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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/24 21:50:17

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「わー、カッコいい曲だなあ。」

そのミュージックビデオを観て、俺は小さくつぶやいた。

膝には言葉は話さないけど、尻尾をクルクルと動かして応えてくれている風な猫の『おはじき』が寝てる。

いや、寝てはいないか。

応えてくれてるんだから。


歌ってるのは神千里。

二階堂とは親戚になる桐生院家の婿養子。

神千里には、俺と同じ歳のモデルの娘がいる。

面識はないけど。

おまけに、志麻さんの婚約者も…神千里の娘だ。

ギターは東圭司で、ベースはその息子の東映。

東映と言えば…

…朝子の結婚相手。


今や二階堂を抜けて、高津の家とも疎遠となった俺だけど。

何となく…情報は入る。

たぶん俺の情報も、瞬平はどうか分からないけど…両親は知ってるんだろうなあ。


「おはじき、この男が朝子の旦那だってさ。」

テレビ画面を指差して言ってみるも、おはじきは目も開けてくれなかった。

まあ、興味ないよな。


二階堂にいる頃は、テレビは世界情勢や…ニュースを得るためだけの物だった。

こうやって、のんびりと紅茶を飲みながらミュージックビデオを観るなんて…皆無だ。

まあ、器用に色々やってのけてた人達はどうか分からない。

二階堂も昔と変わって、プライベートは自由になった。って、浩也さんから聞いた事がある。

だけど少なくとも…瞬平はガチガチな古い二階堂の人間ぽかったかも。


「音楽って楽しいのにな。」

おはじきの喉を触りながら独り言。


浩也さんの言う通り、昔に比べれば二階堂の体制も厳しくはなくなったのかもしれない。

頭の奥さんの双子である二階堂陸さんは、ギタリストとして外に出ている人だ。

二階堂に生まれながら。


俺達は二階堂に仕えるために教育されてきた。

他の夢なんて持たない。

二階堂の者は二階堂のためだけに生まれ育つんだ。

小さな頃は一緒に遊んでた泉とも、10歳を境に『泉お嬢さん』と呼ぶ羽目になった。

…一緒にも遊べなくなった。

俺達の『訓練』が始まったからだ。


小さな頃は…楽しかった。

俺の双子の兄、瞬平と…二つ年上の志麻さんと、その妹の朝子。

そして…二階堂家の次女である泉。

とりわけ、同じ歳の俺と瞬平と泉は、まるで三つ子だって言われてた。

朝子は、いずれ二階堂を背負って立つ海さんの許嫁だったから、俺達から見ると別格だったけど。

泉は二階堂家の娘だと言うのに…なぜか俺達と同等に思えていて。

志麻さんと瞬平と俺の三人は、誰が泉をお嫁さんにするか。なんて…木登りで張り合ったりしてた。

だけど泉が『お嬢さん』になって…その関係は終わった。

実際泉は…

普段どうでもいい感じなのに、仕事になるとスイッチが入る。

その高い能力を見せられた時…俺は嫉妬した。

…誰かに妬くなんて俺にはない事なのに。

俺が唯一、その能力に嫉妬させられたのは…志麻さんでも瞬平でもなく、泉だ。


って…まあ、今ではそんな事どうでもいいけどさ。

俺は二階堂を辞めたし、夢に向かってコツコツと色んな事をする毎日。

夢のためだけじゃない。

俺自身のためにも。

神経を張り巡らせて銃を手にした日々が嘘のように、今の俺は平和な毎日だ。

ただ…二階堂にいた頃のクセは完全には消し去れない自分もいて。

それに気付いた時は、寂しいような悲しいような気持ちにもなる。


「……」

サイドボードに置いてある手紙に目をやる。

一昨日、帰って来たら郵便受けに入ってた。

宛名も差出人もなかったけど、裏に赤い印。

…母さんだ。

母さんの名前は『紅(こう)』といって…昔の記憶がない。

記憶はなくても、小さな頃から叩き込まれた何かは残るようで。

母さんは二階堂の人間じゃないのに…二階堂の能力のような物を持っている。

優しくて美人で、だけど時々ふっと遠くに目をやって…誰かを探してるように辺りを見渡す。

その仕草がずっと気になってた。

そして、俺には緑色、瞬平には青がソウルカラーだと言ってその色を与えられ続けた事。

それも気になって…

独自で調べた。

母さんの過去。

すごく大変だった。

ブロックされまくってたし。

そこまでして隠さなきゃならなかった母さんの過去。

少なからずともショックは受けた。

でも納得がいく事も多かった。

…関係ないよ。

今は母さんは二階堂の人間で…

昔の記憶はないんだから。


俺が二階堂を辞めて、瞬平とは縁が切れてしまったけど…

父さんと母さんが気にしてくれてるのは分かってる。

俺は誰とも縁が切れたなんて思ってない。

あれから…誰にも会っていないとしても。


「…優しい歌だね…おはじき。」

二曲目を聴きながら、おはじきに言うと。

やっと顔を上げてテレビを見て…俺を見た。

「もう一人じゃない…だってさ。」

そうだよ。

誰も…一人じゃないんだよ。

寂しさを感じるのは、何かを欲してるから。

そんな時は…思い出せばいいんだ。

自分の大切な人達の事。

目を閉じて…最初に浮かんだ人の事。


「…寝よっか。」

おはじきにそう言って、膝から退席してもらう。

俺の小さなお城はとても快適で。

二階堂を懐かしむ事もない。

ただ…

みんなには…

ずっと生きていて欲しいって。

自分の額にうっすらと残る傷痕を見るたびに…

強く思うんだ。

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