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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/16 17:30:57

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その知らせは…私が花器の展示会に出かけている時にあった。

「桐生院様!!た…大変です!!」

会場となっているホテルのロビーで、顔見知りの従業員が慌てた様子で駆け寄って来た。

もう…それだけでただ事ではないのは分かった。

「…何でしょう。」

「すぐ…すぐ大学病院に向かって下さい。お嬢様が…」

「……」

私は、言葉の続きを待った。

お嬢様が?

華穂がいったいどうしたと言うのです。

だけど言葉は出て来ず…それが私の足を動かせた。

ホテルを出ると、すでにタクシーが待機していた。

礼を言うのも忘れて、私は着物の袂をたくし上げてタクシーに乗った。

「大学病院へ急いでください。」

低く早口で言ったが、運転手は私が言うより先に車を発進させていた。


華穂が…

華穂に何が…?

スピードの出ているタクシーが、とても遅く感じられた。

もっと…もっとスピードを出して。

もっとよ!!

心の中では叫んでいたけれど…口は一文字につぐんだまま。

手足が酷く冷たくなって…私はガタガタと身体を震わせた。

悪い事しか思い浮かばない。

だけど…もしかしたらそんなに悪い事でもないかもしれない。

ちゃんと話を聞けば良かった。

私とした事が…慌て過ぎた…


病院の前にタクシーが停まると、私はお札を手渡して走り出た。

運転手が何か言っていたが、もう耳には入らない。

ロビーに駆けて入ると庭師の長井がいた。

「奥様!!」

…長井。

どうして…どうして泣いているの。

「こちらです…」

長井がそう言って私の前を駆け出した。

バタバタと慌ただしく駆けて、救急治療室と書いてあるそばまで行くと。

「奥様!!」

私の事を『お嬢さん』と呼ばなくなった中岡さんが、泣きながら走り寄って来た。

「奥様…奥様~…」

「…何事ですか。除けなさい。」

「…すい…すいません…」

中岡さんは私の後ろをついて来るようにして、治療室に向かった。

だけど…

『華穂!!華穂!!』

「……」

中から聞こえたのは…貴司の声だった。

私の足が…そこで止まる。

『華穂…!!母さんを一人にしないでくれ!!』

その時…その貴司の声を聞いて…

立ち止まった私の足は…動かなくなった。

華穂は…何らかの理由で…逝ってしまった…

そして…

貴司が…

それを酷く悲しんでいる。

…私を一人にしないでくれ…と…

華穂に泣いて頼んでいる…


「奥様…」

中岡さんに促されて、私はゆっくりと歩を進めた。

「…っ…お母さ…」

そこには…診察台の上に寝かされた華穂と…それにすがる貴司がいた。

周りでは、治療をしてくれた医師や看護婦達が器具を片付けている。

「…お母様ですか。たったいま…息を引き取られました。」

私を見付けた医師が小さな声でそう言った。

たったいま…息を引き取った。

どうして…?

華穂は…まだ10歳なのに…

「ごめんなさい!!お母さん!!ごめんなさい!!」

貴司が私の前に跪いて泣き叫んだ。

「僕が…僕がいけないんだ!!」

「……」

いったい…何があったの…

私は華穂の亡骸に近付く事が出来なかった。

信じたくもない。

そこにいるのが娘だなんて…

信じたくない。

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