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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/29 18:40:27

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親父の提案で咲華が席を外して、しばらくは沈黙が続いた。

…みんなの言い分は分かる。

分かるが…

俺には咲華が必要だ。


「…酔っ払って結婚した経緯を聞こうか。」

そう言ったのは…祖父だった。

現役を退いてからは心を病み、身体も壊してこの施設に入っていた祖父。

それが…昨年、さくらさんがここを訪れて以来、精神面が快復した。


夕夏にメロメロで話など聞いてないと思ったが…

…さすがだ。


「…二階堂の仕事に誇りを持っている。」

俺は…静かに話し始める。

「だけど…俺は一般人を死なせてしまった。その事実がずっと頭の隅から離れなくて。」

あの日の俺の指示は間違っていたんじゃないのか…と。

もっと出来る事があったはずではないのか…と。

「今更何を思っても変えられない事実を、俺は…受け止めたかのように思えたが、受け入れる事は出来ずにいた。」

「海…」

母さんが、切なそうに目を閉じた。

「…みんなの前では弱音は吐けない。常に…神経を張り詰めさせていた。そんな時、立ち寄ったバーで咲華に会った。」

ボンヤリと甦る記憶の中で。

咲華は…笑って乾杯をして。

最後には…泣いていたような気がする。

なぜ泣いていたのか。

その記憶は戻るかどうか分からない。

ただ…

志麻との別れで泣いていたのは…確かだと思う。


「…朝起きると一緒にいた。俺の中では異常事態だった。何しろ…記憶のない間に結婚指輪まではめてたからな。」

苦笑いしながら、指輪に触れる。

…あの朝は、本当…

頭の中が真っ白になった。

あの瞬間は途方に暮れたが…

今は、ただ笑える。


「どうするのが最善かと悩んだが…同居生活を始めて…とてつもなく癒されている自分に気が付いた。」

それは…部屋に飾られた花に。

気持ちのいいほどの食べっぷりに。

コロコロと転がるような笑い声に。

リズをあやす…優しい手に。

気が付いたら…咲華から目が離せなかった。

…愛しいと思った。


「彼女は…志麻の婚約者だった。部下の元婚約者と酔った弾みで結婚するなんて…有り得ないと思う。だが…」

「…志麻、彼女の事ほったらかしてたものね…幸せにしたくなった?」

空がそう言ったが。

「違う。俺が…幸せになりたいって思ったんだ。」

俺は、みんなを見渡してキッパリと言った。

「幸せになりたい。そう思った時、咲華にはずっとそばにいて欲しいと思ったんだ。」

それまでずっと黙って話を聞いていてくれた親父が、組んでいた腕をゆっくりと外して。

「向こうのご両親には?」

低い声で言った。

「まだ。」

「なぜ。」

「お互いの気持ちの確認のためと言うのもあった。俺は俺で…幸せになりたい反面、事実に背をそむけていいのか、幸せになる資格があるのか葛藤してたし…彼女自身も志麻との別れからそう時間が経ってないから。」

「…それで、これからどうするつもりだ?」

「来週には帰国して、うちにも桐生院家にも報告するつもりだった。」

俺の言葉に、親父は小さく溜息をついて。

「簡単には祝福されないかもしれないぞ?」

首を傾げた。

「それは覚悟してる。でも、俺の全てを懸けて咲華を幸せにしたいし…俺もそこで一緒に悩んだり笑ったりしたいんだ。」

部屋の中、誰も何も言わなくなった。

空と泉は眉間にしわを寄せてるし、親父も腕組みをし直して無言。

母さんはそんな親父の腕に寄り添ったが、笑顔ではない。

祖父母は夕夏を見つめたまま…何も言わない。

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