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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/05 20:41:32

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「……」

俺はその光景を、軽く…10分以上は眺めていた。

その光景。

知花と…里中が、アンプをバラして何やらディスカッションをしている光景だ。


陸が『オタク部屋』と名付けたその部署は、事務所の三階の一角にあって。

今や社員全員からそう呼ばれるようになっている。

そこには自分でアンプやエフェクターを改良したい、オタクなアーティストも顔を出したりしているが…

そんなオタク達にも崇められているのが…知花と里中だ。


「どこにいるのかと思ったら…ここか。」

通路の椅子に座って前のめりになっていると、背中を叩かれた。

顔を上げると…高原さん。


二時間前、義母さんに言われて最上階に行った。

そしてそこで…高原さんに言われた。

「Live aliveからもうすぐ二年。いい加減俺も隠居したい。」

…確かに…

あの大イベントから、高原さんは入退院を繰り返した。

去年は周年イベントも自粛。

高原さんは、かなり心外だったようだが…

会長不在でイベントなんかできるかっつーの。

仕事量も、先月からは事務所に出る事も減らしてる高原さん。

…隠居したい気持ちは…分からなくもない。

だが…


「…俺には荷の重い話っすよ…」

組んだ指をもてあそびながらそう言うと。

「俺にやって来れたんだ。おまえに出来ないわけがない。」

高原さんは、俺の隣に腰を下ろした。

「高原さんと俺じゃ、器が違い過ぎます。」

「俺は、おまえの方がずっと出来る奴だと思ってるぜ?」

「…何言ってるんすか…」

小さく溜息をついて、視線を足元に落とした。

「…俺は…高原さんみたいに周りに気を配れないし…」

「配れないし?」

「……まだまだガキなんすよ。」

口に出したい気持ちを、グッと飲み込んだ。

俺の気持ちを言ってしまうと…高原さんはまだまだ頑張ってしまうかもしれない。

無理をさせてしまうのは…嫌だ。

…なのに、引き継ぐ覚悟が出来ない。


「なんだ。知花と里中を見てたのか?」

それまでの俺の視線を追ったのか、高原さんはオタク部屋を見て言った。

オタク部屋は腰高の位置からガラス張りで、作業の大半が通路から見学できる。


「…里中は見てません。知花を見てました。」

「ははっ。おまえは本当…知花に惚れてるんだな。」

「高原さんだって、ずっと変わらない気持ちを持ち続けて来た一人じゃないですか。」

「…まあ、そうだが。」

高原さんは何か笑いたいのか…

口元に手を当てたまま、しばらく黙った。

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