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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/15 10:43:27

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「映。」

マンションの外で、アズと瞳の一人息子の映を見付けて声をかけると。

「あ…こんばんは…」

映は眠そうな顔で少しだけ頭を下げた。

「何してんだ?」

「……部屋に居辛くて。」

「……」

映は華月と同じ桜花の中等部三年。

ギタリストとシンガーの息子なのにベーシスト。

しかもアズと瞳の息子なのに向上心が強く、勉強好き。

去年は自身の希望で海外留学もしていた。


知花が高原さんの娘だということは、知られているようで知られていない。

うちでもハッキリ公言した事がないからか…数年前…

『高原さんて、母さんの本当の父親?』

その時俺は大部屋の一枚板のテーブルの死角で寝ていて。

俺に気付かなかった華音が、ズバリ…義母さんに問いかけた。

しばらく沈黙が続いて、俺は自分の心臓の音がやたらと大きく感じたのを覚えてる。

知られちゃまずい事じゃない。

だが、言うタイミングを逃したまま…別に知らなくてもいいのかもしれないとも思っていた所だった。


義母さんは…

「そうよ。」

一言。

それだけ言って、大部屋を出た。

だが、それ以降華音が義母さんに態度を変えた事もなく…

知花に対しても特に何か変わった様子もなかった事から、俺も何も言っていない。


誰が誰の親だとか子だとか…

そんなのは重要じゃない。

血の繋がりよりも濃い何かが生まれる事もあれば、離れて居ても血の繋がりを思い知らされることもある。

それは人によっての受け取り方の違いもあるだろうし…

…まあ、難しい事はどうでもいい。


「…神…」

映に連れられて部屋に入ると、アズが驚いた顔で俺を出迎えた。

「よお。」

「あ…来てくれたんだ。ありがと。でも…」

アズは、らしくない顔で。

「でも…」

そう繰り返すだけ。

俺はアズの首をグイと引き寄せて。

「…寂しくなるな。」

そう言った。

「……」

アズは…実の父親が亡くなった後、母親が若い男を連れ込んで。

その男に暴力を振るわれていた。

そして、ある日突然…母親は、その男と共に消えた。

一人取り残されたアズは、一人で生きて来た。

いつもわけの分からない事を言って、俺をイライラさせながら。

ヘラヘラ笑いながら、生きて来た。

バンドでデビューして、いきなり母親が現れて。

アズが一人で暮らしていた…俺も少し居候してた家を勝手に売られた。

あれ以来…母親とは会っていないらしい。


そんなアズにとって、周子さんは実の母親のように思えたのかもしれない。

ツアーに行けば『義母さんの土産、何にしようかなあ』と言いながら、木彫りの熊の置物を手にしたりして。

『おまえ、そんなん買うたらどつかれるで?』と、朝霧さんに笑われていた。

『愛』と刻まれた大理石を手にした時も、ナオトさんに止められていた。

冗談としか思えないような事を、アズは本気でやっていて。

それはいつも楽しそうだった。


瞳が、何に頑なになっていたのか…周子さんに会いたくないと言って行かなかった間も。

アズは一人で施設に通った。

映の成長記録を持って。


「おまえは、親孝行者だな。」

背中をポンポンとしながら言うと。

「…し足りないよ…」

アズは小さな声で答えて、俺の肩に頭を乗せた。

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