ブログランキング7

いつか出逢ったあなた

登場人物全員が主役。スピンオフだらけの妄想恋愛小説。(大半がなんちゃってバンド系)

  • 記事数 2434
  • 読者 648
  • 昨日のアクセス数 34254

テーマ:小説 > 恋愛

2017/09/14 20:15:49

  • 76
  • 0

「…あたしは…いつだって、幸せだったのかもしれないのに…それを見出す事が出来ない愚かな人間でね…」

母はあたしの頭を撫でながら続けた。

「マシューをなくした後は…自分が不幸なのは…夏希とあの子のせいだ…って思い込んだわ…」

「……」

「なんて愚かなのかしらね…わざと…瞳の存在を見せ付けるために…あの子のステージを見に行ったりして…」

そうやって、小さな…だけどさくらさんにとっては精神的に辛いであろう仕打ちを、母は続けた。

あたしを連れて、さくらさんのステージを見に行く。

高原夏希の娘という存在を…さくらさんに見せ付けて、『あたしは負けてない』と、自分で思いたかった…と。

「だけどね…何回か通ってる内に…瞳が彼女の歌を聴いてゴキゲンになってくのが嬉しくて…」

「…そう…」

「あたしの歌も…歌ってくれたわ…あの子の歌…ほんと…楽しくて…お客さんもみんな…笑顔になれてた…」

母の目は天井に向いてるけど…まるでそこに昔の映像でも流れているかのように…懐かしい目でそこを見ていた。

「妹のように…歳の離れた妹のように思えて…祝福しようって決めた…あたしはジェフと一緒にいる事に決めて…ジェフを紹介する事で…彼女から不安を取り除こうとも思った…」

それは…少し意外だった。

母がそこまでさくらさんを思いやっていたなんて…


日本に戻って…精神が落ち着かなかった間。

母は幾度となく『殺してやる』と叫び続けた。

それは…常にさくらさんの事。

あたしは、そんな母を見るのが嫌で…数年、ここには通わなかった。

薄情な娘だと思われようが…

これは、あたしの母じゃない。と…心が…母だと認めるのを拒否した。

あたしが、またここに通い始めたのは…父から

「周子の様子が落ち着いたから、映を連れて会いに行ってやってくれないか?」

6年前…そう言われた。

映はもう…9歳になっていた。

可愛い盛りに連れて来なかった事を悔やむほど…

母は、映を見て笑顔で迎えてくれた。

…後で知った話だけど…

出産後からの9年、行く事を拒み続けてた間…

圭司は一人で、映の写真を手に母に会いに来てくれていたらしい。

「どうして言ってくれなかったの?」

あたしが眉間にしわを寄せて言うと。

「抜け駆けってやつ。」

圭司はケラケラと笑いながら、そう言った。

…たぶん…あたしは圭司が通ってると知っても、行かなかったと思う。

自分が行きたいと思わなければ、母には会いたくなかったから。

9年もの間、あたしは母をいないものとし…父と圭司はどんな状態の時も…母の支えになった。

…あたしは…娘失格だ。

それを今、こんな形で取り返そうとしたって…


「彼女から…不安を取り除いて…祝福するはずだったのに…」

母の言葉は続いた。

「ジェフが…『ニッキーは結婚願望も、子供も望まないって言ってたのに…今じゃ、一日も早く子供が欲しいなんて言ってる』って言ったのを聞いた途端…あたしの中で…何かが崩れたの…」

母は…あたしがいる事で、常にさくらさんより優位な立場にいると思い込んでいた…と。

誰よりも、高原夏希に近い存在だ…と。

「バカよね…あんなに結婚も子供も望まなかった夏希が…それを望んだ相手…彼女は…あたしより愛された…ただそれだけなのに…」

「母さん…」

「受け入れられなかった…それで…酷い事を言ってしまったの…」

母は…さくらさんに。

結婚はしても子供は作るな、と。

高原夏希の子供は瞳だけだ、と。

人を不幸にしてまで幸せになりたいのか、と。

さくらさんにサムシングブルーのリボンを手渡したその日に…

母は彼女に罵声を浴びせた。


…二人の気持ちが…痛かった。

母は…ずっと父の事を愛して止まなかった。

さくらさんは…まだ若くて。

父に愛されて、愛される事で愛する事も覚えていったのだと思う。

そんな時に、あたしという存在を知らしめられて…どれだけ胸を傷めただろう…


「…結局…」

あたしは涙を拭って言った。

「あたしっていう存在が…みんなを壊してしまったんだね…」

あたしさえいなければ。

あたしさえ生まれて来なければ。

母はそこまで父に固執しなかったかもしれない。

勝ち得た物など何もないと気付けば、母もこんな風にはならなかったはずだ。

そうすれば…さくらさんに何の脅威も与えずに済んだ。

あたしさえいなければ…

父は今頃さくらさんと幸せになっていたのかもしれないのに…


「何言ってる。」

声がして、驚いて顔を上げると。

「…夏希…」

「父さん…」

部屋の入口に、父が立っていた。

ドアにもたれて、腕組みをしているその顔に…笑みはなかった。

「よくもドアを開けっ放しで、そんなスキャンダラスな会話が出来るな。」

父はそう言ってドアをしめながら部屋に入ると、あたしとは反対側に椅子を出して座った。

同じテーマの記事

コメント0

しおりをはさむ

このページのトップへ

GIRL’S TALKにログインする

Ameba新規登録(無料)はこちら

9/23 編集部Pick up!!

  1. ママ友に苛々した出来事トップ3
  2. 子あやし疲れ少し休憩していたら
  3. 無意識にマウンティングするかも

人気ブログ記事ランキング

  1. 1

  2. 2

  3. 3