ブログランキング14

いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

  • 記事数 3311
  • 読者 732
  • 昨日のアクセス数 15546

テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/16 23:20:28

  • 81
  • 0

「懐かしいね。」

ハルさんはお茶でも飲みに行かないかと誘ってくれたけど…私はそんなに時間がないと断った。

すると…

「じゃあ、ベンチに座って時間のある限り。」

優しく微笑みながら言われて…断れなかった。


…一度くちづけをした人。

それも、もう…遠い昔だ。


「結婚したんだよね?子供さんは?」

そう聞かれて、私は…華穂の写真を取り出した。

「…娘が一人。」

ハルさんはその写真を見て。

「可愛い娘さんだね…いくつ?」

「…10歳の時に…亡くなりました。」

「……」

しばらく沈黙が続いた。

「娘さん一人?」

ハルさんが写真を返しながらそう言って、私は貴司の事を話した。

自慢の息子がいるんですよ、と。

「そうか…雅乃ちゃんの息子さんなら、間違いなくいい子だろう。」

「そんな事…」

私とは血の繋がりがない…とは言えなかった。

それほど、私は貴司を自慢にしている。

私の息子だ…と。

「ハルさんは?息子さん…もう大きくなられたでしょう?」

確か…出会った頃はすでに6歳の息子さんがいらしたはず。

「ああ…長男が31、次男は22で…末が二十歳だよ。」

「男の子ばかり三人?」

「そう。末の子だけが結婚して子供もいる。」

「え?じゃあ…お孫さんが?」

「そう…おじいちゃんだよ。」

私達の時代では珍しくなかったが…今時二十歳で結婚して子供をもうけるのは早い気がした。

「…家のための…?」

遠慮がちに問いかけると。

「まあ…そうなるのかな。お互い気持ちはあったようだがね。末の子は人当たりのいい誰からも愛される子だったが…本当はそれに対して反発心が少しはあったのかもしれない。」

ハルさんは…苦笑いをしながら言った。

「どうして?」

「自分の飼い犬に、名前を付けられてしまった。『ハル』ってね。」

私は驚いて目を丸くしてしまった。

どんな理由があるにせよ…飼い犬に父親の名前を付けるなんて…


「…犬にお父様の名前を付けるなんて…すぐにバレてしまうでしょうに…」

驚いたままそう言うと。

「あまり家に帰らないから、知られる事はないと思ったんだろう。」

「……」

あまり家に帰らない…

ハルさんは…祥司さんのように、今も…あちこちに女がいる人なのだろうか…

そう考えると…モヤモヤした。

「ご主人は…残念だったね。」

モヤモヤしている所に思いがけない事を言われて、私は驚いてハルさんを見た。

「主人を…?」

「もう昔だけど…一度雅乃ちゃんと二人で歩いているのを見かけてね…篠本君は高等部で同期だったから顔だけは知ってたんだ。活躍も訃報も…新聞で知ったよ。」

「…そうですか…」

…知らなかった…

そう言えば、二人は同じ歳だ。

対照的なようで…よく似たような気もする二人…

「…それに…」

ハルさんは少し悪戯な笑顔を見せて…

「うちの長男は…篠本君の子供なんだ。」

……頭の中が…真っ白になるような事を言った。


それからは…頭の中が真っ白で、私は生返事ばかりをしてしまった気がする。

ハルさんは…長男が…祥司さんの息子だ…と。

…ハルさんの奥様は、ハルさんと結婚する前に祥司さんと付き合っていて…

どうしても。

祥司さんの子供が欲しかったらしい。

本気で…好きだったそうだ。


「長男本人も知ってる。」

「…知らせないという選択はなかったのですか?」

「ない事もなかったが、本人のために知らせた。」

「…本人のため?」

「私の跡を継ぐ事で、出来て当たり前と言うような力の入れ方をさせたくなかった。」

「……」

それは…完全には分かる気はしなかったが…

家のために生きなくてはならない者特有の…悩みでもあるのかもしれないと思った。

「雅乃ちゃんも、篠本君があちこちに子供を作っていたのを知ってるんだろう?」

「………はい…」

では…その長男と貴司は…腹違いの兄弟?

中岡さんに聞いていた、祥司さんの子供が…まさかハルさんの奥さんとの間に生まれた子だったなんて…

私が眉間にしわを寄せたまま…

「でも…そんな事…」

上手く言葉に出来なくて…小さくそれだけ言うと。

「…次男は母親がイギリス人だ。」

ハルさんはまた…私の目を大きく見開かせるような告白をした。

「ははっ…雅乃ちゃん、目が落ちるよ?」

「……」

「末の子だけは、ちゃんと…私と妻の子供だよ。婿養子に出したけどね。」

「……」

もう…言葉が出なかった。

そして、あの時…この人と不貞をしなくて良かった…と、心から思った。

…そうは言っても…どこかに淡い気持ちが残っているのか。

ハルさんの声を聞いていると…不思議と甘酸っぱいような気分になった。

今更恋だの言う歳でもない。

私は…貴司のために生きて行く事を選んだ。


別れ際、私は言った。

「主人は…愛人の上で頑張り過ぎて亡くなったんです。」

新聞には、心筋梗塞と書いてあった。

間違いではないが、祥司さんを知る人には…必要なくだりだ。

「…そうなのか。」

「ハルさんも、お気をつけて。」

なぜか…笑顔でそんな事が言えた。

私達は…こんな公園のベンチで、万が一新聞記者にでも聞かれていたらネタにされてしまいそうな話を堂々と…

ふふっ…。


結局私は…女好きの男にしか縁がなかった。

…恋なんて…実在しない。

寂しいが…私には、そういう事だったのだと思った。

「…また会えるかな。」

爪先を見ている所にそう言われて、私は顔を上げた。

「…いいえ。」

そして…首を振った。

この人には…奥様がいる。

色んな道があるとしても…私は祥司さんやこの人と同じにはなりたくない。

「…フラれたか。」

「奥様を大事になさって下さい。」

「…そうだな。ありがとう。」

久しぶりに…優しい顔が出来た気がした。

もうずっと…忘れかけていた気がする…笑顔。

…これでいい。

これで私は…全てを貴司に注ぐ事が出来る。


…さよなら、ハルさん。

同じテーマの記事

コメント0

しおりをはさむ

  1. 1

    MyhoneyCin...

    19時間前

    ひみつの恋。

    まきちむ

    記事数 18206 / 読者数 4107

  2. 2

    未来予想図

    5日前

    幼なじみのハルとまお♡

    まお

    記事数 768 / 読者数 3142

  1. 3

    When love ...

    4時間前

    リノ

    記事数 687 / 読者数 1298

  2. 4

関連するブログ記事

  1. 42nd 65

    09/17

    さくらが出て行った翌年…親戚中から責め立てられる形で、貴司は...

  2. 42nd 44

    09/16

    あれ以来、ハルさんとは一度も会わなかった。私は祥司さんと...

  1. 42nd 80

    09/17

    そして…私は…私達は…高原夏希さんと会う事にした。貴司が...

  2. 42nd 66

    09/17

    「容子さん、ちょっと。」私は…ハルさんの長男と容子さんを...

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

11/18 編集部Pick up!!

  1. 新築お披露目で義両親にイライラ
  2. 子持ちが羨ましくて退職を決意
  3. 作ったご飯を毎日こっそり戻す夫

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3