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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/17 10:03:21

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クリスマスイヴ。

さくらが…女の子を出産した。

私が最後にさくらを見たのは…

苦しんで苦しんで…女の子を産んだ後、力尽きたように気を失ったさくらの姿だった。


秘密を打ち明けられた後、私はさくらにも貴司にも普通に接した。

私から見る限り…貴司とさくらは…確かに夫婦と言うよりは、仲のいい友達というか…

秘密を共有しているからなのか、それだけで絆は固いように思えた。

私は…さくらを好きな相手の元へ帰してやりたかった。

どうにか…貴司とさくらの仲を壊す手段はないだろうか…などと…鬼のような事を考えていた。


ところが。

助産婦さんをタクシーまで送って。

念のため…馴染みの先生に来てもらってさくらの診察をしてもらい…

私は、先生に色々相談をした。

実の親子関係かどうか分かる検査は、何歳から出来るのか…などと。

そんな事を話し込んで、しばらくして…さくらの様子を見に行くと…

「……さくら?」

中の間にいるはずのさくらが…いない。

産まれたばかりの…赤ん坊も…

…まさか…

まさか!!

私は慌てて屋敷の中を走り回った。

まさか…さくらは子供を連れて出て行ってしまったと言うの!?


二階に上がりかけた所で…赤ん坊を抱いた貴司に出くわした。

「あっ…ああ…こんな所にいたのですか…」

私が胸を押さえて言うと。

「…さくらは…出て行きました。」

貴司が…今まで聞いた事もないような、低い声で言った。

「……え?」

すぐには何の事か分からなくて…何度も瞬きをして、赤ん坊と貴司を見比べた。

「…あんな体で…いったいどこへ…」

出て行った…

さくらが…

自ら…出て行った…?

産まれたばかりの赤ん坊を置いて…?


いつか…頃合いを見て、さくらだけでも…男の所へ戻してやりたいと思っていたクセに。

私は…やはりさくらが可愛くて仕方がなかったのだろう。

あんなに苦しんださくらの事を思うだけで…涙が止まらなかった。


「…あの子は…どこでも生きて行けるたくましさがありますよ…」

貴司の言葉に…それはそれで頷くしかなかった。

…確かに、さくらは…私達親子が驚くような事を平気でやってのけた。

庭で焚き火がしたくてマッチを探していた時も、そこにある道具で火をつけたり…

自分の服も、全て私や貴司の着なくなった服を手直ししてオシャレな服を作っていた。

まるで魔法使いなのではないのかと疑うぐらいの事を、当たり前のようにやってのけた。

…もう…会えないかもしれない…

そう思うと、とてつもない寂しさに襲われた。

…華穂と過ごした時間より少ないのに。

さくらは…いとも簡単に私の心を占領していた。


「…可愛らしいこと…」

貴司の腕から赤ん坊を抱きとる。

小さな小さな…女の子…

「名前を…つけなきゃね…」

腕の中の赤ん坊は…何も知らない。

母親の事さえも…

「…お母さんに任せますよ。」

貴司が力のない声で言った。

…ただの秘密の共有者ではなかったのかもしれない…

本当に…さくらを愛していたのかもしれない…

そうだとすると…私は、貴司にも酷い事をしてしまった。

だが、どうしても…さくらには…幸せになって欲しかった。


「…知花…知花にしましょう。」

さくら…

誰もが知っている花の名前…

さくら、私は…あなたの娘に…『知花』と名付けますよ。


「…知花…いい名前ですね…」

貴司は…泣きそうな顔だったけれど、知花の小さな欠伸を見て…少しだけ目元を緩めた。

「…あなたは…父親です。しっかりなさい…」

そんな事しか言えない自分に…ガッカリしながらも。

どうか…

どうか…と。


どうか、さくらが…愛する人の元へ、戻れますように…と…


祈った。

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