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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/17 12:24:20

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知花は…本来とても明るい子だったと思う。

寮生だった知花に会いに行く事も出来たのに。

私は…それもしなかった。

知花はずっと私と貴司から離れて、どんなに心細かっただろう。

帰って来る時ぐらいは、存分に甘やかせてやりたいという気持ちがあったが…

年に数回帰って来るたびに…容子さんは麗と誓を近付けまいとして、知花を部屋に閉じ込めた。

それは、私と貴司が何を言っても…無駄だった。

私には秘密をばらすと言い、貴司には誰のせいだと思ってるのか…と。

正直…容子さんがどうしてこんなに強気でいられるのか、それも不思議でならなかった。

私がピシャリと出て行けと言っても良かったのだが…麗と誓まで連れて行かれるのは困る。

二人には…罪はない。

それに…私は…バカな私は…

麗と誓が高原陽路史さんの子供だと言う事で…違う愛しさを感じていた。

…血の繋がりはないにせよ…ハルさんの息子さんだ。

もう二度と会う事はないとしても…私はまだどこかに淡い気持ちを抱いたままで。

どうにか…容子さんが落ち着いてくれない物だろうか…と、胸を痛めながらも考えていた。


知花がすっかり家族に心を閉ざしてしまった頃…

それは起きた。

「病院に行って来ます…」

ある朝、なかなか起きて来なかった容子さんが、真っ青な顔で台所に来た。

「…どうした?」

新聞を読んでいた貴司が、険しい顔で容子さんを見た。

「最近…体調が悪くて…」

「どういう風に?」

「どう例えたらいいのか…とにかく…辛いの…」

「車を出すから、乗って行きなさい。」

貴司も…こんな時は優しい。

子供達の事が絡まなければ…容子さんと貴司は、もしかしたらいい夫婦だったのかもしれない。

…高原氏を紹介したのは、間違いだったのだろうか…


季節の変わり目で体調が悪いのかと思っていたが…容子さんは入院した。

けれど、入院しても一向に良くならない容子さんは、結局二週間で退院し、自宅療養となった。

だけど…病気のせいで被害妄想でもしているのか…

「来ないで!!」

誰も寄せ付けなくなった。

部屋に入ろうものなら、何かを投げ付けて来る。

唯一…麗だけは、布団の傍に座らせて。

「麗だけは…母さんの味方よね…?」

そう、暗示のように言い続けていた。

そんな麗が…不憫だった。


ある日、裏庭にあるビニールハウスの前で、中岡さんと長井が貴司に土下座をしている姿を見かけて。

私は…陰からそれを見守った。

すると…

「まさか…トリカブトを?」

…え?

「すみません…どうしても…お子様達が不憫で…」

中岡さんは、そう言って泣き崩れた。

…二人は…容子さんにトリカブトの毒を盛っていた…と?

私は胸を押さえて飛び出そうとしたが…

「…この事は、誰にも言わないように。」

貴司が…低い声で言った。

「…えっ?」

「決して誰にも言わないように。そして、もう…そんな事はやめて下さい。」

「…分かりました…本当に…すみませんでした…!!」

二人は額が汚れてしまうほど、地面にそれをこすりつけるようにして謝った。

…トリカブト…

私の脳裏に、色んな気持ちが湧いた。

だが、すぐに頭を振って消し去った。

…私は、華の家の人間だ。

なのに…今私は…とんでもない事を…考えてしまった。


結局家に居ても食事もまともにとれない容子さんを、半ば無理矢理大学病院に入れた。


「…毒?」

「そう言われました。」

「……」

前の病院では原因不明と言われたが。

大学病院では、毒物性アレルギーと言われたらしく…

貴司はそれだけを私に言った。

…中岡さん達がトリカブトを使っていた事は…言わなかった。


だが…

貴司に咎められてからは、中岡さん達は毒など盛っていなかったはずなのに…一向に良くならないのはなぜだろう…

容子さんはもはや誰が病室に入っても、物を投げ付ける気力もなくなっているが、貴司の手前、中岡さんも長井も病院には行かない。


そんなある日、私は…麗がビニールハウスから出てくるのを見てしまった。

…ゴム手袋をして。

まさか…

まさか、麗が…?


呼吸がおかしくなった気がした。

私は麗から見える位置に立って。

「…麗。」

声をかけた。

麗は驚いたように私を振り返って…慌てて、両手を後ろに隠した。

「何をしているの?」

「…別に…何も…」

「……」

「……」

「病院に行くなら、早く支度なさい。」

その手の物を見せろ…とは…言えなかった。

麗は…容子さんを守りたいと思う反面…自分だけに伸し掛かる愛情に疲れているはずだ。

…私が…何とかしなくては…

麗の手を汚すわけには行かない。


そして私は…

容子さんが処方されている薬の中から…

解毒剤を抜いた。

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