ブログランキング7

いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

  • 記事数 2399
  • 読者 655
  • 昨日のアクセス数 38518

テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/16 20:15:32

  • 74
  • 0

初めての親子の抱擁…のような事があった後。

私と貴司の静かな生活が始まった。


私が花を活けていると、学校から帰った貴司が静かに傍に座って活け始める。

特に教えたわけでもないのに…貴司にはセンスがあった。

「…お母さん、僕は高等部に進学していいのでしょうか…」

私と貴司の会話は、花を活けないがらの方が弾んだ。

口数は多くないが…肝心な話は、なぜかその時に行われた。

「どうしてですか。」

「お父さんが言っていました。僕には許嫁がいる…と…」

「……」

お父さん、と言われて…顔を上げた。

すっかり忘れていた。

許嫁の事ではなく、祥司さんの事を。

あの男、あまり帰って来やしないのに…貴司にそんな事だけは吹き込んでいるなんて。

確かに、貴司には東海林家というたいそうな金持ちの家の許嫁がいる。

だが、まだ子供だ。

自分が15歳の時は、もうすぐ夫を迎えるという覚悟を何となく持たされてしまったが…

私から見ると、15歳の貴司は頼もしいようでもまだ子供だ。


「進学なさい。高等部にも大学にも行って、好きな事をたくさんおやりなさい。」

私がそう言うと、貴司は手を止めて驚いた顔をした。

「…何ですか。」

あまりにも珍しい表情を見た気がして低い声を出してしまった。

「いえ…そう言われるとは思わなかったので…」

「…私は…何も出来ませんでした。だから…華穂…」

「……」

「…華穂とあなたには…好きな事をして欲しいと思ってました。」

私の言葉に、貴司は座布団から降りて。

「…お母さん。」

私に向かって、頭を下げた。

「……」

「僕は、一生…お母さんのそばに居ます。」

その言葉を…私は不思議な気持ちで聞いた。

この子は…貴司は…私と血の繋がりがない。

祥司さんと愛人の息子だ。

なのに…どうしてこんなに、私を労わり思いやってくれるのだろう。

優しい言葉なんてかけた事もない。

息子だと思う事が出来ても、普通の母親のように接した事はないと思う。

私はいつでも…厳しい教育をして来た。


「…頼もしい事…」

小さく笑いながら…手にしたままだった枝物を挿した。


華穂が死んで辛い。

苦しくて生きた心地がしない。

それは…変わらなかったが…

そんな私の中に、小さくてもホッ…と灯る何かがそこにあった。

…貴司が灯してくれた。

私は…生きなくては。

この子のために…。

同じテーマの記事

コメント0

しおりをはさむ

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

9/22 編集部Pick up!!

  1. 妻を家政婦扱いする夫に呆れた
  2. FBの幸せそうな投稿見てイライラ
  3. 育休復帰時既に妊娠3か月の同僚

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3