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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/15 12:33:59

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「高原さん。」

俺が声をかけるとリビングにいた高原さんは。

「…千里、来てくれたのか。」

少し疲れた顔で振り返って、俺の手を握って肩を抱き寄せた。

「急でしたね…」

背中に手を回して言うと。

「そうだな…ここ数年は同じような状態だったから…まさかって感じで、今も信じられない…」

本音なんだろうな…

高原さんは、いつもと変わらないトーン。

アズでさえあんなにグズグズなのに…

実感として伝わらないのか、それとも誰にも弱い所を見せたくないのか…


「千里君。」

呼ばれて振り向くと、和室から親父さんが出て来た。

「貴司、もういいから帰れ。」

「…分かりました。何か私に出来る事があれば、何でも言って下さい。」

「ありがとう。その時は頼む。」

俺は一旦玄関まで親父さんと出て。

「義母さんに話しました。」

そう言うと。

「そうか…」

そうとだけ言って。

「私は先に帰るよ。千里君は出来るだけ居てあげてくれるかい。」

俺の肩に手を掛けた。

「…はい。」

「じゃあ、頼んだよ。」

親父さんの背中を見送って、部屋に入る。

そして…ためらいはあったが和室の戸を開けた。

「…瞳。」

その背中に声をかけたが、瞳は返事をするでもなく…白い布を掛けられた周子さんの傍らに突っ伏して泣いている。

…映が居辛いと言うのも仕方ない。

瞳の嗚咽は玄関にまで聞こえた。


「……」

泣き崩れる瞳の隣に座って、白い布を取って周子さんの顔を見せてもらった。

…それは、俺が思ったよりもずっと…優しくて穏やかな顔をした周子さんだった。


周子さんこそ、当時にしては珍しくメディアに出ない人で…

ソングライターとして名を上げた人なのに、ほぼ人前には現れず。

雑誌にもインタビューはあっても写真までは載らなかった。

俺が見たのは、アメリカ事務所に修行に行った時に、ロビーに数枚飾られていた…Deep Redと写った物だった。


「…安らかな顔だ…」

俺がそうつぶやいて手を合わせていても、突っ伏してる瞳は変わらずそうしていたが。

「…初めまして。神千里です。」

俺がそう挨拶すると。

「…バカじゃないの…死んでんのよ…」

瞳は泣き腫らした顔を上げて、俺につっかかった。

「知ってるけど。」

「なら…ならそんな事しないでよ!!」

「親友のおふくろさんに挨拶して何が悪い。まあ…生きてる間に会わなかった俺が悪いが。」

「……」

「もう今夜は誰も来ねーんだろ?ここで思い出話でもして聞かせてあげようぜ。」


それから俺は…

周子さんのそばで、瞳とアズと、高原さんとで酒を飲みながら、思い出話をした。

最初は映もいたが、何に緊張したのか『疲れたので寝ます』と、早々に寝た。


「三人でここで暮らすって言われた時は、面食らった。」

「でも安心だったでしょ?」

「結果圭司っていう虫が着いた。」

「あれ?俺は虫っすか?」

「虫だったよな。」

「神まで…」


泣き腫らした顔の瞳とアズ。

本当に…普通な高原さん。

だが…この時、俺達には解ってなかった。


誰よりも…

誰よりも後悔と悲しみと苦しみを抱えて。

壊れかけた高原さんがいた事に…。

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