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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/26 10:52:53

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「それでは、どうも。」

「ありがとうございました…。」

業者さん達は、二階の海さんの部屋に並べてたマットレスを廊下に出して。

さらには、元々あったベッドをあたしの借りた部屋に移して。

大きなベッドを…海さんの部屋に入れて帰って行った。

「……」

大きなベッドを前に、あたしはリズちゃんを抱っこしたまま立ちすくんでた。

…これって…

これから毎晩、三人で寝る…って事?

昨夜はたまたまリズちゃんが愚図ったから…ってわけじゃないの?

「あー。」

リズちゃんをベッドの上に降ろすと、笑顔になった。

「…いい感じ?」

あたしの問いかけに、大きく傾いて笑顔になるリズちゃん。

「ふふっ。ママも寝転んでみちゃお。」

リズちゃんの隣に座って、二人で横になってみる。

…うん。

なんて言うか…硬すぎず柔らかすぎず…いい感じ。


…海さんとは…存在は知ってても、面と向かって会った事は…ないはず。

あたしの叔母である麗姉の旦那さんの、甥。

それが海さん。


小さな頃、二階堂本家に何度か遊びに行った。

だけどそれは…本家の人達に会いに行ったわけじゃなくて。

麗姉の旦那さんである陸兄にくっついて、武道場に行ったって感じ。

でもあたしは武道に興味がなくて、庭を徘徊してて…迷子になって…

しーくんに会った。


「…誰?」

あの時しーくんは、池の鯉を眺めてるあたしに…そう声をかけて来た。

「…桐生院咲華です。」

立ち上がって、そう挨拶したあたしに。

「…東志麻です…」

彼も…そう言って、軽く頭を下げた。

あたしが8歳。

しーくんが7歳の時だった。


並んで池の鯉を眺めた。

無言だけど、苦痛じゃなくて…

「僕、あの鯉の模様が好きで、一日中でも見てしまうんだ。」

「大きくなったら、鯉になりたいって思った事ある?」

「えー…さすがにそれはないよ…だって、鯉は魚だよ?」

「でも、いいなあって思ったら、なりたいって思わない?あたしは小さい時、二階になりたいってずっと言ってたって。」

「二階…」

普通なら、笑われて仕方ない事なのに。

しーくんはクスリとも笑わず。

だけどポカンとしたまま、また鯉を眺めた。

「どこから来たの?」

あたしが問いかけると。

「僕は、ここの中の子供だから。」

ここの中の子供という言葉を、不思議な感じで聞いた。

だけど自分がすごく部外者にも感じられて…

「あたしは、陸兄が柔道に来たから、ついて来たの。でも、ちょっと迷子になっちゃって…」

慌てて、立ち上がってそう言った。

「陸兄…って…二階堂陸さん?」

しーくんは座ったままあたしを見上げた。

「うん。」

「親戚?」

「うん。」

「そっか…武道場は、こっちだよ。」

しーくんはゆっくり立ち上がると、あたしの手を引いて歩き始めた。

初めて会ったのに、手を引かれた事に驚いたけど…

一つ年下で、あたしよりちっちゃくて。

なのに何となくテンポが似てる気がして…安心出来た。

あたしは彼を『しーくん』と呼ぶことにした。

同じクラスにいる島田君を、みんなが『しまくん』って呼ぶからだ。

そして彼は、あたしのことを『サクちゃん』と呼ぶことになった。

同じ敷地内に、『さっちゃん』と呼ばれるおばさんがいるとの事で…そうなったらしい。


「ここだよ。」

「ありがとう…しーくん、いつもここの中にいるの?」

「うん。」

「そっか。じゃあ、また会えるね。」

「サクちゃん、また来る?」

「うん。来るよ。」


そう言って別れて…

次回も会える。なんて思ってたけど、結局あたしが彼に会ったのは、三回ほど。

いつも黙って池を眺めて…お互い特に会話をした覚えもない。

それから…あたしが11歳になってからはパッタリと会わなくなって。

最後に会ったのは、あたしが高等部を卒業した年。

麗姉の家に母さんと華月と遊びに行ってて、陸兄から『財布忘れた』って連絡があって。

ジャンケンで負けたあたしが持って行く事になった。

一人で行くのは初めてだったから、大きな門の前でどうしたらいいのか少し悩んでると…

「何か御用ですか?」

後ろから…声をかけられた。

「あ…あの、おつかいに…」

「……」

「…?」

「もしかして、咲華さんですか?」

そう言われるまで、あたしは彼を知らない人だと思い込んでた。

だって…あたしより小さかった背はぐんと伸びてて…

でもそう言われれば、静かな視線とか…笑わない口元…

「あ。」

「お久しぶりです。」

敬語で話された事に…少しショックを受けたけど。

二階堂は特別な家だ…って中等部に入る頃に聞いてたから…


そして…

あの後。

あれから、7年後。

あたし達は再会して…

恋に落ちた。

……はずだった…のに。

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