paradox

好きな人はサイコパス ☆フィクションです☆完結しました!

  • 記事数 788
  • 読者 772
  • 昨日のアクセス数 856

番外編・ユウキ×その後

しおりをはさむ

テーマ:小説 > 男女関係

2017/09/27 16:45:12

  • 120
  • 0

『おにいちゃん、絵本よんで』


鼻水を垂らした未就学児が絵本を持って寄ってきた。


『ん。』

絵本を受けとると、そうするのが普通みたいに
俺の膝の上に乗ってくる。



『またこの絵本かよ。』

『いいのーぼくこれ好き。』



お世辞にも綺麗とは言えない診療所の待ち合いで
内容を暗記するくらい絵本を読む毎日。



アキラのお気に入りの絵本は、『そらいろの種』ってやつで、男の子とキツネの子供が飛行機のオモチャとなんかの種を交換するところから始まる。


男の子はキツネからもらった種を大事に育てると
なんと、そこから家が生えてくるという………!


『ぼくもこのおうちに住みたい!』

『あっそ』


家はどんどんでかくなり、森の動物たちがどんどん住み着いていく。

マンションくらいのデカさになった頃
唐突にキツネが現れ、飛行機のオモチャを返すから
家を返せと要求してくる。
しかも、キツネは住み着いた動物達を追い出す。


『いじわるだね!』


アキラは何回もこの本を読んでるから結末は知ってる。


『キツネだけが残った家はどんどん大きくなり、太陽にぶつかって壊れてしまいました。
家があった場所にはそらいろの種と書かれた立て札と
目を回したキツネがたおれていましたとさ。(棒)
おわり。』


『…………かわいそう……』

アキラはしゅん、と肩を落とした。

『いじわるだとか言ってたくせに。』








『ユウキ君。ありがとう。助かった!』

『いえ。』


診察を終えたアキラの母親が大きなお腹を擦りながら待ち合いに戻って来た。


『お母さん!赤ちゃん元気?』

『うん!動き回ってたよ~。』



絵本を本棚に戻し、今度は会計にまわる。


『………じゃ、次は2週間後ですね。お大事に。』

『ありがとう』

『ユウキ兄ちゃん、バイバイ』


親子が帰って行くと、この診療所の院長が診察室から出てきた。



『楊もそろそろ戻ってくるから、そしたら飯に行こう』

『はい。』




まだ、少し腕がひきつる感覚はあるけど

俺はこの医者と楊に助けられた。



……………………………………………………………………………………


あの日

炎の中で、俺はようやく死ねると思ってた。




『………………おい、逃げるぞ。立て。』


『……ヨウ?なんで』



あの店は元々違法風俗店だったハコで
もし警察が来ても外に出られる扉が幾つか隠されていた。


あの控え室にもその扉があり
楊は金庫から金を持って外に出たはずなのに
何故か再び戻って来ていた。


立ち上がろうとしない俺に苛立ち
舌打ちをしながら俺の腕を肩に通して抱えあげた。



『俺の事なんてほっとけよ。』

『もうお前の指図は受けない。』



煙の中を俺を引きずりながら進み、裏口から出ると
そこには古い軽自動車が停まってた。

中から白衣のオヤジが出て来て、楊と一緒に
俺を自動車につっこむと猛スピードで車を飛ばした。


連れてこられたのはこの小汚い診療所で
撃たれた腕の治療を施された。



『治りそうか?』

楊が医者に聞いた。

『まぁ、弾が貫通してるのがラッキーだね。
神経も無事だし。』



だいぶ煙も吸ってたし
猛烈な眠気に襲われて、そこから3日間眠り続けた。




……………………………………………………………………………………………


『お、楊。お帰り。
飯行くぞ』


買い出しに出掛けてた楊は荷物を待ち合いの椅子に置くと、無言で頷いた。



俺はラーメン


院長と楊は定食を注文した。




『院長、俺月末に国に戻ります。』

楊が突然切り出した。

『ツテは出来たのか?』

『周さんがなんとかしてくれると。』


周さんってのも院長の患者。
通称偽造屋。パスポートだの、免許証だのを作る。



院長の患者は、普通の病院では診せられない患者や
金を持ってない患者、保険証が無い訳あり患者が大半。


何となく生かされてしまった俺は、払えない治療費診療所のバイトで返済している。



『お前も行くか?』


二人の会話を聞き流しながらラーメンをすすっていると
急に楊が聞いてきた。


『なんで』

『いつまで死んだ目してんだ。お前。』



死んだ目………か。


『死なせてくれなかったのはお前だろ。
俺はあのとき死にたかった。
先生に必要とされないなら………俺は………』



『お前は病気だ。』

『………は?』

『依存症。』



依存症?

薬に依存してる奴なら腐るほど見てきたけど………



『俺はボスに捨てられて、ようやく自由になれた。
これからは俺の人生、俺だけのものだ。』


『自由……?』


『お前も人に依存するのはやめればいい。』


楊は水を飲み干すと、席を立った。




『………楊の国は、楽しい所なのか?』



『いや、貧しい国だ。人も、金も。
持ってる奴は持ってない奴から死ぬまで奪い取る
腐った所だ。』



『なんでわざわざそんなとこに。』




楊は俺を鼻で笑った。

『楽しそうだからだ。
俺はもう、奪われる側じゃないからな。』


楊の答えは、シンプルだった。


『あそこに行けば、信用出来るのは自分だけ。
ぼんやりしてたら殺される。
誰かに依存してる暇なんて無い。』



それが、楽しいのか、幸せなのかわからない。
けど……



『院長。』

『ん?』

『俺も楊と行きます。お世話になりました。』


『…………わかった。』



初めて自分で選んだ。

この先、後悔しか待ってなくても
これが俺の人生だ。






さようなら、菅原先生。

同じテーマの記事

コメント0

しおりをはさむ

  1. 1

    MyhoneyCin...

    10時間前

    ひみつの恋。

    まきちむ

    記事数 18327 / 読者数 4120

  2. 2

    YOU.

    11時間前

    優奈

    記事数 471 / 読者数 859

  1. 3

  2. 4

    When love ...

    17時間前

    リノ

    記事数 716 / 読者数 1487

関連するブログ記事

  1. 鬱状態から抜けて、私は社長が見つけてくれた、かなり大きな...

  2. とんでもないヤツがずっと居続けている。モラハラでセクハラ...

  1. 入院2

    2016/01/12

    初日で…早くも…心が折れそうになった私…カイ君から、メー...

  2. 不育

    2016/05/18

    診察室に入るといつもは看護師さんしかいないのに、その日は先生...

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

12/18 編集部Pick up!!

  1. 子持ちが羨ましくて退職を決意
  2. 育休復帰時既に妊娠3か月の同僚
  3. 妻を家政婦扱いする夫に呆れた

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3