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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/17 19:25:31

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初孫のパワーと言うのは恐ろしい物で。

華音と咲華が産まれて、一年が経った頃。

貴司が突然裏庭の蔵を壊して遊び場を作った。

ビニールハウスの位置もずらして…そりゃあたいそうな遊び場だ。

「…貴司、少し歩けば公園もあるのに…外に出さないつもりですか?」

私が目を細めて裏庭を眺めながら言うと。

「いや…あんなに可愛いと誘拐の恐れが…」

「……」


おまけに、家族が増えるという事で…居間と台所も改築して、かなり大きな部屋になった。

貴司の爺バカには、麗と誓も驚きを隠せなかった。


相変わらず写真やビデオを送ってくれる知花。

それらが届くたびに、我が家は笑顔でいっぱいになり…

「ねえ、この服似合いそうじゃない?帰って来る頃ってサイズどれぐらいなのかなあ。」

やたらと…子供服や雑貨の本が増えた。

「六月末ぐらいになさい。今買ってもあの子達は日に日に大きくなるんですから。」

「え~…でもこの服可愛いから売り切れちゃうよ…」

麗は毎日毎日…華音と咲華の事で頭がいっぱい。

それを、私と誓は首をすくめながら眺める。


そして…七月の初旬…

知花の楽団はアメリカで大きな公演を終えて、帰国した。

その日は…どういう事か、貴司がお昼過ぎに会社から戻って来た。

「どうしたんですか。」

「辻さんが帰っていいと言ったので…」

「……」

貴司が帰って数分した後…チャイムが鳴った。

知花だった。

私と貴司は急いで門まで迎えに行った。

そこには…しっかりと自分の足で立っている華音と咲華。

「…まあ、大きくなった事。」

写真やビデオでは見ていても…やはり目の前にするとその違いは大きく分かる。

「おかえり。」

二人に顔を近付けて言ったが、二人とも少し困った顔をして知花の後に隠れた。

「ごめんね…タクシーの中で寝てたから。」

「いいんですよ。さ、おうちに入りましょ。」

貴司が荷物を持って先に歩いて。

知花が二人の手を持って庭に入った瞬間…

「わーあ……」

二人の口から、可愛い声が漏れた。

「すごいね。広いね。」

知花にそう言われた二人は、ニッコリと笑顔になって手を叩いた。

「玄関まで歩かせるのか?大丈夫か?」

急ぎ足で荷物を運んだ貴司が戻って来て。

「さあ、じーちゃんの所においで。」

二人の前にしゃがんで両手を出した…けど…

「……」

「……」

「あー…ごめんね。寝起きは機嫌が良くなくて…すぐ慣れるとは思うけど、もうちょっと待って?」

知花が申し訳なさそうに貴司にそう言って。

「そうか…そうだな…二人から見れば、初めて会ったにも等しい…仕方ない…」

そう答えながらも…とても残念そうな貴司。

…こんな顔も持っていたのかと思うと、おかしくてたまらない。


庭をのんびりと歩きながら。

最後は華音が歩く事を断念して知花に抱えられて、玄関までたどり着いた。

その頃には…咲華は私の着物を握りしめるぐらい…慣れてくれていた。


「わ…リフォームしたの?」

居間に入ってすぐ、知花が驚いた声を出した。

「明るくていいだろう?」

「うん…ビックリ。よその家みたい。」

確かに…今までは明るい部屋ではなかった。

でも今は光も十分に入るし、改築してからは麗と誓も食後も部屋に戻らずここに居るようになった。


華音と咲華におやつを食べさせて、その仕草の可愛らしさに私と貴司が笑顔になりっぱなしになっている頃…

「華音、咲華、じーちゃんと、おーばーちゃん、よ。」

知花が二人にゆっくりと言った。

二人は知花を見た後、私達を見て。

「じー。」

「おー。」

可愛い声で…短くそう言った。

「まあっ…」

嬉しくてつい…両手で口を隠して背筋を伸ばしてしまうと、隣にいた貴司が笑った。


それから麗と誓も帰って来て。

やっと…家族七人揃った。


七人揃って初めての晩食は…本当に楽しくて美味しくて。

だけど…

これから毎日こんなに笑顔が溢れるのだろうかと思うと…

私は心苦しかった。


そんな私の罪悪感を少し軽くしてくれたのは…

「はい、あんっして?」

華音と咲華が…知花の言葉に仏前に手を合わせてくれる事だった。

小さな手を合わせて…

「あんっ。」

と言って…頭を下げる。

なぜ『あんっ』なのかは分からないが…その仕草もまた…とても可愛らしい。

帰国して毎日…三人は手を合わせてくれている。

そして知花は…

「今日もありがとうございます。」

最後に、そう言って顔を上げる。

…どんな意味が込められているのか分からないけれど…

それは聞かない事にした。


知花達が帰国して二ヶ月…

まだ暑い九月のある日。

私は…お習字の先生の家でお茶をいただいての帰り道だった。

…公園で…

麗が、千里さんと話している。

心臓が止まりそうになったけど…安心したのも確かだ。

千里さんは、麗の話を聞いて少し呆然としていたけれど…

泣き顔の麗の頭を撫でて…肩を抱き寄せた。

それは…決意の表れのような気がした。


麗が去った後、私は…意思確認のつもりで千里さんと話をした。

偽装結婚の真相と…本当の気持ちを知りたかった。

居場所を求めていた二人が…契約を結んだ。

その結果の…偽装結婚。

それは胸に刺さる言葉だった。

…居場所…

確かに、あの頃の知花にとっては…我が家は居場所ではなかったはず。

そして千里さんは、キッカケはそうであったけれど、夫婦になれた気がしていた、と。

けれど、自分の器が小さ過ぎて…知花に別れを決断させた、と…


私は…千里さんと子供達を会わせる事にした。

誰でもない…知花のためだ。

知花だって…今も千里さんを想い続けている。

胸に抱くだけの想いなんて…

「子供達に会って、自分を取り戻して下さい。そして…自分を取り戻したら、知花の事も…取り戻して下さい。」

私がそう言うと、千里さんは何度も頭を下げた。

…ずっと…想いあっていた二人。

再び結ばれる日を…

私は、強く願った。

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