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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/10/01 19:08:51

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「あ。」

「……」

ドイツに来て三週間。

ホテルに戻ると、久しぶりに志麻とバッタリ出くわした。


現場でミスをして以来…志麻はホテル内の一室で資料整理をしてる。

まあ、それだって立派な仕事なんだけど…

現場が立て込んでる最中に、志麻がそこにいなくてホテルで資料整理なんて。

地元の面々も『シマはどうした?』と気にしてるらしい。


「…お帰りなさい。」

「…ただいま。」

大きなダンボールを載せた台車を押してる志麻に並んで、エレベーターの前に立つ。

…声をかけるって言ってもなー…

あたし、変に傷をえぐりそうだし…


エレベーターのドアが開いて、先に乗り込んだ。

志麻はやたらゆっくりと台車を押してエレベーターに乗ると。

「…現場は………でしたか?」

聞き取りにくい、細い声で言った。

「え?」

現場はどうだったかって聞いてるんだよね。

分かってる。

分かってるんだけど…

あまりにも志麻らしくなくて。

あたしはつい…

「あんたにも早く復帰してもらわなきゃ、現場がスムーズに回らないよ。」

嫌味っぽく言ってしまった。

あー…

あたしバカ!!

すると、当然志麻は…

「…すみません…」

そうしたくないんだろうに…

酷く猫背になって、あたしに頭を下げた。

こけた頬。

目の下にはくま。

…何やってんのよ。

ほんと…


八階でエレベーターが止まって、志麻がそこで降りた。

あたしは15階まで上がって、一旦部屋に入ったけど…

「……」

またエレベーターに乗って、八階で降りた。

そして、志麻がこもっているであろう部屋の前に立って…

ドアをノックした。

「志麻、開けて。あたし。」

ドアの前でそう言うと、少ししてドアが開いた。

「入っていい?」

「……」

志麻はあたしを見てるのかどうか分からないような視線。

それでも、ゆっくりとドアを大きく開けてくれた。


部屋の中には、資料があちこちに並べ…いや、これは…散らかしてるだけじゃん…

いつも、きちんとしてる志麻が…

これ、何なの。


「…あのさ。」

ソファーに座って、話しかける。

志麻はしばらくボーッと窓辺に立ってたけど。

何かを思い出したようにスタスタと歩いて、あたしにお茶を入れて持って来た。

「…失礼しました。ボンヤリしてました。」

「…いいけどさ。ありがと。」

あたしがカップを受け取って、一口飲むと。

志麻は小さく首を振りながら。

「本当に…色々すみません。ちゃんとします。」

そう言って、資料をかき集め始めた。

「いや、別にあたしは説教に来たわけじゃないから。」

「……」

「座って。」

「……」

しばらく悩んでた様子の志麻は、少しだけ資料をダンボールに戻して…

あたしの向かい側に座った。


「今日は、もうオフって事にしようよ。」

「……」

「…飲もう。」

あたしは一度部屋に戻って、父さんが来た時に置いて帰ったウイスキーやバーボンを手にして再び志麻の部屋へ。

「さ、飲んで。」

「…いえ、私は…」

「こんな時まで正しくしてなくていいよ。『俺』でいいし、あたしの事も『お嬢さん』じゃなくていいから。敬語もなし。」

「……」

「友達みたいにさ…話そうよ。」

「……」

「あたしも…誰かに聞いてもらいたかったから…」


そうして…あたしと志麻は、二人で飲み始めた。

お互い五杯目を飲み干した頃に…

「あたしだって、夢見てたのよ?一般人との結婚。それをさーあ、余命わずかな父親に『息子か仕事か選べ』なんて言われたらさ、別れるしかないっつーの。」

あたしが愚痴るのを…志麻はずっと黙って聞いた。

志麻も何か喋ってくれたらいいのに。

そう思いながら、あたしはひたすら喋った。

「薫平のおかげで、聖の事忘れられるって思ったのに…あいつも薄情な奴でさ…」

誰にも話せなかった薫平の事も…話した。

それでも志麻は、時々小さく頷くだけで。

前髪をかきあげて、眠そうな顔になりながら…飲み続けた。


だけど…

何がキッカケだったのか…

今となっては思い出せない。

何かが、キッカケで。

志麻が…泣き始めた。

「俺に…そんなつもりはなかったのに…」

「そんなつもり?何の話?」

「愛してるのは…咲華だけだったのに…」

「…浮気を疑われたの?」

「…それも…仕方のない事だったのかもしれない…」

「…あんたに浮気が出来るとは思えないけどね。」

「咲華…」

咲華さんの名前を呼びながら、泣き続ける志麻。

本当なら、こんなにメソメソする男…好きじゃないんだけど。

志麻は…小さな頃から知ってて。

口数が少なくて。

頼り甲斐があって。

二階堂のために、本当に色々…犠牲にして尽くしてくれて…

…やっと出会えた…咲華さん…だったのに…

「…志麻。」

志麻は、二階堂のせいで幸せを逃したと言ってもいい。

そう思うと、やりきれなくなった。

志麻の頭を抱きしめて…

「…ごめん…二階堂のせいで…あんたにこんな想いさせて…」

耳元でそうつぶやく。

「……俺の問題です…」

「志麻…」

「……」

もう…お互い酔っ払ってたのと…

「あ…」

寂しさが…手伝ってしまったのかもしれない。


あたしと志麻は、指を絡めあって…

服を脱がせ合った。


そこには愛はなくて。

ただ、寂しさを埋めたい気持ちと…

慰め合いたい気持ちと…

「…咲華…」

耳元で繰り返される、違う名前。

あたしは泉。

そう思っても、どうでも良かった。

あたしだって…

志麻に抱かれながら。

聖と…

薫平の事を思い出してたから…。

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コメント1

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  1. カオリさん(47歳)ID:6608568・10/01

    えーーーさいてい

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