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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/15 21:45:35

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「横になった方が良くないか?」

貴司に呼び出されて病院に来た時は、すでに時計の針は22時をまわっていた。

「座っていたいんです。」

貴司は少しベッドを起こした状態で、背中にクッションを挟んで座っていた。


入院して一週間。

顔色はいいように感じるが…

…痩せた。

仕事をしている間は、まだ気が張っていたのかもしれない。


「…高原さん。」

「ん?」

「さくらとの…馴れ初めを聞かせてもらえませんか?」

「……」

椅子を出して座りかけた所にそう言われて…

俺は少し躊躇してから…座った。

「もう…昔過ぎて忘れたな。」

小声でそう言いながら笑うと。

「教えてくれないと、同じ質問をさくらにもしますよ?」

貴司はさらっと意地の悪い事を言った。

「…なんだって、そんな事を聞きたいんだ?」

「さあ…ただ、知りたいんです。」

「……」

「聞かせて下さい。」

俺は椅子に深く座って溜息をつくと。

「…ぶつかったんだ。」

話し始めた。


…さくらとぶつかったあの日。

さくらは、この後歌うから見に来てくれと言った。

そこそこに売れてた俺に向かって、ライヴを見に来てくれなんて。

新鮮過ぎて…その気になった。

誘われた店に見に行くと…Deep Redを結成するキッカケになったDeep Purpleのカバーバンド。

上手くはなかったが、さくらはとてもいい声をしていて。

他の歌も聴いてみたいと思った。

他の日にピアノの弾き語りをしてると知り、通うようになった。

ボイトレもした。

さくらが育っていくのが、楽しくて仕方なかった。

ステージの後の反省会も…さくらは歌に関する事に真面目に取り組んだ。


「私は…カプリで歌うさくらに一目惚れでした。」

貴司の視線は、遠い昔を見ているようだった。

それは俺も同じで。

カプリのステージに立つさくらを思い出すために、目を閉じたが…

「……」

すぐに、目を開けた。

そこに…見た事もない、周子の姿を見た気がしたからだ。

…俺が不幸にしてしまった…周子の…


「もし…」

貴司は胸の上で組んだ指をゆっくりと動かしながら。

「もし…私が死んだら…」

つぶやいた。

「死んだらとか言うな。」

「でも…死にます。だから、聞いて下さい。」

「……」

「もし、私が死んだら…」

続きは、言わなくても分かる気がした。

さくらを、よろしくお願いします。

そう来るのだろう。と…

「高原さん…さくらと…結婚してやって下さい…」

「…………はっ?」

つい、マヌケな声が出てしまった。

「さくらと結婚して…あなたも…幸せになって下さい…」

「……おい。冗談だろ。」

「本気ですよ…私は…。」

「……」

俺は大きく溜息をついて立ち上がると。

「もう休め。夜は感傷的になるから、そんな言葉が出てしまうんだ。次は昼間に来る。」

貴司を見下ろして言った。

「…昼間に来ても、同じ事を言いますよ。」

「頼むから、あいつにそんな事を言うなよ。」

「…ダメですか?」

「あいつが選んだんだ。後悔させるような事を言わないでくれ。」

「……」

「しっかり寝ろよ。」

俺は早口にそう言うと、病室を出た。


…さくらと結婚して幸せになれ?

バカな。

今更…そんな選択肢、俺にはない。

俺は…もう十分だ。

十分…幸せを味わった…。

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30分後ぐらいに何話か連続更新します!

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