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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/25 11:39:25

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「そう言えば新曲、バラードの方は俺の好みだわ。サンキュ。」

俺がそう言うと。

「別におまえのために書いたんじゃねーっつーの。」

神は鼻で笑いながらビールを飲んだ。

「俺はどっちかっつーと、ハードな曲の方が好みだな。」

「タモツ、あの曲聴いた時、すぐ膝叩き始めたもんな。」

「おまえだってピアノ弾いてたじゃねーかよ。」

「仕方ないだろ?俺の好みなんだから。」

「だから、おまえのために書いたんじゃねーっつーの。」

今日は、俺のスタジオに神とタモツが遊びに来て。

三人でビールを飲みながら…F'sのミュージックビデオを眺めてる。


「ここ。ここの裏から入るスネア、たまんねー。」

タモツはTOYSが解散して、ドラムを叩いてないとは言ったけど…

たまに会って飲んだりしてる時に音楽が流れると、それに合わせて膝を叩く。

特に…

神が作った曲は。


俺はTOYS解散後、音大に入った。

クラッシックもジャズも経験して…だけどやっぱりロックから離れられないと気付いてからは、音大で知り合ったロック畑の奴らとコピーバンドを組んで地味にライヴをしたりもした。

主とした職業はピアノの先生。

その傍らバンドスタジオも作った。


タモツは…TOYS解散後、会社員になったが…

スーツにネクタイが性に合わない。と、3年で退社。

その後、色んなバイトを経て…

「まさかタモツが八百屋になるとは思わなかったな。」

「同感。」

バイト先で知り合った一つ年下の八百屋の一人娘と付き合って、35の時に結婚。

八百屋の婿になった。


「あーっ、もうみんな酔っ払ってるー。」

集合時間を一時間以上過ぎて、アズがやって来た。

「おせーよ、おまえ。」

神がアズの頭を叩く。

「あたっ。」

相変わらずだなあ…なんて思いながら、笑った。


四人で集まるのは…解散して初めて。

神は毎年ビートランドの周年ライヴの招待状をくれたけど…

俺とタモツは、それに一度も行った事はない。

…憧れに引き寄せられて、また夢を見ちゃいけないって思ったからだ。


タモツとは連絡を取り合ってたけど、アズと神には自分から連絡する事はなかった。

だけど、どこから噂を聞いたのか…

ふらっとアズが来て。

「へー、いいアンプ。一時間入っていい?」

ってスタジオに入ったり。

「近くを通ったから。」

って神が顔を覗かせたり…

一度もライヴに行かない俺とタモツの事…

ずっと、懲りもせず誘い続けてくれた。


今日は…神から『おまえんとこのスタジオに四人で集まろうぜ』って、連絡があって。

最初は悩んだけど、意外とタモツが嬉しそうだったからOKした。


目の前にいるのがF'sのボーカルとギタリストだなんて。

俺は少し不思議な気持ちで二人を眺めた。

こうしてると、TOYSの時と何も変わんないのに。

俺達は確実に歳を取ったし、差も出来た。


「うわっ、懐かしー!!」

そう言ってアズが大声を出したのは…TOYSのミュージックビデオ。

「あー…この曲苦労したよな。」

「俺がまだベース弾いてた時だ。」

「マサシはやっぱ鍵盤だったよねー。」

「神のスパルタに何回泣かされた事か…」

「あ?俺じゃなくて朝霧さんだろ?」

スタジオの床に座り込んで。

本当なら飲食物持ち込み禁止だけど、今夜は特別。


「うわー、ウズウズする。ちょっとやんない?」

そう言ったのはアズだった。

「えっ?」

「むっ…無理無理!!」

「なんでー?マサシはピアノの先生だし、タモツだってさっきからずっと膝叩いてるじゃん。出来るよー。」

俺はタモツと顔を見合わせて。

「そ…そんな、F'sの二人と…なあ…」

「そうだよ…昔一緒にやってたってのも、人に言えないのに…」

苦笑いしながら言った。

すると…

「何だよそれ。汚点とでも思ってんのか?」

神が立ち上がって…マイクをセットし始めた。

「早くセッティングしろ。やるぞ。」

タモツと無言で顔を見合わせたけど。

「安心しろ。ダメ出しなんてしやしねーよ。ただ昔の曲をやってみたいだけだ。」

神が…あまり見た事ないような優しい顔で言ったから…

「やるか…」

俺とタモツも立ち上がった。


神がベースを弾きながら、TOYSの曲を演った。

…27年ぶりだって言うのに…

不思議とみんな出来てた。

『何だかあの頃よりいい感じー?』

アズがマイクに向かってそう言うと。

『タモツ、八百屋で何してんだ?』

神が笑いながら言った。

本当だよ。

あれ以来、ドラム叩いてないって言ったクセに。

終わった時は…みんな妙におかしくなって笑い転げた。


「いつか周年ライヴのサプライズでやろうぜ。」

神がそう言うと。

「あっ、いいねー。大賛成。」

アズも同意した。

俺とタモツは。

「…想像するだけで足がすくむぜ…」

苦笑いするしかなかったが…

そんな夢を見るのも…もしかしたらいいのかもしれないと思った。


ずっと…自分がTOYSにいた事、人に言えなかった。

もう昔の事だし。

どうせ目立ってたのは、神とアズだけだし…って、ちょっと僻みもあったのかな。


「じゃ、またな。」

スタジオの前でみんなを見送って、戸締りをしようとすると。

「マサシ。」

名前を呼ばれて振り返ると…神がいた。

「どうした?忘れ物か?」

振り返ったままの姿勢で問いかける。

「…俺の根っこには、ずっとTOYSがあるんだぜ。」

「……」

「おまえとタモツがいなきゃ、出来なかった事だ。」

「神…」

「おまえがどう思ってるかは知らねーけど、俺にとっては二人とも…アズを入れたら三人とも、今でも大事なダチだよ。」

「……」

感動して泣きそうになった。

神みたいに世界に出た奴が…

「それに…おまえとタモツには、弱ってる時に世話んなったしな。」

「…律儀な奴…」

「ダチのためなら、俺はいつでもTOYSの神千里になるぜ。」

その言葉に…

神とアズは、タモツから話しを聞いたんだと思った。

俺が…仕事で行き詰ってる事。

若者の間ではバンドブームも去って。

スタジオは閑古鳥状態。

ピアノ教室も…そんなに生徒がいるわけじゃない。

自分の不甲斐なさに涙が出た。

だけど神は何でもない事のように。

「おまえらの頑張りが俺のスタミナでもあるんだ。へこたれてもらっちゃ困るんだよ。」

そう言って…笑った。


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TOYSはUP-BEATという昔のバンドをイメージして書きました。
『Tears Of Rainbow』、カッコいい曲ヽ(´∀`)ノ

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コメント3

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  1. リオさん(42歳)ID:6605270・09/25

    こんにちは(*^_^*)
    UP-BEAT知ってますよ♪

  2. スズさん(39歳)ID:6605225・09/25

    こんにちはー
    あっという間に、もうここまでお話しが来たんですね!
    これからも、よろしくお願いします(//∇//)

  3. ヒカリさん(99歳)ID:6605219・09/25

    44thはこれで終わります。

    45thは…えー⁉︎な、あの二人。

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