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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/16 22:48:18

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「…きれいな桜だこと…」

入学式が終わって、私は一人…早めに式場の外へ出た。

そこでは風に舞う桜の花びらが見事で。

それを見上げながら…華穂を想った。

「見えたかしらね…あなたのお兄様、立派に挨拶してましたよ。」

写真を胸に…小声でつぶやく。


檀上での貴司は…家では見せないような顔で。

暗記していたのか…それともその場で考えたのか。

何かを読むこともなく、会場を見渡す余裕さえある堂々とした挨拶だった。

…誇りだった。

祥司さんが余所で作った子供だろうが何だろうが…

もう、貴司は私にとって自慢の息子でしかない。

むしろ愛人に礼を言いたいぐらいだ。


歩きたい気分だった。

一人でのんびりと…公園を歩いた。

何年ぶりだろう…こんな風に、のんびりとした気分で歩く事は。

貴司と穏やかな生活をしてはいるが…私は元々せっかちなのかもしれない。

花を活けていない間は、常に動いている。

貴司のためにしてやれる事は、今必要なく、どんなに先に活かされる事だとしても…惜しまなかった。

それが目に見えない何かだとしても…貴司のためなら。


「…雅乃ちゃん…?」

背中に届いたその声に…私は心臓が止まる思いがした。

私の事をそう呼ぶ人は…この世に存在する人の中で…ただ一人…

もう…思い出す事もなかった…

…いいえ。

思い出しかけては…蓋をしていた。

私は、ゆっくりと…一歩ずつ踏みしめるようにして…体ごとその人に向いた。

「…やっぱり…雅乃ちゃん。」

「……」

私が思った、この世に存在するただ一人の人は…当然だけど、思い出の中とは風貌が変わっていた。

確か…祥司さんと同じ歳。

けれど、祥司さんよりも深く刻まれたしわ。

白髪も…多い。

でも、変わらない笑顔と…この歳でしか出せない色気のような物を感じた。

…私だって、あの頃とは違う。

多く苦労を感じた分、同じ歳の女性よりは老けて見えるはずだ。


「分からないかな?」

そう言って近付いて来た…ハルさん。

私は少しだけお辞儀をして。

「お久しぶりです。よく…私だと…」

本当は…はちきれんばかりの心臓を押さえながら…

無理矢理押さえながら…言った。

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