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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/07 18:24:58

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「ちょーっと待った。」

立ち上がって里中に背中を向けた俺の肩に、里中が手をかけた。

ガシッと。

テーブル越しに。

そんなわけで…里中の前に置いてあったうどんの器が、はずみで動いて…

里中の腰回りにかかった。

「うわっっつっ!!」

里中は飛び跳ねるようにして熱がったが、やがてそんなに熱くない事に気付いたのか…周りを少しだけ見渡して照れ笑いをした。

「まあ、座れよ。」

「……」

うどんの汁のシミが、股間付近に広がってる。

それを見て、何となく怒りが鎮まった俺は…

無言のまま、里中の前に座った。


「どうせ…あれだろ?知花ちゃんが俺に話したのが面白くないって腹立てたんだろ?」

器を持ち上げて、テーブルの上を拭きながら里中が言った。

「……」

図星過ぎて、俺が黙ったままでいると。

「メンバーは家族の事知ってるから、言い辛かったんじゃないかな。」

里中は股間にまで広がったシミに気付いたのか、紙ナプキンをパタパタとそこに当てた。

「…確かにな。」

それは…俺にも当てはまる。

誰にも知られたくないと思い過ぎて、溜息さえつくのを我慢しているアリサマだ。

…だが。

知花は、俺にも言わない事を里中に言ったんだ。

落ち込んでる、と。

俺の前では普通に笑ってるのに。


「彼女、おまえの事好きで好きでたまらないんだな。」

里中は残ったうどんを一気にすすって汁も飲み干して器をテーブルに置くと、両手を合わせて『ごちそうさま』とつぶやいた。

「…知花がそう言ったのか?」

「そうは言わないけど、おまえ一人を悪者にしたって落ち込んでた。」

「は?」

「本当は娘さんを行かせたくなかったってさ。だけどいい母親でいたかったのと、自分が反対したら娘さんがガッカリするかもって。だけどその結果神だけを悪者にした…って。」

「……」

「娘さんが意に反した事をしたのは今も納得いかないだろうけど、それはもう切り替えるしかないさ。ゆっくりでも日常に目を向けて、早くいつもの神に戻れよ。」

里中は言いたいだけ言って、紙ナプキンをまとめた。

「…いつもの俺ってなんだ?」

眉間にしわを寄せて、頬杖をついて問いかける。

俺は事務所では、平常心のつもりだ。

「会長室に呼び出されるようになってから、毒っ気が消え失せてるぞ。」

「……」

「色々あるんだろうけど、毒が前面に出てるおまえじゃないと、若手がピリッとしないんだよな。」

「…隠れ毒持ちのおまえに言われたかねーな。」

「ははっ。俺のはスタジオでしか発揮されないから。歩いてるだけで毒を撒き散らしてる神に敵う奴なんていないよ。」

「酷い言われようだ。」

「褒め言葉だぜ?」

里中はトレイに紙ナプキンの山を詰め込むと。

「じゃあな。」

返却口に歩いて行って、そのまま社食を出た。

…里中を見る目が、少し変わった気がした。

高原さんに呼び出されて以降の俺が、思い悩んでる事。

アズや知花でさえ気付かない。

…いや、知花が何か相談してる可能性もあるが…


「…歩いてるだけで毒を撒き散らすわけねーだろ…」

小さくつぶやきながら立ち上がる。


今日は…知花と帰るとするか。

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