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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/03 09:32:46

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「やーっぱり。未練ターラタラ。」

降って来た声を見上げると…そこに薫平がいた。

俺が身を隠している、大きな木の太い枝に…猫を抱えて座っている。


「…俺も落ちたもんだな…おまえが居る事に気付かないなんて。」

大きく溜息をつく。


ボスに…咲華と結婚した事を告げられ、すっかり混乱してしまった俺は…

ボスと富樫さんを地下に閉じ込めて、ボスの自宅に向かった。

そこには…咲華と…俺が射殺したテロリストの娘、リズがいて。

…もう、幸せな家庭が…出来上がっていた。


諦めるしかない。

頭の中ではそう思えるのに…

どうしても…

どうしても、認めたくない自分もいて。

…もし、あの時…泉お嬢さんが来なかったら…

俺は、咲華とリズを…


あの場を鎮めるためだけに、俺を好きになった。と告白したお嬢さん。

どう考えても芝居だと分かるのに…

分かるのに…差し出された手を、俺は…掴んでしまった。

恐らく今も薫平か聖氏を想われているはずなのに。

お嬢さんは…嘘じゃない。と、俺に抱かれる。

…お嬢さんは…不器用な人だ。

誰よりも心優しいのに、それが表立って評価されない。

ストレートな物言いが災いしているのだろうが…

それは、俺にとっては心地良くも感じる。

…このまま、嘘でも『愛してる』と言い合っていたら、真実になるのだろうか。

お互い、二階堂のために生きるという志しがあるがゆえに、絆は強い。

本当に…お嬢さんを愛する事が出来れば…どんなに楽だろう。


「毎日来るつもり?」

薫平は二階堂を辞めたからか、以前より顔付きが柔らかく感じられた。

それはいい事だと思うが、特に憧れはない。

薫平は外の世界に夢を持って、俺は二階堂で夢を見続ける。


「…気が済むまでは。」

ボスの自宅に目を向けて答える。

「咲華さんの事想いながら、泉を抱くのはやめてくんないかな。」

スタッ…と、薫平が降りて来て。

至近距離で、低い声で言った。

「…諦めてないのか。」

「諦めるもんか。」

「……」

「泉には…志麻さんより俺のが似合う。」

「…ふっ…自分で言うか。」

「志麻さんだって、本当はそう思ってるクセに。」

「……」

…図星ではある。

だが、お嬢さんが俺と…と言ってくれる間は。

俺から手を離す事はしない。

気の済むまで…お嬢さんに付き合うつもりだ。


「薫平。」

「ん?」

「瞬平が寂しがってる。」

「……」

顔を見ないまま言ったが、薫平がどんな顔をしてるかは分かる。

小さな頃から一緒だった、高津の双子。


「お嬢さんの事、いつから好きだったんだ?」

前庭に、咲華が出て来た。

愛しいその姿を目に焼き付けながら、薫平に問いかける。

「ずーっと昔からだよ。」

薫平の肩にいた猫が、俺の肩に前足をかけた。

「…馴れ馴れしい猫だな。」

「志麻さんの事は見慣れてるからね。」

「どこで。」

「写真。こいつ、頭いいんだ。俺の好きな人の事は、ちゃーんと覚えてくれる。」

「……」


首だけ振り向いて、至近距離にいる猫を見ようとすると、俺の頬に頭を当ててゴロゴロと喉を鳴らされた。

動物を飼った事はない。

嫌いではないが、好きでもない。

「…名前は?」

「おはじき。」

「……」

「背中にある模様が、おはじきみたいなんだ。」

そう言われて、猫を抱えて背中の模様を見る。

確かにそこには、茶色や黒の丸い模様がいくつもあった。


「…志麻さん。」

「ん?」

「もし…泉が俺じゃなくて、どーしても志麻さんがいいって、志麻さんを選んだら…」

「……」

薫平は、前庭の咲華を眺めながら。

「咲華さんの事、ちゃんと忘れて。泉の事だけ、好きになってやって。」

俺の腕から、『おはじき』を取って言った。

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