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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/28 09:29:56

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「でさーあ、志麻がキレッキレで仕事するから、あたしらまでとばっちりなわけよ。」

あたしは野菜スティックを食べながら、ボヤいた。

「でも志麻さんのする事なら間違いないだろ?」

「まあ、そうなんだけどさ。あんな事までやるから、自分で仕事増やしてプライベート減らしてるわけじゃん。」

「ふむ…確かに。」

「彼女と会う時間、ちゃんと取ってんのかなって心配になるんだよね。」

「……」

ドイツから帰って、また少し暇で。

あたしはこうして…薫平の家に遊びに来ては、ボヤいたり、おはじきに遊んでもらったり…

「それ、何作ってんの?」

薫平の手先の器用さを、目の当たりにしたりしている。

「これ?ここ見てて。」

「うん…」

薫平の手元には、マットな紺色のビーズと…パールかな。

あたし、ビーズってもろにガラスってイメージだったから、こういうマットカラーなのは初めて見た。

薫平は釣り糸にビーズを入れては糸を絡ませて…

あっと言う間に、どこから見ても花に見える、ちっちゃな球体を作った。

「わー!!すごい!!」

「フラワーボールって言うんだ。」

「えーっ、可愛い。これ、何になるの?」

「もう少し大きいサイズなら、ストラップとか。これは今から数作って、ネックレスにする。」

「へええええ…薫平が乙女の夢を叶えてる…」

「ははっ。何だよそれ。」


薫平は…心地いい。

あたしにタメ口で話してくれる存在って…本当、いるようでいないから…

聖と別れた今、あたしを特別扱いしないで接してくれるのって、薫平ぐらいだ。


「この前、志麻さんの彼女見た。」

三個目のフラワーボールとやらを作りながら、薫平が言った。

「え?咲華さん知ってんの?」

「知ってるよ。瞬平がプログラマーで潜入してた会社にいた人だろ?」

「あー…懐かしい事件。」

「一人でR1Z5WW8のベンチに座って、景色眺めてた。」

「R1Z5WW8?何であんな所?別に家の近くじゃないよね。」

「志麻さんとの思い出の場所みたいだよ。しばらく一人でボンヤリ座ってたけど、それから歩いて一人で定食屋に入ってった。」

「ぷっ。咲華さん、一人で定食屋ってイメージじゃないけど。」

「確かに…。」

薫平は、次々とフラワーボールを作っていく。

おはじきは、猫ならばその可愛い肉球でちょちょいと突きたいであろうフラワーボールを、おとなしく眺めてるだけだった。

むしろ、あたしの方が突きたいぐらいだ。

なんて行儀のいいニャンコなんだ!!

おはじき!!


「あの二人…別れるんじゃないかな。」

突然、薫平が嫌な事を言った。

「何それ。なんでよ。」

眉間にしわを寄せて薫平を見る。

だけど薫平はあたしの目を見ずに。

「だって、志麻さんほったらかし過ぎだろ。咲華さんみたいな彼女、俺ならほっとかないよ。悪い虫つきそうだし。」

結構な数出来上がったフラワーボールをまとめた。

「まあ…そりゃそうだけどさ…」

咲華さんは、なんて言うか…

本当に、柔らかい笑顔の可愛らしい人で。

そうかと思うと、薫平が言ったように定食屋に行くようなギャップの持ち主。

以前、カナールでお喋りした時も…

「あたし、すごく大食らいなの。」

って首をすくめてたけど…

あたしがケーキと紅茶だけだったのに対し、咲華さんはそれプラス食べ放題の料金を払ってケーキをいくつか食べた。


「俺が思うに…志麻さん、そこまで咲華さんの事好きじゃない気がする。」

「…あんた、何だかズキズキするような事言うね。」

「だって、二階堂の本気レベルって、この人のためなら死ねる。って言う一般人の想いの後に『マジで』がつくじゃん?」

「……」

薫平の言う事は…分からなくもない。

確かに、二階堂の…特に…男。

『この女のためなら死ねる。マジで。』

それだけの気持ちがなきゃ、結婚しない。

だって…

本当に、いつ死ぬか分からないような現場に出てるわけだし。

おかげで、二階堂の既婚者の男達が、不倫をしただの浮ついた事をしてるだの…

そんな噂は一度たりとも聞いた事はない。

…まあ、もしかしたら上手にやってるだけかもしれないけどさ。

それが決められた結婚であっても……って…

…兄貴は失敗したけど。


「あー…嫌だな…あの二人が別れちゃうと…」

寝転んでバンザイのポーズをする。

すると、おはじきが、あたしの手の平をぺろぺろと舐めた。

「なんで泉が嫌なんだよ。」

「……何となく。」

「泉の元彼の身内だろ?どっちかっつーと、別れてくれた方が楽じゃねー?」

「…うるさい。それとは関係ない。」

…そう。

関係ない。

あたし達はあたし達。

志麻と咲華さんには…幸せになってもらいたい。

二階堂の者でも一般人と結婚出来るんだって…証明して欲しい。

今、そうしてるのは…陸兄と姉ちゃんだけ。

本家の人間だけがそうだって思われたくない。


「ねえ、薫平は結婚願望ないの?」

仰向けになったまま、上目使いで薫平に問いかけ…

チュッ。

「……」

突然…薫平が…あたしにキスした。

あたしはバンザイのポーズのまま…固まって動けなかった。

「そんなに無防備になってると、こんな事だってあるんだぞ?」

「……」

「さ、出来た。」

薫平は出来上がったらしいネックレスを掲げてあたしに見せて。

「やるよ。」

あたしのお腹の上に、ポンと置いた。

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