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あなたが大人になったら

持病を抱え、恋愛はしないと決めた。 あなたが大人になる、その時まで。

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2017/10/05 13:21:30

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「ただいまぁ…。」



こじんまりとしたアパート。
そんなに大きくない玄関には、一足の靴が斜めに並んでいた。
それすら愛おしくて、私はきちんと並べ直す。
横に、自分の靴を揃える。

二足並んだ玄関を見て、単純だが幸せを噛みしめる。




「おかえり。遅かったね、疲れていない?」




蒼太が出迎えてくれた。
蒼太の笑顔を見て、ホッと心が緩む。
リビングに入ると、部屋中にいい匂いが広がっていた。


「……これ。」


キッチンからはご飯の炊ける匂い。
食欲をそそる、ハンバーグの香りに驚いた。


「今日は早く仕事が終わったからさ。
夜ご飯を作って待っていたんだ。

モカさんほど美味しいものは作れないと思うけど。」




中学生の頃から、料理を作ることの多かった蒼太の得意料理だった。
私は一気にテンションが上がる。



「わぁ!

嬉しい!ありがとう。お腹空いてきちゃった~。
手を洗ってくるから、待ってて!」



鞄を鏡台に置き、洗面所へと向かう。
蒼太はキッチンでご飯をよそっている。
いつも通りの蒼太を見て、私は胸が苦しくなった。



「………ねぇ。」



洗面所から蒼太を呼んだ。
蒼太は手を休めることなく、私の呼びかけに答える。




「ん~?どうした?」


キッチンでは、蒼太が温め直したスープをカップに注いていた。
手を洗い終わったのに、リビングに行くのをためらいながら口を開く。




「………あのね。


妊娠してた………。」




今まで背中を向けていた蒼太が、アツアツのカップを下ろした。
恐る恐る語る私に向かって、蒼太は駆け寄る。




「………本当に?



おめでとう………!………ありがとう!」





力強く抱きしめる蒼太の腕の中で、私は幸せを実感する。
そうだ、こんなに嬉しいことなんだ。

喜んでいいんだ。



半泣きのまま、私は言う。




「『おめでとう』って…、蒼太くんにも言えることだよ(笑)」




2人でクスクスと笑った。
蒼太は私の頭を愛おしそうに撫でる。



「うん、そうだね(笑)

だったら、モカさんも言ってよ。」





優しく微笑む蒼太の目を見て、私も自然と笑顔になる。
蒼太の頬を撫でながら、私も口を開く。




「蒼太くん、おめでとう。

蒼太くんも『お父さん』になるんだね。」




その言葉に、蒼太は照れるように笑って、私を軽々と持ち上げる。クルクルと回って、優しくソファに座らせた。

蒼太はぎこちないほど、丁寧に私のお腹に手を当てる。
胸がいっぱいになって、大きく息を吸い込んだ。


でも、私は言わなければならないことがある。
『幸せ』の余韻に浸ってはいけないのだ。





ただ、幸せだけを感じていたかったのに。

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