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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/16 19:04:40

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数日振りに…ちゃんと着物を着た。

そして、華穂の仏前に手を合わせて…

「…華穂…」

小さくつぶやいた。


死んでしまいたい。

もう、桐生院の今後など…どうでもいい。

私は、好きに生きて来れなかった。

夢さえ見られなかった。

それならば…今こそ…自由になってもいいのではないだろうか。

両親も祖父母もいない。

どうせ私が死んでしまえば、桐生院は廃れる。

どうなってもいい。


そう思い始めてからの私は、妙に頭の中が冴え渡った。

華穂の遺影が見える位置に踏み台を持って来て、鴨居に紐を通した。

傍から見れば異常な行動でも、私にはまるでピクニックにでも出かける気分だった。

華穂に会いに行くのだ。

楽しみで仕方ない。

本当に、この時の私は…それしか頭になく。

廊下に、貴司がいた事など…目にも留まらなかった。


「…お母さん。」

踏み台に上がって、鴨居に通した紐を結んでいる時…声をかけられた。

だけど私は動きを止めなかった。

紐を結びながら。

「何ですか。」

淡々と答えた。

「…何を…しているのですか…」

何をしているか?

何をしているか…

そこでようやく、私は手を止めて…貴司を見た。

「…華穂の所へ…行こうと思っています。」

私が紐を持ったまま貴司に目を向けて言うと…すでに貴司は目に溢れんばかりの涙を浮かべていた。

「…お母さん…それなら…」

貴司はずい、と部屋に入って来て私の前に立つと。

「その紐で…まず…僕を殺してから、死んでください…」

震える声で言った。

「……」

私は…とても呆れた顔をしたと思う。

貴司は今…なんと?

「華穂が死んだのは僕のせいです…お母さん、どんなに僕を憎いと思われている事か…」

「……」

「僕を殺して下さい…僕は…お母さんにまで死なれてしまったら…生きていけません…」

「……」

この子は…何を言ってるのだろう…?

私はキョトンとした顔で貴司を見下ろした。

私が…貴司を憎んでいる…?

私が死んだら生きていけない…?

「…憎んでなど…」

紐から手を離して、貴司の頭に触れようとすると…踏み台のバランスが崩れて、私は貴司の上に転がった。

「あっ!!」

「うわっ…」

私が貴司の頭を抱きしめるような形になってしまい…何となくバツの悪い空気が流れたが…

「…お母さん…」

貴司が…ギュッと、私の背中に手を回した。

「……」

それは…貴司がうちに来て、初めての事だった。

私は…貴司を我が子だと認めたと言いながら…抱きしめる事など一度もなかった。

「お母さん…生きて下さい…」

私の胸に顔を埋めて、泣き続ける貴司。

…私にはまだ…私を母と呼んでくれる存在がいる…。

華穂。

華穂。

あなたに…会いたいけれど…

あなたの大好きなお兄さんを残しては…いけないわ。

もう少し…待ってもらえるかしらね…。

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