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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/15 16:50:56

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「……」

私が仕事から帰ると、すでに桐生院家全員が大部屋に集まっていた。

「あっ、おじいちゃま。おかえりなさい。」

私に気付いた咲華と華月が、立ち上がってカバンとコートを持ってくれた。

「寒かったでしょ。お疲れ様。」

咲華の優しい言葉に、癒される。

「おかえりなさい。遅かったですね。」

妻のさくらが、手を拭きながらスーツの上着を取る。

私の部屋は二階だが、三年前から着替えは下の部屋でするようになった。

さくらは私と並んで歩いて着替え部屋に行くと。

「明日はお休みでしょ?今度こそ休日出勤はやめて下さいよ?」

私の脱ぐ物を受け取りながら言った。

「いや…それなんだが…」

私は小さく溜息をつきながら。

「明日から…入院する事になったよ。」

さくらの目を見て言った。

「……え?」

少し首を傾げて、不思議そうな顔のさくら。

そんな顔は…本当に、昔と全然変わらない。

こんな時なのに笑いそうになってしまった。

「だから…今年のパーティーは私抜きでしてもらう分、詩生君と志麻君に来てもらってくれ。」

今月、立て続けに…華月と咲華の彼氏が乗り込んで来て、千里君に殴られたようだが。

二人とも…好青年だ。

私の可愛い孫たちを、きっと幸せにしてくれるはず。


「入院…って…どうして?」

もう…隠しておけないな。

そう思った私は、まずはさくらに打ち明ける事にした。

「…末期の肺がんだそうだ。」

バサッ。

さくらが手にしていた私の着替えが落ちて。

私がそれを見ても…さくらは茫然としたままだった。

「…い…いつ…検査を…?」

「今月の初めに。咳が止まらなかったから、仕事の合間に行ったんだ。」

「……」

さくらは、どうして言ってくれなかったのか。と言った顔。

…当然か。

家族の誰かがそんな事をしたら、私だってそう思う。

私は床に落ちた着替えを手にして。

「…後で、みんなに話そう。」

さくらの肩に手を置いて、そう言った。


再婚当初は…さくらに触れる事すらできなかった。

長年、愛する人のそばで寝たきりになって…

どれだけの愛情を持って大切に生活させてもらっていたのか…

さくらを愛して止まなかった高原さんの気持ちを想うと、奪ってしまった罪悪感は何よりも深かった。

それでも、さくらを家族として迎え、母や知花と一緒に生きて行きたいと思う気持ちが強くて…

私は、二人の気持ちを知っていながら…


「…貴司さん。」

「ん?」

「あたしは…」

「……」

「あたし…」

さくらは、眉間にしわを寄せたまま…両手でカーディガンの裾をギュッと握って。

言葉を出したいのに、それが見つからない様子だ。

「…すまない。言えなかったと言うより、言いたくなかったんだよ。」

着替えを済ませて、脱いだ物をさくらに差し出す。

「いつも通り、よろしく頼むよ。」

私が少しだけ笑って言うと、さくらはそれでも呆然としたまま、それを洗濯室に持って行った。

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