて…俺も歳を取ったなー…


「…あたしの勝手な被害妄想だよ…父さんも母さんも、あたしにとってはカッコいい両親だし…華音だって華月だって…おじいちゃまもおばあちゃまも聖も…最高の家族だもん…」

咲華が俺の背中に腕を回して、ポンポンとする。

「あたし…そうやって卑屈になって、ちょっと忘れちゃってたけど…」

咲華も涙声で。

それが…よりいっそう俺の涙を止まらなくした。

「思い出したよ…父さんがあたしの事、いつも…守ってくれてた事…」

「……」

「嫌い…なんて言って…ごめん…」

「ふ……っ…」

…こんなに泣いたのは…何年ぶりだろう。

知花から別居を言い渡されて、かなり堪えた。

誰にも会いたくないほど。

それでも仕事には行かなきゃなんねーし、歌う事もやめられない。

ここ数日で俺の生活は激変して、自信も…なくなりかけてた。


「…母さん、言ってた…父さんの事好き過ぎて、自分が分からなくなった…って。」

「……」

「だから…母さんの事、嫌いにならないで…時間をあげて?」

俺は涙を拭って顔を上げると。

「…安心しろ。あいつを嫌いになるとか、有り得ねーから。」

まだ少し心細い気持ちを隠しながら…そう言った。

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コメント2

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  1. ワカナさん(103歳)ID:6612303・10/09

    ヒカリさん♡
    新幹線の中なのに
    涙が堪えられませんでした(。>_<。)

  2. ココロさん(77歳)ID:6612265・10/09

    泣けます(>_<)

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