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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/07 20:03:49

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「……」

「…ただい……親父?何してんだ?」

俺がカレンダーを前に仁王立ちしていると、帰って来た華音が俺の肩越しにカレンダーを覗き込んだ。

「新しいスケジュールでも入ったのかよ。」

「…別に何も。」

「全員分暗記でもしてんのか?あー腹減った。母さんは?」

「…まだだ。」

「え?」

俺がカレンダーを見たまま答えると、キッチンに入りかけた華音はもう一度カレンダーの前に立って。

「今日、スタジオは四時終わりじゃん。またオタク部屋か?」

呆れたような声で言った。

「ああ。」

「ったく…咲…最近の母さんはシンガーなのかオタク部屋の社員なのか分かんねーな。」

華音は『咲華が旅立ってから』と言いたかったのかもしれないが…

俺の反応を気にしてか、それを飲みこんだ。


そう。

咲華が旅立って二週間。

連絡を取らないと言われたからには…もちろん、こちらからも何もしていない。

その間に、陸が二階堂で話をして来たらしいが…

東家の方では、『本人に任せている』しか言わなかったようで。

直接親からうちに連絡もなかった。

それはいいとして…

志麻からも何の連絡がないとは、どういう事だ?と思ってたが…

「あいつ、ダメージ大き過ぎみたいで…ミスって現場を外されてるらしいっすよ。」

陸がそう言った。

きちんとしてる奴だったのに、別人みたいになってる。とも。

…志麻にも、時間が必要だと思った。

時間が必要なのは、咲華と志麻と…他にもいた。

知花だ。

あれから知花は…SHE'S-HE'Sの仕事が終わっても、すぐには帰って来なくなった。

オタク部屋か…高原さんにボイトレをつけてもらったりして。

晩飯の支度までに帰る事もあれば、帰らない事もある。

一応俺に連絡はしてくるが…

俺に連絡した所で、俺は晩飯を作れるわけじゃない。


あいつなりの寂しさの紛らわせ方なんだと思うと、反対するわけもいかない。

オタク部屋に通い詰めなのは…正直面白くないが…

ボイトレを高原さんに頼んでるのも…何で俺じゃないんだ?って面白くないが…

長年離れていた親子だ。

そんな時間があってもいい…。


「で?どこかに食いに出かけようとでも思ってたのかよ。」

冷蔵庫を覗きながら華音が言った。

「おまえが帰って来なければ、そうしようかとも思ってた。」

「華月は?」

「早乙女家で食って帰るらしい。」

「聖は…飲みか。んじゃ、何か作るか…」

華音がキッチンで料理を始めても、俺はカレンダーの前から動かなかった。

小気味いい具材を切る音。

華音の料理好きは、義母さんの影響が大きい。

咲華よりも丁寧で細かい。

…ついでに、華音に料理を教えたはずの義母さんよりも。


「ちょっと、この間にシャワーしてくる。」

テキパキと料理をした華音は、鍋を火にかけて弱火にしたままそう言った。

「吹きこぼれたり…」

「しねーよ。俺がシャワーから戻ったらちょうどいいぐらい。あっ、蓋開けて覗いたりすんなよ。微妙に味が変わるから。」

「……」

うちの事務所の次世代を担うバンドのギタリストが…

煮物の鍋の蓋を開けるな、と。

それは正しいのかもしれないが、俺から言わせると…どうでもいい事だ。


ここに居ても開けるなと言われた蓋を開けたくなったら困る。と思って、広縁に行った。

まだほんのり明るい空に、少しずつ星が瞬き始めてる。

俺はそこに腰を下ろして…庭を眺めた。

数日前…知花もここで、ボンヤリと景色を眺めていた。

声をかけたが振り向かなかった。

必死で…何かを考えていたような気がして、それ以上は近寄らなかった。


咲華を行かせたくなかった。

里中にはそう言ったと聞いたが…

結局知花は俺には一言も愚痴らなかった。

まあ…里中も言ってたが…

近い者にほど言えない事もある。

俺だって、知花に言わない事は多い。

俺の場合、言えないんじゃなくて…言いたくないんだが。


咲華の事を一ヶ月忘れると言ったら、知花から冷たいと言われた。

…そうか。

俺は…父親失格なんだろうな。

面と向かって『嫌い』と言われて以来、咲華にどう接していいか分からなかった。

その結果が…これなのかもしれない。

咲華は俺にも知花にも…とにかく、『親』に、志麻と別れた事を…旅立ちたいと言う日まで告白しなかった。

…言わせなくしてしまっていたのかもしれない。

いや…

本当なら…もうとっくに娘離れしてなきゃいけなかったんだ。

これがいい機会になったと思えばいい。

そう言い聞かせるものの…

咲華の事を考えると、溜息しか出ない。


「…親父、飯食おうぜ。」

気が付いたら、隣に華音がいた。

「…ああ。」

「そんなしけた面すんなよ。」

「息子の手料理が食える、幸せな父親って顔のつもりだが。」

「ぶはっ。笑わせんなよ。」

「…おまえは優しい奴だな。」

「…親父似かな。」

「……」

自然と、肩を組んで歩き始めた。

いつの間にか俺の背を越してた華音と、こんな風にするのはいつぶりだろうか…

少し…気持ちが上がった。

華音の作った美味い飯にも…感謝。

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