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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/15 17:41:22

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私が大部屋に入ると、晩食の料理が並べられている所だった。

「貴司、その大皿届くかい。」

とうに90を過ぎている母は、今も杖をつくことなく歩く。

「ええ。ありがとうございます。」

「おじいちゃま、ビールにする?お茶がいい?」

華月がグラスと湯呑を手にして言った。

「お茶にしてくれ。」

私がそう言うと。

「わ、珍しい。明日お休みなのに、飲まないんだ?」

咲華が笑顔で言った。

その時…さくらが洗濯室から戻って来て。

「さくら、もうそこはいいから、座りなさい。」

母がさくらに声をかける。

「…はい。」

何かがあったとしても…いつも元気に振る舞うさくらだが。

さすがに、それは難しいのか…そこに笑顔はなかった。


「レコーディング、そんなにハードなんだ?」

聖の問いかけに。

「親父のダメ出しがな…」

華音が目を細めて答える。

「華音、あんなので弱音を吐くようじゃ、まだまだ甘いな。」

千里君がビールを片手にそう言うと。

「でも千里、華音の時は特別厳しいってみんな言ってるわよ?」

知花が千里君の顔を覗き込んで言った。

「俺に何の恨みがあんだよ。」

「別に恨みはない。ただ、恥ずかしいプレイはして欲しくねーだけだ。」

我が家の晩食は、今日も賑やかだ。

私の大事な家族…

高原さんから、さくらを奪ってまで…作った家族…

十分、幸せは味わった。

そして、ずっと抱えたままの罪悪感も…

私は、捨て去りたい。


「咲華、おまえまだ食うのかよ。」

「し…失礼ね。華音が小食過ぎるんじゃない?」

「いーや、咲華は間違いなく桐生院一の大食らいだな。」

「聖。」

「でもお姉ちゃん全然太んないね。」

「調子に乗って食ってたら、志麻に逃げられるぞ?」

「もー!!うるさい華音!!」

賑やかな晩食。

明日から…この賑わいを離れると思うと、寂しくてたまらない。


「…みんな、ちょっといいかな。」

一通り、みんなが箸を置いたところで…私は切り出す。

「ん?」

「なあに?」

みんながそれぞれそう言って私を見る。

「…実は、明日から入院する事になった。」

静かな声でそう言うと、食卓は一瞬静まったが。

「何だよ、どこか悪い所でもあんのかよ。」

息子の聖が、向かい側で笑いながら問いかけた。

「末期の肺がんで…」

「……え…っ?」

「もう、長くない。」

その私の言葉に、目を見開いたのは…全員だった。

私に与えられた余命は…長くて一ヶ月。

だが…


そんなに持たない事を。


私は、知っている。

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