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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/07 09:17:43

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「~♪」

「……」

昨夜、知花が『様子がおかしかった』と言った咲華は、朝から鼻歌。

「…何だ。ゴキゲンだな。」

新聞を開いたまま、そう声をかけると。

「…そうでもないけど。」

咲華は鼻歌とは正反対の、何なら少し暗い声でそう答えた。

…そうか。

まだ俺が嫌いか。

そう思うと、こちらも溜息が出る。

京介も言ってるが…

娘というのは、何を考えてるのか分からない。

いや…

華月みたいに分かり易い娘もいるが。

それは、ちゃんと口に出して言ってくれるからであって。


「……」

そう考えると、俺も自己解決する事が多いだけに…

知花や咲華には伝わっていない事は多いかもしれない。

だが、ずっとこのスタンスで生活して来て…平和だったんだ。

この先も変わる事はないと思ってた。


先入観や固定観念は捨て去るつもりでいても、この環境じゃ目に見える物を信じてしまうのは当然で。

その中で口にされた『父さん嫌い』の一言。

そして、それからの咲華の俺に対する態度。

…嫌われてるとしか思えねー。


「あら…オフじゃないの?」

俺が珍しく玄関から出かけようとすると、知花が言った。

知花もオフだが、オフの時の知花はだいたいオタク部屋に出勤だ。

今日も作業する気満々な格好で、出掛ける準備万端。


「…ちょっとブラブラして来る。」

「…一人で?」

「おまえ、里中んとこ行くんだろ?」

「……」

俺の言葉に、知花は自分の姿を見下ろして。

「そう…思ってたけど、ブラブラに付き合いたい気もする…」

「……」

買い物に付き合う気にはなれねーし…

今日一緒に出掛けたとしても、きっと俺は無言だ。

「いいから行け。俺は少し…一人で歩きたい。」

そう言って引き戸を閉める瞬間。

知花の寂しそうな顔が見えた。


表通りじゃない方向に歩いて、昼飯時な事に気付いた俺は。

「…あそこに行くか…」

ゆっくりと歩いて、『あずき』に向かった。


「いらっしゃい。」

ここは…何年前になるか…

まだ咲華が志麻と付き合う前。

会社の帰りに一人で寄っている所を偶然見掛けて。

定食屋に一人で入ってんのか!?と驚きもしたが…

咲華が通うって事は、美味い店なんだろうなとも思った。


咲華が来てなさそうな時間帯を選んで、俺も何度か通った。

知花の飯が一番だが、外食するにも冒険をしない俺のベスト3に入れてもいいぐらいの店だと思った。

声を掛けて一緒に入らなかったのは…

ここは、咲華のテリトリーだと思ったからだ。

…こうやってコッソリ来るのは、それを侵害してる気もするが。


「あら、お久しぶりです。」

恰幅のいいおかみさんは、人の顔を覚えるのが得意らしい。

しばらく来てないのに、覚えているとは。

「テーブル席でもいいですよ。」

「混む時間じゃないか?」

「あと40分は大丈夫ですよ。」

「…じゃあ。」

奥のテーブル席に座って、壁に貼ってあるメニューを眺める。

咲華はいつも、ここで何を食うんだろうな。


「…うちに、二十代の娘が二人いるんだが…」

そばにいるおかみさんに、独り言のようにつぶやく。

「娘達は、この店に来たら、何をオーダーするんだろうな。」

「まあ、それはおうちが華やかですこと。うちにも二十代のお客さんは来られますけど…そうですね~…常連の娘さんの中には、カツ丼を大盛りで頼まれる方もいらっしゃいますよ?」

「……」

大盛り。

もはや、それは咲華でしかないと思った。

「…大盛りは食えないが、カツ丼を。」

「はいっ。カツ丼普通盛り。」


同じ物を食ったとして、分かり合う事はない。

咲華はいつも、俺との間に溝を作っている。

その距離感が、普通の父娘だとしても…

俺にはそれが…

居心地が悪い。

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コメント1

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  1. カオリさん(47歳)ID:6611173・10/07

    千里さんって今更だけど…不器用だよね〜

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