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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/30 11:41:48

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「こんにちは。」

「まだ準備…あら!!お帰りなさい!!」

準備中の札がかかってた『あずき』のドアを開けると、おかみさんが元気のいい声で出迎えてくれた。

「朝子ちゃん、お兄さんだよ。」

おかみさんが厨房に声をかけてくれて、奥から朝子が出て来た。

「あ、お兄ちゃんたら。部外者なのに入って来て。」

「お土産。」

紙袋を差し出すと。

「わっ、ありがと。」

朝子は笑顔になった。

「お兄さん、座って座って。」

おかみさんがお茶を入れてくれて、俺はカウンター席に座る。

「ささやかですが…お土産です。」

「あら~、いつも悪いわねえ。」

「いえ。妹がお世話になってますから。」

「もう、いいお兄さんだねえ。」

「でしょでしょ?」

「おやおや、甘えっ子だこと。」

朝子の笑顔を見ていると…安心する。

まだ顔に傷は残っているが、それでも…やっと幸せになれた。

…気に入らない男ではあるが、あいつに感謝しなくてはと思う。


「…お兄ちゃん。」

ふいに、朝子が小声で言った。

「ん?」

「三日前に…海君に会ったの。」

「え?」

「…手術、受ける事にした。」

「…そうか。」

それは…待ち焦がれた報告でもあった。

朝子の顔の傷…

それがあってもなくても、俺には関係なく…愛しい妹に違いないが。

朝子自身に、それは必要ないと思っていたからだ。


「それで、急なんだけど…検査もあるし、週末からアメリカに行く事にしたの。」

「…本当に急だな。」

そうは言ったものの、俺は少し笑顔だった。

朝子の傷がなくなる。

それは…朝子が色んな苦悩から解放されるという事でもあった。

週末からアメリカ。

実はこの件はすでに、空お嬢さんのご主人である渉さんから話を聞いていた。

一番近い検査日も教えて下さり、それまでに朝子が決断するかどうか。

もし朝子が決められないなら、何とか説得しようと思い、帰国を二日早めたが…

…良かった。

来週の向こうの現場の応援に行く事にすれば、検査に付き添える。


「あっ、そう言えば…咲華さんに会ったよ?」

「……」

ふと…胸が痛くなった。

「寂しそうだった。早く会いに行ってあげて?」

「…ああ、そうだな。」

「仲のいい兄妹で羨ましいって笑ってくれた。咲華さんって、本当…柔らかい雰囲気の美人だよね。」

「……」

咲華とは…明後日、入籍の約束をしている。

あの時、咲華を待たせすぎている事への罪悪感も手伝って…入籍の気持ちが強く湧いた。

嫌なわけじゃない。

そうじゃない。

だが…なぜか、また…悩み始めている俺がいる。

俺が関わるのは…危険な仕事だ。

実際…咲華のお父さんだって、ダメだとは言わないが…いい顔はしない。

この一ヶ月…ドイツの現場で動いて、もっと二階堂のために…と何度思ったか分からない。

入籍したとしても、結局は俺が現場に出てしまうと咲華は一人になる。

この、今の状態となんら変わらない。


俺が選ぶべきなのは…


どの道なんだ…。

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