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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/15 23:10:39

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「聖…すまないな。」

ここに来るたびに、父さんはそう言って謝る。

謝られたからって、俺の立場が変わるわけじゃないから…謝らないで欲しいんだけどなー。


父さんが余命わずかと聞かされて…慌ただしく会社を継ぐ事になった。

まるで狐につままれた気分だよ。

卒業後は大学院に進むつもりだったのに…


かと言って、俺が継がなきゃ…今更誓兄には無理だし…ノン君には出来るとしても、もっとバンドで頑張って欲しいし…

ま、漠然と父さんの後を継ぐんだって周知の通りでいいんだけどさ。

それにしても…思いがけず早過ぎる。


て言うかさ…

嘘だよな。

確かに少しは痩せたけど…そんな重病人に思えねー。


「で?今日は何の話をしたいって?」

椅子を引っ張ってベッドのそばまで来ると、俺は足を組んで座った。

入院して最初はみんなを個々に呼びつけて面談みたいにしてたけど。

ある時期から、俺だけ特別多く呼ばれるようになった。

で、会社の内部事情とか…

株主総会で繰り広げられる毎度お馴染みの揚げ足取りの事とか…

派閥に関しても聞いたし…

ま、ざっくりと会社の事は聞いたけど、さほど気になるほどの事はなかった。

面倒な話は多いけど、俺は俺なりに…見ざる聞かざる言わざるで俺の道を行かせてもらう。

…悩んだけど、そうさせてもらう事にした。


「…今日は…一番話したい事を話そうと思う。」

父さんは胸の上で指を組んで、天井を見ていた。

「へー…一番話したい事。何だろ。」

とりあえず、そこまで興味はなくても…興味津々なフリをした。

実の父親にこう言うのは失礼だけど…父さんはおとなしい人で掴みどころがなくて。

仕事に関しては真面目で尊敬できるけど、『親父』って呼んでしまってる、俺の姉ちゃんの旦那である神千里が刺激の強い人だけに…

父さんの一番話したい事って言われても、庭の事かなー?ぐらいにしか思わなかった。


「…聖…おまえは私の子供じゃない。」

「……」

父さんの言葉が…すぐには理解できなかった。

頭の中にも入って来なかった。

父さんの手の色ってこんなに白かったっけなー…なんて、瞬きをしながら手を見てた。


「おまえは…人工授精で…人から精子を提供してもらって出来た子だ。」

「……」

えーと…

えーと…?

「…父さんに、精子がなくて…って事?」

眉間にしわを寄せながら問いかけると。

「ああ。そうだ。」

父さんは静かに頷いた。

「…姉ちゃんは…高原のおっちゃんの娘…だよな?」

「ああ。」

昔から、うちに出入りしている高原のおっちゃん。

どんな関係なのかなんて、気になった事はなかった。

普通に親戚の一人だよなー…って思ってた。

だけど、ふと…続柄が気になったある日。

俺は、父さんに聞いた。

「高原のおっちゃんって、父さんの何?」

すると、父さんは小さく笑って。

「高原さんは、知花のお父さんなんだよ。」

……あの時も、頭が回らなかった。

だけど父さんは、ゆっくりと…

自分が母さんと出会う前に、高原のおっちゃんと母さんが恋に落ちて姉ちゃんを身ごもった事。

だけど色んな事情で二人は別れて…姉ちゃんは桐生院で生まれ育った事。

母さんは姉ちゃんを産んだ後、父さんに追い出されて…姉ちゃんが生きてる事も知らずにアメリカにいた事。

だけど事故に遭って…寝たきりになってしまった母さんを献身的に世話してくれてたのが…高原のおっちゃんだった事…なんかを話した。

また何の縁なのか…姉ちゃんが高原のおっちゃんの事務所に所属する事になって…

それで母さんとの事が解って…

元気になった母さんは、桐生院に戻った…と。


「…誓兄と麗姉は…?」

俺の問いかけに、父さんは少し黙った。

「誓兄と麗姉も…人工授精?」

二人の母親は…姉ちゃんと俺と違って『容子』って人だ。

母さんとは全くタイプの違う美人で、俺が生まれるずっと前に病気で亡くなった。

「…聖。」

「…何。」

「おまえとは…血の繋がりはないが、私は私の息子として…愛してる。」

「……」

そう言った父さんの目は力強くて。

俺は…少し照れくさい気もしてうつむいた。

「だからこそ…本当の事を話すぞ。」

「…本当の事…」

知りたいような…知りたくないような…

すごく…瞬間的にモヤモヤとした。

これを知ったとして…俺、今まで通りの顔…できんのかな…

「真実は…大事だ。誰かに知っていて欲しい。」

父さんのその言葉は…何となくだけど、俺にだけ託される事のような気がした。

そうしたら…俺、それ…聞かなくちゃいけない宿命っつーか…


「聞いてくれるか…?」

父さんの声は、俺にNoと言わせない力がこもっていた。

…嫌だ…なんて…

言えねーじゃんかよ…。

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