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いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

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テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/14 22:36:51

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「周子…見えるか?窓の外は真っ白だぞ?」

もう…息苦しそうな周子は、俺の問いかけには答えられない。

部屋の中は、まだ少し早いクリスマスツリーが不釣り合いなほど…重い雰囲気に包まれている。

だが、定期的に灯る電飾が…凍えてしまいそうな気持を優しく包んでくれる気もした。

「母さん…」

瞳は周子の手を持ったまま、ずっと…ベッドに突っ伏したまま泣いている。

「みんな浴衣に着替えた。おまえも着替えて…みんなで温泉に入りに行こう。」


周子の容態が急変した。

昨日まで…本当に昨日まで、普通に喋れていたのに。


今日は朝から息苦しそうで。

目も…うつろだった。

延命治療は本人が拒否していて…

俺達はただ、周子の呼吸が浅くなっていくのを見守るしかなかった。


「お…お義母さん…お土産、買いに…売店…」

圭司が俺に付き合って、周子を温泉旅行に連れて行ってくれている。

「売店…一緒に行かないと、俺また…こんなの要らないって言われるような…お土産…か…買っちゃうよ?」

優しい圭司は…常に周子の話し相手になってくれていた。

誰よりも、だ。

「周子…ほら…雪が…」

そう言いながら周子の前髪に触れる。

俺より一つ年上の周子は、ここ数年で酷くやつれた。

キラキラと輝いていた『スー』は…もう、いない。


「…み…」

ふいに、周子がうっすらと目を開けて…何かつぶやいた。

「周子?どうした?」

「…と…み…」

「瞳、お義母さんが呼んでるよ…」

圭司が瞳の肩を掴んで言うと、瞳は顔を上げて。

「母さん…何?何か…言いたい事があるの…?」

周子の耳に顔を近付けて言った。

「……」

周子が…全身に力を入れたかのように…

息を飲んで、瞳の耳元に手を当てた。

「…何?」

「……」

「瞳、周子はなんて言ってるんだ?」

「……」

瞳は固まったように、周子の声に耳を傾けていた。

そして…

「……うん。分かった。」

そう…周子の目を見て、答えた。


結局…周子が言葉を発したのは、それが最後となった。

俺と瞳と圭司に見守られて…

周子は、息を引き取った。


泣き崩れる瞳と、それを支えながらも涙を止められない圭司。

息をしなくなった周子を、呆然と見つめる俺。

そして…病室の片隅で、遠巻きにそんな俺達を見ている映。

…周子。

俺は…何一つ、おまえの希望を叶えてやることが出来なかった。




天国に行っても…




俺を許さないでくれ。

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