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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/05 12:05:44

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「おかえりなさい。」

「……ただいま。」

今日の午後の出来事で、少し落ち込んでいるかと思った咲華は…

「ねえ、海さん。リズったらね?リンゴ、こんなに食べちゃったのよ?」

…いつも通り、元気だった。

無理してるのか?とも思ったが…

「来月、華月が撮影でこっちに来るんだって。」

いつもと変わらない…と思う。

…いや、いつもより元気な気がする。

わざとか?


三人で晩飯を食って、リズを風呂に入れて。

「あのね…」

咲華がそう切り出したのは、後は寝るだけ…って時になってからだった。

「ん?」

「今日…」

「うん。」

志麻の事は俺に言わないかと思ったが…

咲華は俺の胸に顔を埋めると。

「今日…」

「うん。」

「あの…」

何度も、そう繰り返した。

「…言いにくい事なら、言わなくていいぞ?」

俺も話を聞いただけに、少しバツは悪い。

咲華が言いたくなければ、それでいいと思う。


だいたい志麻は…なぜ俺に話を聞かせたのか。

本部に戻ってもしばらくは、複雑な思いが消え去らなかった。

だが、思った。

志麻は…俺に忠誠を誓ったのかもしれない、と。

実際、俺が咲華と結婚した事で、志麻が俺の受け持つ現場に来る事が前よりぐんと減った。

俺がそうしているわけでも、志麻がそれを望んでいるわけでなくても…

恐らく、親父か…浩也さんが…何らかの考えでそうしていたのだと思う。

…数回一緒になっても、言葉は交わさなかった。

本来なら俺から、志麻と同じ現場にと親父に願い出て良かったのかもしれないが。

この数ヶ月の志麻の働きぶりを見て、俺からは言うべきではないと感じた。

…ここに来るまでに、志麻の中に…どういった葛藤があったのかなど、俺には分かるはずもない。

恨まれても憎まれても、殺したいと思われても当然と思っていた。

そんな俺に…志麻は…


「…咲華、実は…」

今日、話を聞いていた事を話そうと思うと。

「あたしが先。」

咲華は…唇を尖らせた。

「…無理してないか?」

「え?」

「言いにくそうだ。」

「……」

咲華はベッドから身体を起こして。

「…海さん。」

俺を見下ろした。

「…どうした?」

俺は仰向けのまま、咲華の髪の毛を耳にかけたり撫でたりして…次の言葉を待った。

「あたし…」

「うん。」

「今日、病院に行ったの。」

「…病院?」

思いがけない言葉が飛び出して、咲華の髪の毛を撫でていた手が止まる。

「…妊娠…」

「…妊娠…?」

「…リズ、お姉ちゃんになる…」

「……」

頭の中が真っ白になって、無言のまま瞬きを何度もした。

「……何か…言ってよ…」

咲華が唇を尖らせて初めて、俺は『妊娠』という言葉が何の事かを認識した気がした。

バッと身体を起こして咲華を抱きしめる。

「あっ…び…びっくりした…」

「…咲華…」

「……」

「咲華……」

上手く言葉に出来ない。

この、戸惑い以上の…大きな喜び。

「海さん…」

感激して涙が出てしまった。

「…ありがとう…」

そうつぶやくと。

「どうして…?あたしの方が…ありがとうだよ…」

咲華は俺につられたのか…目を真っ赤にして笑いながら、俺の涙を拭ってくれた。

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