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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/30 07:31:55

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「ありがと…華音。」

助手席に乗ってそう言うと。

「あのままだと親父までついて行く勢いだったからな。」

華音は鼻で笑ってエンジンをかけた。

さすが…よく分かってる。


「どこで待ち合わせだ?」

「カナール…って分かる?」

「何が美味い店だ?」

「もうっ。」


父さんは見かけによらず…って言ったら失礼だけど。

見かけによらず、安全運転。

だけど華音は…運転は上手いけど…

「スピード出し過ぎじゃない?」

「法定速度だぜ?」

「嘘ばっかり。」

「おまえが早く行きたいだろーなーって思って。」

「もうっ。」


信号の色さえ、新鮮に思えた。

こんな時間に待ち合わせるなんて、いつぶりだろう。

「上手くいってんのか?」

「相変わらず。」

「ふーん。」

華音はそれ以上何かを聞くわけでもなく。

他愛のない話をしてカナールの近くで車を停めてくれた。

「ちゃんと送ってもらえよ?」

「うん。」

「じゃあな。」

「シュークリーム、あたしのも忘れないでね。」

「…ったく。分かってるよ。」

「ありがと。」

本当は、片想いの相手の紅美ちゃんとどうなってるのか聞きたい気もしたんだけど。

話しが長くなるのも困るなと思ってやめた。


「……」

せっかく華音に連れて来てもらったのに…

あたしの足は、お店の近くで止まってしまった。


しーくん…どうして急に会いたいなんて言ったんだろ…

もしかして…

わざわざ今夜中に会ってまで話したい事があるんじゃ?

それは…

結婚か…別れ話…

どっちとも思えるよね…


もしかして、あたし…知らない間に重い女になってるのかな…

しーくんが仕事に打ち込めるように…って、なるべく邪魔しないようにしてたけど…

…どんな顔して会えばいいの…?


「…咲華。」

名前を呼ばれてハッと顔を上げると、しーくんが立ってた。

「ど…」

「そこのミラーに映ってるのが見えた。」

言われて見上げると…カナールの中から見える位置に、カーブミラー。

…いつ気付いたんだろ。

しばらく立ってたの…バレちゃったかな…


「…今日は本当…悪かった…」

しーくんは静かな声でそう言うと、あたしの手を取って。

「少し歩こうか。」

歩き始めた。


「……」

「……」

歩き始めて…数分。

ずっと沈黙が続いた。

あたしは言葉を見付ける事が出来なくて…

少しうつむき加減のまま、ごちゃごちゃと余計な事を考えながら歩いた。

「…何考えてる?」

ふいに顔を覗き込まれて。

「…え…っ?」

しーくんと…目が合った。

「難しい顔してる。」

「……」

何を考えてるのかって聞かれても…

何も答えられない。

だってそれは、言葉に出来ないような事ばかり。

心の中に鬱積してるモヤモヤした物。

とりあえず…

最悪なケースの方を…切り出してみよう。


「…急に会いたいって…どうして?」

「え?」

「もしかして…別れ話なのかな…って…」

勇気を出して問いかけると。

「まさか。」

しーくんは、前髪をかきあげながら笑った。

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