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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/05 08:45:39

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「私には、本当に…朝子という妹がいました。」

それから…しーくんは。

その妹さんが、ある日突然いなくなった事。

ご両親がとても悲しそうな顔をされていた事。

リビングから、女の子のいる家の気配がなくなった事。

とにかく…何かが変わった事。

それらを…ゆっくりと話した。


「ある日突然、母から『朝子が帰って来た』と言って…一人の女の子を紹介されました。」

「……」

「それが…今の朝子です。」

やっぱり…朝子ちゃんは…

「あなたはお兄ちゃんなんだから、朝子を守るのが任務よ。と母に言われました。それが私に与えられた…最初のミッションでした。」

「……」

朝子ちゃんは…

ある事件に関わっていた人の娘で…

しーくんのお父様が…朝子ちゃんの本当の親を射殺したそうだ。

かなり厳重にブロックされて、閲覧できなかったその事件を調べるために…しーくんは渡米したと言った。


「なぜ、朝子と私に血の繋がりがないと…?」

「…気付いたか?」

「はい。」

「……」

窓から入る風が、しーくんの前髪を揺らす。

あたしは少しうつむき加減に…

「…アルバムを…見せてもらったでしょう?」

つぶやいた。

「…写真で気付いたのですか?」

「ええ。赤ちゃんだった朝子ちゃんと…その次に写ってた朝子ちゃんは、違ってた。」

「……」

「似てたけど…違ってた。」

あたしの言葉にしーくんは小さく溜息をついて一度目を閉じると。

「…さすがですね。」

意外な言葉を出した。

「え?」

「……いえ、何でもありません。」

しーくんはそれから少し黙って。

ゆっくりとお茶を手にして…飲んで。

「…実は、しばらくの間…家の近くまで来て生活の様子を見ていました。」

ゆっくりと…そう言った。

「……」

「あなたが…ボスを見送る姿…愛しそうに娘さんを抱き上げる姿…」

「……」

「私は…それらを見て、意外なほど自分がそれを夢に見ていなかったんだと気付きました。」

「…え?」

しーくんはゆっくりと視線を上げて。

「あなたを二年以上も待たせておきながら…その間、私は今のあなたの日常を思い描きもしていなかったようです。」

あたしの目を見て…小さく笑った。

「ボスから告白された時は、これは私と作るはずだったのでは?と強く疑問に思いましたが…」

「……」

「作るも何も…きっと私は今まで通り二階堂にばかり目を向けて、あなたに辛い想いをさせてしまう所でした。」

それは…

しーくんの優しい嘘だと思った。


束の間の、あのマンションでの時間。

あれは…捜査の一環だったと後で知っても…

あの時の彼は、笑ってた。

あたしと居る時間を、精一杯…幸せに過ごしてくれてた。


あたしの目から、ポロポロと涙がこぼれるのを見て。

しーくんが…立ち上がった。

「……どうか…お幸せに…。」

「……」

「…咲華さん。」

あたしに深く…深く頭を下げた彼の声も…少し涙声だった。


ずっと…流れなかった涙。

だけど今は…それが止まる気がしない程…次々と溢れ出る。


しーくんはベビーベッドのリズをじっと見て…

優しく…そっと頬を触って、玄関から出て行った。


「ふ……っ…」

あたしは…止まらない涙を拭う事もせず。

ひたすら…座ったまま、泣き続けた。


しーくんの事…大好きだった。

優しい笑顔。

何をするにもスマートでカッコ良くて…

物静かな彼が、あたしを見て笑うのが、なぜか分からなくて困ったりもしたけど…

彼が笑うのが…嬉しかった。

優しい手が大好きだった。

首を傾げて不思議そうな顔をするのも…少し強引にあたしを抱き寄せるのも…

全部全部…大好きだった…。


「…しーくん…」

もうそこに居ない彼の名前をつぶやいて。

「…ありがとう…」

あたしは…

涙を拭って、顔を上げた。

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