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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/07 11:59:20

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ここんとこ、ずっと帰りが遅い俺は…なかなか咲華に会う事もなかった。

咲華どころか、下手したら家族の誰にも会わない日もあった。

会社の近くのホテルに泊まる事もあったし…夜遅く帰って朝早くに出る事もあったし。

そんな時は、反対に昼間に時間が取れる事もあって…


「…あまり顔出さなくてごめん。」

マンションに行って、誰も居なきゃ居ないでいいとして…

居れば昼飯でも。って。

連絡もせずに訪れるあたり…

たぶん俺、居なきゃいいなって思ってた気がする。


「忙しいんだろ?知花が『聖と三日会ってない』って言ってたぞ。」

父さんだけが…マンションにいた。

母さんは、教室に行ってた。

教室。

何のかと言うと…

実は母さんは、昔々…フラワーアレンジメントの先生をしていた時期があって。

それこそ生徒さん達は何も疑ってなかったと思うけど、俺達身内は『マジでやんの?できんの?』って思ってた。

でも何でか人気があって、文化センターでやってる教室は空きが出るのを待ってる人がいるほどらしい。


「姉ちゃんは会ってる方だよ。裏口から入ったら、みんなを起こすと思ってわざわざ玄関から入ったのに起きて来たりさ。」

「ははっ。知花らしいな。」

父さんは…話しながら、キッチンで何か作ってる。

…桐生院の父さんには、有り得なかった事。


「で?」

目の前に並んだのは、サラダとオムライスとコンソメスープ。

こんなのをチャチャッと作れる年寄り…

それが高原の父さん。

世界の…高原夏希。


「で…とは?」

「何か悩んでる顔してるぞ?」

「……」

父さんの言葉に、スープをすくいかけたスプーンを止めた。

何か…

俺、何悩んでるんだろ。


「…別に悩んでるってほどじゃないよ。」

そう言って、スープを一口。

んー、美味い。

「じゃ、愚痴でも聞こう。」

「……」

「貴司の代わりにもならないと思うが、俺は…貴司にもばーさんにも、おまえを頼むと言われてるからな。」

つい…小さく笑ったついでに溜息が出た。

俺って、こんなに分かり易い奴だったかな。

上手く隠してるつもりなのに、バレバレなのか?


「俺の事を父と呼ぶのが嫌なら、前のように『おっちゃん』って呼べばいい。」

「はっ?何だそれ。もう二年は『父さん』って呼んでるけど。」

「そう呼ぶようになって、会う回数が減った。」

「……」

「俺としては、会える方がいい。おまえにとっての父親が貴司であるなら、それでいいんだ。」

えー…と。

俺…今、なんか…

すげースッキリした気がする…

でもさ…別に『父さん』って呼ぶ事を嫌だって思ってるわけじゃない。

敷居は高いって思ってたけど…


「…俺に会いたいって思ってるんだ?」

何となく視線を泳がせながら聞いてみると。

「大事な息子に会いたくない親なんていない。」

父さんは少し驚いたような顔で言った。


俺が…『父さん』って呼び始めたのは、あのイベントの後から。

ステージの上で、まるで二十代みたいな二人が結婚の約束を交わして…

みんなから祝福を受けた。

俺は母さんの幸せそうな顔に満足したし、桐生院の父さんの罪悪感が消え去る思いだった。

それと同時に…

「…俺、妬いてたのかも。」

小さく笑いながら、うつむき加減で言う。

「誰に。」

「誰にっつーか…みんなに?なんか、どこにいても蚊帳の外って気がして。」

「……」

うちは…複雑な関係図で。

俺より年上の甥と姪がいたり。

その年上の甥と姪の祖母が、俺の母さんだったり。

だからなのかなー…

ノン君が俺の母さんに『ばーちゃん』って甘えるみたいにして甘えられなくて。

俺は小さな頃から…なんつーか…

甘える事を知らなかった気がする。

それに、母さんは…『高原さくら』になった。

だけど俺は『桐生院 聖』のまま。

まあ…仕事をする上でも、俺はこのままの方が良かったけど…

父さんも母さんも、俺に『高原』の姓を名乗る事について聞かなかったから…

疎外感だったのかもな…


「…さくらは、聖が華月と一緒に知花に甘えてて自分に来ないのは、『自分のお母さんがおばあちゃんって呼ばれてるのが嫌だからなのかなあ』って悩んでたぞ。」

「えっ?」

久しぶりに顔を上げて父さんを見た。

「おまえ、華月とは双子みたいだったからな…知花の息子みたいになってただろ?」

「そ…それは、あの家族構成の中にいたら、そんな事になっても…」

「仕方ないよなあ。それに、華音がガッツリな『おばあちゃん子』になってたし。」

そーだよ!!

だとしたら…

俺のこういう想いって、ノン君のせいだ!!(って事に)

ほんっと…いつもいつも、俺の母さんなのに『ばーちゃんばーちゃん』ってベッタリで…


「おまえも、普通に甘えたかったんだな。」

父さんが、スプーンを置いて頬杖をつく。

優しい顔してそんな事言われると…いい歳した男なのに恥ずかしくなった。

「甘えたかったって言うか…いや…でも桐生院にいたら…誰かしらいたし…」

実際、みんなにとっての『大ばーちゃん』は…すげー俺を可愛がってくれてたし。

…俺、何卑屈になってたんだっけ?

こうして色々思い出してみると…

俺、すげーみんなから大事にされてたじゃん…


「…ごめん、父さん。」

「ん?」

「なんか…いっぺんに生活が変わって、もう二年も経ったのに…まだいっぱいいっぱいなのかも。」

「……」

俺のつぶやきに父さんは首を傾げて小さく笑うと。

「まだ二年さ。十分頑張ってるおまえを、貴司はきっと誇りに思ってる。もちろん俺も。」

手を伸ばして…俺の頭を撫でた。

「俺もさくらも、おまえと一緒に居たいって思ってるよ。」

そう言われて…ここんとこ溜まりまくってた黒い塊みたいなのが無くなってく気がした。

「…じゃあ、新婚気分を満喫したら…桐生院に来てくれる?」

たぶん、みんなが切望してるクセに、ハッキリ言えない事を言ってみると。

「可愛い息子がそう願ってくれるなら、必ず。」

父さんは…満面の笑みでそう言った。

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コメント1

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  1. ヒカリさん(99歳)ID:6611231・10/07

    さくらちゃんにアレンジ習いたい。
    サルビアでタワーリングインフェルノ作りたい。

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