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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/01 22:07:36

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「疲れただろ。」

キッチンで洗い物を終えて、手を拭きながらリビングに行くと。

リズちゃんをベッドに降ろしながら海さんが言った。

「ううん。楽しかった……寝ちゃった?」

「ああ。はしゃぎ過ぎてたしな。」

「ほんと。いつもより笑ってたし。」

二人してベッドを覗き込む。

リズちゃんはいい夢でも見てるのか、時々くすぐったそうに笑って…

それがあたし達を笑顔にした。


二階堂家の皆さんが帰られて…

沙都ちゃんと曽根君は、渉さんと飲みに行くって出かけた。


「…泉に…酷い事言われなかったか?」

リズちゃんを見たまま、海さんが言った。

「全然。」

「本当に?」

海さんは疑ってるのか、あたしの顔を覗き込んだ。

「うん。泉ちゃん…あの人の事、心配して…気にしてた。」

「……」

「あたしの方が酷いよ。だって…」

「…だって?」

「……」

あたしはリズちゃんのベッドから離れてソファーに座ると。

「…一方的に、もう終わり。って言って…電話切ってそれっきりだから…」

「……」

初めて…海さんに打ち明けた。

「彼に…話を聞いてくれって言われたのに…聞かなかった。」

唇を一文字にして、少し上を見上げる。

そこに何があるってわけじゃないけど…少し思い出したあの日の事…頭の中で整理してみた。

ちゃんとした理由もないまま、入籍を先延ばしにするしーくんに…

あたしはもう…疲れ果てた。

朝子ちゃんを最優先する彼にも…嫌気がさした。

そんな風に思う自分にも…。


「…志麻を庇うわけじゃないが…あいつの仕事は本当に大変でね。」

海さんはそう言って隣に腰を下ろすと、あたしの肩を抱き寄せた。

「だから正直…咲華が志麻を待ち疲れたと言うと…俺達二階堂のせいでもあるって思わずにはいられない。」

「……」

本当は…

そうじゃない事。

…言えない。

「俺も現場に出始めると連絡が取れなくなる事があるけど…極力寂しい想いはさせないから。」

あたしに気を使ってくれたのか、海さんはすごく真剣な顔でそう言ってくれた。

「…ううん。大丈夫。怪我だけは…気を付けてね?」

「ああ…」

「……」

あまりにも海さんが…あたしの顔を見つめるから。

何か読まれてるんじゃないか…って、ドキドキした。

…あたしの醜い部分…

知られたくない。

「…さっき富樫からメールがあった。」

「…なんて?」

「……」

海さんはあたしの頭の上に顎を乗せて。

「…志麻がこっちに来てる。」

低い声でつぶやいた。

「……」

つい無言になったあたしに、海さんは。

「明日、会って話すつもりだ。」

そう言って…あたしの目を見た。

「俺はあいつの上司だから本音は言ってくれないかもしれないが…出来るだけ腹を割って話せる状態にはしたいと思う。」

「……」

本当は…

あたしがあの時、ちゃんと話を聞かなかったから…

話し合って別れなかったから…

彼に、想いを残させたままなんじゃないか…って、思ってる。

でも…あれ以上の堂々巡りは…もう嫌だった。

きっと、会って話をすると…あたしはまた彼の元に戻ったと思う。

だって…

有り得ない程…好きだったもの…


もう、戻ったとしても…上手くいく気はしなかった。

またあたしは朝子ちゃんを優先するであろう彼にモヤモヤして、イラついて。

そんな自分を大嫌いになって…笑えなくなる。

ただ、ひたすら待つだけの女なら良かったけど…

…そこに、嫉妬や疑心暗鬼や自己嫌悪が加わると…耐えられなかった。


「…大丈夫か?」

あまりにもあたしが無言だからか、海さんが心配そうに頬に触れる。

「大丈夫…うん…大丈夫…」

海さんの胸に頬を埋めて。

あたしは…心の中で繰り返す。

大丈夫…

あたしは…海さんの妻…



もう、あの頃の咲華じゃない…。

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