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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/16 16:06:39

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「…養子?」

私は耳を疑った。

父が…ある日突然、祥司さんの愛人の息子を養子に迎えろと言って来たのだ。

「どうしてですか。華穂(かほ)が…華穂がいるじゃないですか。」

「…やはり息子がいた方がいい。」

「そんな…」

私は…華穂を出産した時に子宮を傷めて、もう妊娠は出来ないと言われた。

それでなくても…女の子が産まれたと知った両親は、あからさまに肩を落として。

祥司さんは…首をすくめた。

…どうして?

どうして女の子だと歓迎されないの?

私が命を懸けて産んだと言うのに。

私を命懸けで産んでくれた母には解ってもらえると思ったのに。

誰も…私の気持ちなど解ってくれなかった。


私の気持ちなど蚊帳の外のまま。

我が家には…貴司という6歳の男の子がやって来た。

華穂はまだ一歳。

貴司が来たからと言って、祥司さんがうちに定着するわけではなかった。

両親は貴司を可愛がったが…私は冷めた目で遠巻きにそれを見ていた。


「華穂お嬢さん、お着替えしましょうね。」

中岡さんだけが…味方だった。

意地になっている私も、中岡さんの前でだけは…泣きながら弱音を吐いた。

「…どうして…華穂の事は認めてもらえないの…」

すると中岡さんは、私の肩を優しく擦りながら。

「…本当に…旦那様も奥様も酷いです…」

同情の言葉をかけてくれた。

「雅乃お嬢さん、私はお嬢さんの味方ですよ…何があっても、お守りいたします。」

「中岡さん…」

彼女のその言葉は…嘘じゃなかった。


貴司が養子に来て…一ヶ月。

まずは父が二階の窓から落ちて亡くなった。

雨樋に引っ掛かった何かを取ろうとして、過って落ちたらしい。

そして…その二ヶ月後。

今度は母が…庭にあるビニールハウスで育てている花に薬を撒いていて、誤飲して亡くなった。

立て続けの不幸に、親戚からは貴司が疫病神だと噂された。


貴司はとてもおとなしい子で。

何を言われても、それが聞こえていても。

ただひたすら…部屋の隅で正座したまま畳の目を見つめていた。

…うちに来て三か月。

まともに口もきいた事はなかったけれど…

私の中に、貴司を憐れむ感情が湧いた。

少し…自分と重ねたのかもしれない。

「…貴司。」

私が声をかけると、貴司はゆっくりと顔を上げた。

「お腹がすいたでしょう。中岡さんの所に行って、食事をとって来なさい。」

私は決して優しくはなかった。

笑顔も見せず、低い声で貴司に言った。

けれど…貴司もまた、一人ぼっちだった。

それゆえか…私の目を真っ直ぐに見て。

「…分かりました。ありがとうございます。」

とても丁寧に…そう言って立ち上がった。

私を…味方と認めた瞬間だったのかもしれない。

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