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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/15 18:17:24

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昨日の貴司の留守電に折り返してなかったと思い、朝一で連絡すると。

『ちょうど良かった。今日付き合ってもらえませんか?』

そう言われて…大学病院に呼び出された。

そして、言われた通りロビーで待ち合わせると。

「実は今日から入院するんです。」

貴司は何でもない事のように、穏やかに言った。

「……」

入院すると言われて、辺りを見渡した。

「一人で来たのか?」

「まずは。後から誰かが来るでしょう。」

「……」

貴司は手ぶら。

つい、小さく笑ってしまうと。

「手ぶらなのがおかしいですか?どうせすぐ着替えさせられますし、必要な物は後から誰かが持って来ます。」

貴司は俺の顔を覗き込んで、いたずらに笑った。

…バレたか。


「それにしても…『誰かが』ってどうなんだ。ジャンケンでもして勝った奴とでも言うのか?知ってたら俺が荷物受取に行ったのに。」

師走で多忙なのだとしても、桐生院家…薄情だぞ?

主が入院すると言うのに。

そんな事を考えていると。

「実は、みんな受け入れられないようだったので、『先に行く』と書き置きを残して、コッソリ出て来たんですよ。」

貴司は歩きながら笑った。

「…受け入れられない?」

隣を歩きながら聞き返すと。

「末期の肺がんなんです。もう、長くありません。」

「……」

「そろそろ…もういい頃でしょう。」

貴司は、いつもと変わらないトーンで言った。

…末期の肺がんで…長くない?

「…待てよ。」

歩を進める貴司の腕を掴む。

「もういい頃って何だ。」

俺の言葉に貴司はじっと俺の目を見て。

「もう…十分幸せを味わったという事です。」

穏やかに微笑みながら言った。

「な…」

「これ以上幸せになると…天罰が下りそうなので。」

「バカ言うな。病気は…肺がんは…治療するんだろう?」

「とりあえず詳しい検査を受けろと言われました。しかし…恐らく治療は無理でしょう。」

「……」

「いいんです。それよりも、入院した方が仕事を休めると思って。」

「…バカか。こんな時に仕事なんて…」

「あなただって、きっとそうしますよ。」

「……」

それから貴司は受付を済ませて。

「五階だそうです。」

俺と一緒に五階に上がった。

入院する部屋は南向きの綺麗な個室だった。

「…残った時間で、色々話したい事があります。」

ベッドに座った貴司は、本当に…穏やかで。

死が近付いているような人間には思えなかった。

…むしろ…

それを待っていたかのように…

嬉しそうにも見えた。

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