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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/06 14:19:34

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今日は知花と千里さんの結婚式記念日で…千里さんの誕生日。

愛娘である知花の、大事な大事な旦那様の誕生日だもの。

あたしはもちろんだけど…なっちゃんも張り切った。


「えー?これ、おじいちゃまが作ったの?」

華月がテーブルの上に置いたパイをまじまじと見て言った。

「そうよ?初めてにしては、見た目はいいでしょ。」

あたしが腕組みをして言うと。

「見た目はいいでしょ。なんて、失礼だな、さくら。」

エプロンをしたなっちゃんが、シャンパンをグラスに注ぎながら低い声で言った。

「おじいちゃま、座ってて?それはあたしがやるから。」

優しい咲華がそう言ったけど。

「俺がやりたいんだよ。去年は、ほぼずっと病院にいたからな…みんなに心配も迷惑もかけたし、こうした祝いも一緒に出来なかったから。」

「そうよ咲華。年寄りの楽しみを奪わないで?」

「誰が年寄りだ。」

「いつも家では年寄りって自分で言うクセにー。」

あたしとなっちゃんがグラスとシャンパンを手に言い合ってると。

「イチャつくなよ年寄り…血圧上がるぜ?」

華音があたしの手元のグラスを一つ取って言った。

「華音。覚えてろよ?」

「最近物忘れ激しくて…」


…ああ…

平和だ~…

一昨年のイベント以降、ほんっと…なっちゃんは入退院を繰り返して。

あたしはー…その間に…

自分の記憶を取り戻したくて。

反対されたけど。

色んな人に、反対されたけど。

すごく、反対されたけど。

なっちゃんの…

『行って来い。そして、戻って来い。』

って言葉に…背中を押されて。

…行った。

あたしが…なっちゃんと出会った街。

そして…

あたしが、記憶を失くした街。

あの頃…あそこで何があったのか。


全てを思い出した時…

あたし、本当に自分が嫌になった。

消えてしまいたくなった。

だけど…闘ってるなっちゃんを想うと…そんな事出来ない。

それに、行って来いって言ったなっちゃんは…

あたしを信じてくれてた。

…うん。

だから、どんなに辛くても…

あたしは、帰るしかないんだ…って。

なっちゃんの所へ、帰るしかないんだ…って。


全てを思い出したあたしには、自分がなっちゃんに相応しい人間だなんて思えなくて。

本当は…何度も帰国をずらしてしまって…

向こうで、自分と闘ってた。

…って言うか…

見ないフリ…してたのかな…

あたしにも怖い物はある。

まさかそれが…

自分の過去だなんて。

…悔しいよ。

でも、あたしは戻って来た。

なっちゃんの所へ。

あたしの罪は消えない。

消えないけど…

それを抱えたままのあたしでもいいんだ…って。

なっちゃんが言ってくれたから…


あたしとなっちゃんをあの街で再会させてくれた廉君と晋ちゃん。

彼らのためにも…あたしは幸せにならなくちゃって。

強くそう思った。

そしてそれは…今、手に入ってる。

不安が全くないわけじゃないけど…

あと何年…なっちゃんと一緒にいられるか分からないけど…

だからこそ、毎日を、この瞬間を、あたしは大事にしたいって思ってる。

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