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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/07 16:06:37

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「…千里、知ってたの?」

知花に遅れてベッドに入ると、知花は消え入りそうなほど細い声でそう言った。

「何を。」

「咲華と志麻さんが別れた事。」

「……」

「やっぱり…だから驚かなかったのね?」

小さく溜息をつきながら横になる。

「俺が話してたら、おまえ咲華に余計な気使ってただろ?」

サイドボードの明かりだけをつけて、天井を眺める。

…こんな模様だったっけか?

「気を使うって…婚約を解消したのよ?志麻さんのご両親に挨拶だって…」

「それは咲華を待たせ過ぎた志麻が悪い。謝罪なら向こうから来るべきだ。」

「……」

「寝る。」


結局…咲華は一人で旅に出る事になった。

反対してるのは俺一人。

みんなから行って来いと言われた咲華の中で、俺の反対なんて一票にも満たなかったらしい。

しかも…

一ヶ月、誰とも連絡を取らないって、ふざけるのもいい加減にしろと思ったが…

それについても、みんな反対しなかった。

こういうのを、腫れ物に触るって言うんじゃないのか?

そんなに言う事を聞いてやらなきゃいけないのか?

やりたい放題にしか思えねー。


…だが、昔、俺も逃げ出した。

誰にも行先を告げず。

あれを引き合いに出すとか…高原さん、結局は中立なんかじゃなかったよな。


眠ろうと思っても寝付けなかった。

目を閉じても、まぶたの裏に張り付いたみたいに見えてくる…咲華の泣く姿。

別れたのに涙も出ない。と言っていたのに…

なぜか俺には、咲華がずっと泣いているように見えた。


「……」

知花を見ると…背中を向けて寝ている。

俺はゆっくりとベッドを出ると、静かに部屋を出た。


大部屋で一人で飲もうと思ったが…ふと窓辺に置いてある家族写真を手にした。

桐生院家の家族写真。

義父さんと、ばーさんも写っている。

「……」


『とうしゃ~ん!!』

『咲華、こっち向け。華音、いい顔しろ。』

照明をつけないまま、DVDを見始めた。

子供達の記録。

『とうしゃん、しゅき。しゃく、ちゅしてあげゆよ?』

『いいか?ちゅは父さんだけにしとけよ?誰にでもするなよ?』

『とうしゃんだけにしゆー。』

『ふっ…聞いたか?知花。咲華は俺以外にキスしないらしい。』

画面の中の自分を見て、鼻で笑ってしまった。

どれだけ親バカなんだ。

だが…本当に、俺にとって子供達は…

月並みな言葉だけど、目に入れても痛くない存在で…

ずっと、そばにいて欲しいと思ってしまう。


『咲華…』

『千里、泣かない泣かない…』

『とーしゃん!!どちたの!?』

『…咲華、ずーっと父さんのそばにいてくれ。』

『そしたら、とーしゃんわやう?』

『ああ。』

『じゃあ、しゃく、じゅーっととーしゃんといゆよ~!!』

『…なんて可愛いんだ…俺の娘は…』

『…親バカね。』


ずっと父さんといるよ…か。

そんなのは大人になったら変わってしまうと解っている事なのに…

俺は今もそれを、真実と思いたいのかもしれない。


俺は…親と離れて育った。

自宅がある頃も、どちらかと言うとじーさんの家に『帰らされる』事が多かった。

俺を育ててくれたのは、じーさんと篠田だと言っても過言じゃない。


そんな二人が立て続けに他界した時、俺の中に大きな穴が開いた気がした。

これから、誰が俺に助言してくれるんだ?って。

いつも顔を合わせなくても、その存在は大きかった。

俺も、子供達にとって…そんな存在でいたいと思っていたが…

…俺の器じゃ…無理だな…。

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